絶望からはじまるあたらしい暮らし
文:根本きこ(主婦)
とことん不安な懸案材料をあたまに並べ、出来るだけネガティヴにこれからのたべものについて想像を巡らす。どこまでも果てしなく、暗く、絶望の淵まで気持ちをもっていくことができる。それくらい、世は「終わったたべもの」で満ち満ちている。極まっている感すらある。
この映画のテーマでもある遺伝子組み換え。その技術を駆使してつくられた、たべものを食べ続けると、いったいどんな作用が及ぶのだろう。ラットで実験をいくら重ねたところで、「安全です」とは言いがたい結果が出るのだろう。そんなことは、すでにわかっている。というか、ばれてちゃってる。
例えば、スパイスの劣化を防ぐために、そしてジャガ芋の芽が発芽しにくくするために、一部では放射線照射があてられていることも、世界の核実験や原発由来によって、放射能の影響がつよい食べ物があることも、残留農薬がきつい食べ物があることも、いろいろな理由によって添加物がたくさん入った食べ物があることも知っている。結果、とくにちいさな子どもを持つ母親は、原材料表記や産地、遺伝子組み換えか否かをじっくりと確認してから、ようやく買い物かごに入れることが出来る。そして、そんな信じられないたべものが幅を利かせていることに、「ふー」っと深いため息をもらす。子どもが「これ、たべていい?」と聞いたものが、頭を悩ますものだったりすると、「ごめんね、食べないほうがいいと思うよ・・」と促すときに抱く、ある種の申し訳なさ。
でも、それでもわたしたちは生きている。明日もごはんを食べて、お日様に照らされて生かされている。絶望のなかの一筋のひかりのように、野菜や米を作り始めたという話しや、脱原発を訴える声は絶えない。そしてこのような映画を見ることができるしあわせに感謝して生きていこうってすら思える。せっかくだから、野草について学ぼうとか、デトックスしやすい身体作りを目指したりとか、やってみるとものすごくたのしいことばかり。むしろほんとうの生きる知恵の取得は、これからなのかもしれない。
映画『世界が食べられなくなる日』より
映画『世界が食べられなくなる日』
6月8日(土)より渋谷アップリンクほかにて公開
監督:ジャン=ポール・ジョー
製作:ベアトリス・カミュラ・ジョー
ナレーション:フィリップ・トレトン
パーカッション:ドゥドゥ・ニジャエ・ローズ
原題:Tous Cobayes?
2012年/フランス/118分
配給:アップリンク
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