骰子の眼

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東京都 世田谷区

2013-07-03 21:51


「振付をダンサーの体にインストールする」SF小説をダンス化する大橋可也&ダンサーズ『グラン・ヴァカンス』

NADiff a/p/a/r/tでのプレ・イベント・レポート 7/5~7本公演のほかポスト・パフォーマンス・イベントも決定
「振付をダンサーの体にインストールする」SF小説をダンス化する大橋可也&ダンサーズ『グラン・ヴァカンス』
NADiff a/p/a/r/t『ヴィアント・ヴァカンス』より photo:GO

大橋可也&ダンサーズの新作で、日本SF界を代表する作家・飛浩隆による小説『グラン・ヴァカンス 廃園の天使Ⅰ』(早川書房) をダンス作品化した『グラン・ヴァカンス』公演が7月5日より開催。それに先立ち、プレ・イベント『ヴィアント・ヴァカンス』がアートショップNADiff a/p/a/r/tにて行われた。
当日は、『グラン・ヴァカンス』公演の音楽を担当する音楽家・批評家の大谷能生氏による演奏をフィーチャーしたパフォーマンスが1Fの物販フロアで行われ、来場者と棚の間を縫うようにしてダンサーがパフォーマンスを披露。その後、大谷氏、大橋氏に加え、小説『グラン・ヴァカンス 廃園の天使Ⅰ』の編集を担当した早川書房の塩澤快浩氏を司会に迎え、トークが行われた。SF小説のダンス作品化という意欲的な試みの一端を感じることのできるプレ・イベントとなった。
また7月5月から7日までの本公演の後、7月28日には、渋谷アップリンク・ファクトリーにて、ポスト・パフォーマンス・イベントも決定している。

日常に現れる非日常

塩澤快浩(以下、塩澤)今日は店舗でのパフォーマンスという設定で、ダンサーの方々を見ていいのか見ないふりをしたらいいのか、全体の動きの中でそこが面白かったです。

大橋可也(以下、大橋):日常に現れる非日常というのは、日々我々が感じていることだと思うんです。それを見ないふりをさせられる。でも今日はわざわざ見にこられているので、普段自分たちが見ないでいる、聞かないでいる存在に眼や耳が向けられる。そうした観客の有り様というものに僕もすごい興味があります。どうしても劇場は座って見るというロールを与えられてそこに徹しているのですが、今回は受け取ったボールに対してミットを構えたらいいのか、ということですよね。そうしたやりとりをまた見ることができるのも今回のパフォーマンスの意図だと思います。

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NADiff a/p/a/r/t『ヴィアント・ヴァカンス』より photo:GO
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NADiff a/p/a/r/t『ヴィアント・ヴァカンス』より photo:GO

塩澤:フロアの向こうのほうでなにかやっている、それが見えないことがすごく不穏な気持ちをかきたてられたり。

大橋:自分が動くことが選択肢として与えられていますけれど、逆に見ないことも意味がある。その瞬間、瞬間を感じていただけたらと思います。

塩澤:大橋さんはどこまで演出されているんですか?

大橋:振付という意味では、僕が基本的にぜんぶ決めています。ただ、環境によって動けないところなど、振付が配置されたコンテキストによって変化は起きるものだと思っています。

大谷能生(以下、大谷):『グラン・ヴァカンス』と関連づければ、AIのように、プログラミングをするように振付けされているので、アルゴリズム的に、かなり綿密に組み立てていらっしゃる感じがします。

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NADiff a/p/a/r/t『ヴィアント・ヴァカンス』より photo:GO
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NADiff a/p/a/r/t『ヴィアント・ヴァカンス』より photo:GO

AIの存在と、僕たちダンサーは近しい

塩澤:原作は、ネットワーク上のどこかにある仮想空間で、そのなかにいろんな世界やアトラクションがあって、現実世界の人がゲストとして訪れていろんな体験をすることができる。そこがあるときから人間の訪問が途絶えてしまって、そこから1000年もの間、人間の相手をするAIがその空間に存在しているという設定になっています。

