骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2013-10-08 00:10


マイク・ミルズが捉えた、抗うつ剤を服用しながら自分らしく生きる東京の若者たちのありのままの生活

薬という形のアメリカ的グローバリズムを記録した『マイク・ミルズのうつの話』クロスレビュー
マイク・ミルズが捉えた、抗うつ剤を服用しながら自分らしく生きる東京の若者たちのありのままの生活
映画『マイク・ミルズのうつの話』より

グラフィック・アーティストとしてソニック・ユースやビースティ・ボーイズといったミュージシャンのアートワークを担当し、90年代のファッション・シーンを牽引したブランドX-girlのグラフィックも手がけたマイク・ミルズ。『人生はビギナーズ』(2011年)『サムサッカー』(2005年)といった映画を発表する映像作家としても知られる彼が、日本を舞台にドキュメンタリー制作を敢行したのが今作『マイク・ミルズのうつの話』だ。うつと診断された東京在住の5人の若者の生活を淡々と描くなかで、うつが急速に常識化した日本の現状と、「心の風邪をひいていませんか?」という広告キャンペーンを通した、アメリカ的製薬産業による、アメリカ的考え方の輸出について迫っている。

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映画『マイク・ミルズのうつの話』より

5人の若者は、抗うつ剤を飲んでいること、そして都内に住んでいるという共通点を除けば、うつについての考え方も、薬の服用の仕方についても様々だが、共通しているのは「自分らしく生きるためにはどうすればいいか」ということに自覚的であるということだ。マイク・ミルズ監督の抑制された眼差しが、観客の彼らに対する親近感を増し、彼らの身の回りにある持ち物をグラフィカルに捉えたり、といった要所要所に現れるポップな感覚が、うつについての単純な視座だけなく、今作の印象を決して暗すぎるものにしない。そして、彼らの前向きな態度の奥から、個人の生活からグローバリゼーションは入り込んでくるのだ、ということを静かに訴えかけている。

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映画『マイク・ミルズのうつの話』より



【関連記事】
カプセルの中に詰まったグローバリゼーション『マイク・ミルズのうつの話』監督インタビュー(2013-10-04)
http://www.webdice.jp/dice/detail/3998/
うつ病当事者の知られなかった日常を淡々と描いた貴重な記録『マイク・ミルズのうつの話』 /精神科医の田島治氏による解説(2013-09-20) http://www.webdice.jp/dice/detail/3979/




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映画『マイク・ミルズのうつの話』
2013年10月19日(土)より、渋谷アップリンク他全国順次公開

監督:マイク・ミルズ
撮影:ジェイムズ・フローナ、D.J.ハーダー
編集:アンドリュー・ディックラー
制作:カラム・グリーン、マイク・ミルズ、保田卓夫
出演:タケトシ、ミカ、ケン、カヨコ ダイスケ
配給:アップリンク
宣伝:Playtime、アップリンク
原題:Does Your Soul Have A Cold?
84分/アメリカ/2007年/英語字幕付
公式サイト:http://uplink.co.jp/kokokaze/
公式Twitter:https://twitter.com/uplink_els
公式Facebook:https://www.facebook.com/kokokaze.movie

▼映画『マイク・ミルズのうつの話』予告編

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