骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2013-05-20 22:55


私はワン・ビンと一緒にカメラの後ろに居て、一部始終を見届けることができた

冷徹なまでの距離感により中国の村をより近く、より鮮明に描きだす『三姉妹~雲南の子』クロスレビュー
私はワン・ビンと一緒にカメラの後ろに居て、一部始終を見届けることができた
映画『三姉妹~雲南の子』より (c)ALBUM Productions, Chinese Shadows

このドキュメンタリーは、中国西南部、雲南省の海抜3200メートルの山地80戸の家がある洗羊塘村で撮影された。ワン・ビン監督は至極普通の貧しい農民の家族と彼らの日常生活を、全体として20日間という期間で映像に収めた。現代中国の農村の子供たちの現実を、生活を親密に捉えることで、社会的ではない視点からのイメージを観客に委ねる。多くの観客が気づくように、ワン・ビンのカメラは、姉妹たちと距離を保って撮られている。朝から夜まで密着はしているけれど、人が普通に生活することを距離感を持って記録することの困難を監督は認識している。彼女たちと信頼関係を築き、寄り添って生きる3人の辛さよりも、原初的な、本能的な強さを見事に表現している。

webdice_sanshimai_family
映画『三姉妹~雲南の子』より (c)ALBUM Productions, Chinese Shadows
これまでも、『鳳鳴─中国の記憶』ではひとりの女性の言葉から中国の底知れぬ歴史を垣間見させることに成功し、また『鉄西区』では全3部作9時間を超える長さのなかで、廃虚となっていく工場や街の変化、そして労働者を見つめていくことで、現代中国経済を静かに炙りだしてきたワン・ビン監督。いずれの作品でも、決して難解な構成や手法を用いているわけではないのに、じっくりと人間を見守ること、そしてそこから生まれる変化を見逃さないことで「これまで観たことのない作品」として世界中から支持を集める。彼が被写体に対して信頼関係をゆっくりと作り上げていくように、観る側の私たちも、監督の眼差しを信頼する。その関係が、ワン・ビン作品の幸福を生んでいるのではないだろうか。

webdice_sanshimai_zhen
映画『三姉妹~雲南の子』より (c)ALBUM Productions, Chinese Shadows



映画『三姉妹~雲南の子』
5月25日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

監督:ワン・ビン(王 兵)WANG BING
配給:ムヴィオラ
フランス、香港/2012年/153分/16:9/stereo

公式サイト:http://www.moviola.jp/sanshimai

▼映画『三姉妹~雲南の子』予告編



レビュー(4)


コメント(0)