映画『ポドリ君の家族残酷史X -韓国の夜と霧-』より
アニメのキャラクターの二次創作や、大衆に人気のマスコットをパロディ化するという表現は数多あるけれど、日本で言えばピーポくんにあたる韓国の警察のマスコット・キャラクター「ポドリ君」を題材に、もし彼の父親が韓国大統領だったら、という設定で、この愛すべきキャラクターをストップモーションアニメで動かし、実写と組み合わせドラマ化してしまったのがこの作品だ。ニュース映像やドキュメンタリー的要素も盛り込みながら描かれるのは、忠実な警察官ポドリ君が、父親であるイ・ミョンバク大統領への愛情ゆえに破壊を尽くし、父探しの長い旅を始めるというナンセンスなストーリー。
映画『ポドリ君の家族残酷史X -韓国の夜と霧-』より
キム・ソン監督は、韓国で有名な保守系の漫画家の李賢世(イ・ヒョンセ)氏によって創作されたというポドリ君の愛すべき、でも徹底的に空虚なその笑顔のなかに、社会の歪を見たのではないだろうか。ヤン・シュヴァンクマイエル、ブラザーズ・クエイ譲りの、ハンドメイドのストップモーションアニメのざらりとした手触りには、監督のパンク精神がにじみ出ている。アナーキーな世界だけれど、まず伝えたいことがある、という作家の意思こそが、この作品を単なるパロディではなく、韓国のみならず世界に通じる風刺として成功している。もちろん、イ・ミョンバクや清渓川再生事業、崇礼門(南大門)の放火、蝋燭デモなど今作で取り上げられている韓国社会のトピックを知れば、さらにキム・ソン監督の意図を深く読み取ることができるだろう。
映画『ポドリ君の家族残酷史X -韓国の夜と霧-』より
映画『ポドリ君の家族残酷史X -韓国の夜と霧-』
2013年6月29日(土)よりシアター・イメージフォーラムにてレイトショー
監督・脚本・撮影:キム・ソン
出演:ポドリ
2010年/韓国/デジタル/73分
配給:非妥協的映画集団ゴクサ
配給協力:スリーピン
協力:イメージフォーラム
英題:Self-Referential Traverse: zeitgeist and engagement
公式サイト:http://podori-zankoku.com/
▼『ポドリ君の家族残酷史X -韓国の夜と霧-』予告編