©2013 Eames Office, LLC.(eamesoffice.com)
レイ・イームズの回顧展『RAY EAMES: A CENTURY OF MODERN DESIGN』が、米国カリフォルニア州サクラメントのカリフォルニア美術館にて、今年2月23日から来年2月23日まで開催されている。サクラメントで生まれ育ったレイ・カイザーが、チャールズ・イームズと結婚する以前に制作した100点を超える絵画などを中心に、イームズ・オフィスのプロダクトの数々やイームズ家の秘蔵品が集められ、芸術家レイ・イームズのキャリアに新たな光を射す展示となっている。
現在公開中の映画『ふたりのイームズ:建築家チャールズと画家レイ』の中でも元イームズ・オフィスのスタッフが証言しているとおり、世間的なレイの認知度は低く、女性であることさえ知らぬ人がいたり、チャールズの兄弟と誤解されていたりした。
今回の企画展を統轄したカリフォルニア美術館のブレナ・ハミルトンは、「レイは最も影響力のある20世紀のデザイナーの一人で、アート界で活躍する女性の先駆者でした。それにもかかわらず、地元サクラメントでまだ認められていません」と話す。「レイが生涯に生み出した作品の数は、多すぎて把握できないほど。小さい頃に紙の着せ替え人形を作って、大人になってからも作り続けた。そういう子供のような創作性を失わない人でした」。
1912年にカリフォルニア州サクラメントで生まれたレイ・カイザーは、ゲームやおもちゃを楽しんだり、自然の中で遊ぶことを大事にする両親のもとで育った。高校で美術部に入ると絵画に熱中し、ノートを埋めつくすほどスケッチ描き始める。21歳のとき、ニューヨークでドイツ人抽象画家ハンス・ホフマンの創設した美学校に入り、6年間ホフマンの門下で絵画を学んだ。24歳のとき、アメリカ抽象芸術家協会というグループの創設メンバーになる。その後、絵画以外の美術表現への興味から、28歳のときに友人の勧めでクランブルック美術アカデミーに願書を出し、そこで生涯のパートナー、チャールズ・イームズと出会った。チャールズと結婚し、ロサンゼルスに移住してからの2年間、『アーツ&アーキテクチャー』誌の表紙を手がけたり、定期的に絵を描いていたが、以後ほとんどの時間をチャールズとの共同作業に費やした。1978年のチャールズの死後も、イームズオフィスの膨大な作品や資料を整理しながら、書籍版『パワーズ・オブ・テン』の刊行に尽力し、講演を行なうなど精力的に活動した。そしてチャールズのちょうど10年目の命日である1988年8月21日に76歳で亡くなった。
16歳のときに描いた自画像。Ray Eames, self portrait at 16.©2013 Eames Office, LLC.(eamesoffice.com)
高校時代の卒業アルバムより。Ray Eames, Sacramento High School senior portrait, "The Review," 1931, Courtesy of Rob Turner.
10代の頃に作った紙の着せ替え人形。Childhood paper dolls, ca.1920's. Photograph by Josh White. ©2013 Eames Office, LLC.(eamesoffice.com)
「ブッダより愛をホフマンへ」と題された絵画。ハンス・ホフマンのクラスではブッダというあだ名で呼ばれていた。"To Hofmann Love from Buddha" early 1940's. Photograph by Josh White. ©2013 Eames Office, LLC.(eamesoffice.com)
Ray Eames: A Century of Modern Design ©2013 Eames Office, LLC.(eamesoffice.com) ©The California Museum
Ray Eames: A Century of Modern Design ©2013 Eames Office, LLC.(eamesoffice.com) ©The California Museum
ニューヨーク近代美術館の「ローコスト家具デザインコンペ」(1948年)に出品したラ・シェーズと制作風景。Ray Eames: A Century of Modern Design chair case featuring La Chaise, designed by Charles & Ray Eames in 1948. ©2013 Eames Office, LLC.(eamesoffice.com) ©The California Museum
1950年に大量生産に成功したシェルサイドチェア。1954年にスタッキング可能なベースが誕生。Ray Eames: A Century of Modern Design chair case featuring DSS (stacking chairs), designed by Charles & Ray Eames. ©2013 Eames Office, LLC.(eamesoffice.com) ©The California Museum
なお、展示の様子はこちらのサイトにも詳しく紹介されている。
THE FILMES OF CHARLES & RAY EAMES
イームズ夫妻による映像作品37本を7日間限定上映!
会場:渋谷アップリンク
料金:一律500円
詳細はこちら
◆主な内容
【プログラム1】(87分)
『パワーズ・オブ・テン、ハウス:ケース・スタディ・ハウス#8』など7作品
【プログラム2】(54分)
『IBMマスマティックス・ピープ・ショウ』『ポラロイド SX-70』など11作品
【プログラム3】(57分)
『コマ』『IBM館』『小さな水クラゲ』など10作品
【プログラム4】(56分)
『メキシコの祝日~死者の日』『ソーラー何にもしないマシーン』など9作品
◆上映日時
プログラム1
05/22(水)19:15
05/25(土)12:30
05/29(水)16:45
06/02(日)14:45
プログラム2
05/22(水)15:15
05/25(土)14:45
05/29(水)14:45
06/02(日)16:45
プログラム3
05/22(水)16:40
05/26(日)12:30
06/01(土)16:45
06/05(水)14:45
プログラム4
05/22(水)18:00
05/26(日)14:45
06/01(土)14:45
06/05(水)16:45
©2011 Eames Office, LLC.(eamesoffice.com)
映画『ふたりのイームズ:建築家チャールズと画家レイ』
渋谷アップリンク、シネマート六本木にて公開中、他全国順次公開
監督:ジェイソン・コーン、ビル・ジャージー
ナレーター:ジェームズ・フランコ
出演:ルシア・イームズ(チャールズの娘)、イームズ・デミトリオス(孫)、ポール・シュレイダー、リチャード・ソウル・ワーマン(建築家、グラフィックデザイナー、TED創設者)、ケビン・ローチ(建築家)、ジェニーン・オッペウォール(元イームズオフィス・デザイナー)、デボラ・サスマン(元イームズオフィス・デザイナー)、ゴードン・アシュビー(元イームズオフィス・デザイナー)
アメリカ/2011年/英語/カラー&モノクロ/HDCAM/84分
配給:アップリンク
宣伝:ビーズインターナショナル
協力:ハーマンミラージャパン
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/eames/
公式twitter:https://twitter.com/EamesMovieJp
渋谷アップリンクにてアフタートーク開催!
6/1(土)12:15の回アフタートーク・ゲスト:柏木博さん
プロフィール:デザイン評論家、武蔵野美術大学造形文化・美学美術史教授。デザインをとおして近代を読み解く作業をしている。主な著作に『「しきり」の文化論』(講談社/2004年)、『モダンデザイン批判』(岩波書店/2002年)、『家具のモダンデザイン』(淡交社/2002年)、『20世紀はどのようにデザインされたか』(晶文社/2002年)など。「田中一光回顧展」(東京都現代美術館/2003年)ほか多くの展覧会を企画監修している。
▼『ふたりのイームズ:建築家チャールズと画家レイ』予告編