大橋:今回の『グラン・ヴァカンス』は、これまでの振付と変わっているわけではなくて、テキストをベースに振付を作って、それをそれぞれのダンサーの体にインストールしていく。プログラミングされた状態で勝手に動いていくのを、全体でオーガナイズするプログラムがある、という構成になっています。

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NADiff a/p/a/r/t『ヴィアント・ヴァカンス』より、パフォーマンスの後行われたトークの様子 photo:GO

大谷:3、4年前から大橋さんの作品はそうした構成になっていますよね。

大橋:『グラン・ヴァカンス』のAIの存在と、僕たちダンサーは近しい関係にあるんじゃないかと思っているんです。だから僕も小説を読んだときに、体に入ってくるものがあったし、作品にしたいと思った理由でもあります。小説のなかでもシーンごとに違う時間軸が重なっていく構成になっていますが、そのひとつのシーンを拾い上げて、それを一字一句そのまま振付にしています。

大谷:超大作になりそうですね。音楽も僕を含め伊藤匠さん、舩橋陽さんと3人いてよかった(笑)。決め打ちみたいにテーマ曲を決めるというのは普通の舞台の音楽の付け方ですけれど、それと即興性というか、その場での判断を付け加えていく。3人とも即興演奏家なので、そのあたりを特にこの作品ではどれくらい配分していったらいいのか、音を作りながら試行錯誤して3人で考えています。

(2013年6月14日、NADiff a/p/a/r/tにて 取材・文:駒井憲嗣)



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大橋可也&ダンサーズ新作公演『グラン・ヴァカンス』 photo:GO

大橋可也&ダンサーズ新作公演『グラン・ヴァカンス』
-飛浩隆『グラン・ヴァカンス 廃園の天使Ⅰ』(早川書房)より-
2013月7月5日(金)~7月7日(日)
シアタートラム

振付・構成・演出:大橋可也
音楽:大谷能生、伊藤匠、舩橋陽
ドラマトゥルク:長島確
クリティカルアドバイザー:佐々木敦

出演:皆木正純、古舘奈津子、とまるながこ、山田歩、唐鎌将仁、平川恵里彩、檀上真帆、後藤ゆう、山本晴歌、阿部遥、野澤健、後藤海春、三浦翔、中山貴雄、香取直登、玉井勝教

映像:石塚俊
舞台美術:大津英輔+鴉屋
衣装:ROCCA WORKS

照明:遠藤清敏(ライトシップ)
音響:牛川紀政
舞台監督:原口佳子(モリブデン)
振付助手:横山八枝子
演技指導協力:兵藤公美(青年団)
写真:GO
制作・デザイン:voids

2013月7月5日(金)19:00
2013月7月6日(土)14:00 / 19:00
2013月7月7日(日)14:00

※開場は開演の30分前
※上演時間は2時間30分を予定

[ポスト・パフォーマンス・トーク]
7月7日(日)14:00の公演終了後、ポスト・パフォーマンス・トークをおこないます。
出演:飛浩隆(『グラン・ヴァカンス』原作者)、佐々木敦(批評家・早稲田大学教授)、大橋可也
開始予定時間:16:45
終了予定時間:17:30
※他の公演日のお客様もチケットの半券をお持ちになることでご入場いただけます。

http://dancehardcore.com/topics_les_grandes_vacances.html


ハードコアダンスファクトリー番外編
『グラン・ヴァカンス』ポスト・パフォーマンス・イベント
2013月7月28日(日)
渋谷アップリンク・ファクトリー

ハードコアダンスを提唱し、日本ダンス界の極北をひた走る大橋可也&ダンサーズが、ゼロ年代SFの傑作『グラン・ヴァカンス』に挑む新作公演のポスト・パフォーマンス・イベントを開催。『グラン・ヴァカンス』公演の記録映像+ライブ演奏+ダンスによる『グラン・ヴァカンス』リミックスパフォーマンスとトークでダンス版『グラン・ヴァカンス』の行く末を提示するスペシャルイベント。

出演:伊藤匠、舩橋陽、大橋可也&ダンサーズ
開演:18:00
料金:2,000円(+1ドリンク)
*『グラン・ヴァカンス』公演をご覧になった方は500円引き(要事前申し込み)
ご予約は下記より
http://www.uplink.co.jp/event/2013/14128

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