骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2013-12-09 21:50


どこか尖ってて、でも自信はありそうでない思春期ならではの不安定さを描くミステリー

ソニック・ユースが音楽を担当、光と影を操る映像美が冴える映画『消えたシモン・ヴェルネール』クロスレビュー
どこか尖ってて、でも自信はありそうでない思春期ならではの不安定さを描くミステリー
映画『消えたシモン・ヴェルネール』より ©2010 2.4.7.FILMS - TOUS DROITS RESERVES

オルタネイティヴ・ロック・ファン、そしてフランス映画ファンにとっては待望の公開と言えるだろう。2011年のフランス映画祭で上映され、フランスの若者たちが抱える憂鬱をビビッドに捉えた映像世界で注目を集めた。また、90年以降のユース・カルチャーを牽引してきたバンド、ソニック・ユースが単なる楽曲提供ではなく、全面的にサウンドトラックを手がけたことも話題を呼んだ。

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映画『消えたシモン・ヴェルネール』より ©2010 2.4.7.FILMS - TOUS DROITS RESERVES

物語は失踪した高校生をめぐるティーンたちの日常生活と人間模様が綴られていくが、「犯人は誰なのか」という謎解きよりも、10代の若者たちのなかにある喪失感を疑似体験しているような不思議な空気を味わうべき作品と言えるかもしれない。ある人物の「不在」が周囲にもたらす影響がどのようなものか、高校生たちの間で徐々に不安な感情が伝染していく様は、シチュエーションは異なるにせよ、誰しもが心のざわめきとして感じたことがあるのではないだろうか。

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映画『消えたシモン・ヴェルネール』より ©2010 2.4.7.FILMS - TOUS DROITS RESERVES

一見平穏な高校生活の学園の風景から、吸い込まれそうなほどの陰影を持つ夜の森のシーンまで。その画の繊細さに大きな影響を与えているのが、クレール・ドゥニ作品で知られるアニエス・ゴダールの撮影だ。また、主演の少年を演じるジュール・ペリシエの、思春期の不安定さを滲ませるその存在感にも注目したい。彼は今作の後出演した『La belle vie』が今年のヴェネチア国際映画祭に出品されるなど進境著しいだけに、今後の活躍に期待が寄せられる。




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映画『消えたシモン・ヴェルネール』より ©2010 2.4.7.FILMS - TOUS DROITS RESERVES

映画『消えたシモン・ヴェルネール』
12月14日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開

舞台はパリ郊外。パーティーに集う若者たちが、森で死体を発見する。その2週間前、シモン・ヴェルネールという名の高校生が失踪。教室からは血痕が発見され、捜査が開始されるが、それから数日も経たないうちに同じクラスの女生徒レティシアが失踪。シモンとレティシアの間には特別な関係はなく、心当たりを持つ者もいない。そしてその翌日、また別の生徒ジャン=バティストが消息を絶つ。誰もが、すべてが、怪しい。なにが本当で、なにが嘘なのか。疑心暗鬼と猜疑心が、その小さな世界に渦巻いてゆく。果たして、事件の真相は……?

監督・脚本・原案:ファブリス・ゴベール
出演:ジュール・ペリシエ、アナ・ジラルド、セルジュ・リアブキン、ヤン・タッサン、エステバン・カルヴァジャル=アレグリア、ローラン・カペリュート、バーナード・ニシル、オルガ・グランベール、チコ・メンデス他
製作:ザヴィエ・リゴ、マルク=アントワーヌ・ロベール
音楽:ソニック・ユース
撮影:アニエス・ゴダール
編集:ペギー・コレツキー
美術:フレデリック・ラピエール
視覚効果:ソフィー・デニズ
メイクアップ:カリン・メイヤー
キャスティング:エマニュエル・プレヴォー
原題:Simon Werner a disparu(英題:Lights Out)
2010年/フランス/93分/カラー/デジタル上映
©2010 2.4.7.FILMS - TOUS DROITS RESERVES
日本語字幕:高部義之
配給・宣伝:ビーズインターナショナル
提供:キングレコード
公式サイト:http://www.kietasimon.com/
公式Twitter:https://twitter.com/kieta_jp
公式Facebook:https://www.facebook.com/pages/映画消えたシモンヴェルネール/485383288204031

▼映画『消えたシモン・ヴェルネール』予告編


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