映画『三姉妹~雲南の子』より (c)ALBUM Productions, Chinese Shadows
2003年にその全容が明らかになった9時間を超える三部作のドキュメンタリー『鉄西区』で、世界を驚愕させた中国のワン・ビン(王兵)監督。以来新作を発表するごとに新たな驚きを観客にもたらし、2010年には初の劇映画『無言歌』も発表。日本でもキネマ旬報外国映画監督賞、同外国映画ベストテン第4位と高く評価され、今や世界映画の旗手として、国境を越えて多くの映画ファンがその新作を待つ存在となっている。その待望の新作『三姉妹~雲南の子』は、ワン・ビン監督が、まず最初に国際的な評価を築いたドキュメンタリーのフィールドでの新たな傑作である。
今回、ワン・ビンがカメラを向けたのは、中国で最も貧しいと言われる雲南省の山中の村に暮らす10歳、6歳、4歳の幼い三姉妹である。驚くべきことに、子供たちの両親は家に不在だ。母は家を出、父は出稼ぎにいった。近くに伯母や祖父はいるものの、姉妹は自分たちだけで生活している。わずか10歳の長女が幼いながら、母親代わりとなり、妹たちの面倒を見て、家畜の世話や畑仕事に一日を費やす。やがて、町から父親が戻り、子供たちを町に連れていくことを考えるが、経済的な問題から、長女だけが村に残ることになる……。ここにある貧困は、現代の日本から見れば信じ難いだろうが、戦後日本の貧しさに通ずるものがないとは言いきれない。そしてここには同時に、どんな環境でも輝く子供たちのいのちがある。びゅうびゅうと吹き続ける風に拮抗するかのような邪気のない逞しい生のエネルギー、ひとり残された長女の孤独と、孤独を知ればこそ生まれる人間の尊厳には、ただただ感動を覚えるばかりである。
映画『三姉妹~雲南の子』より (c)ALBUM Productions, Chinese Shadows
3人の名前がクレジットはされているが、 これまで同様、撮影のほとんどはワン・ビン監督自身が行っており、カメラは、子供たちの日常をひたすら捉える。そして、そのカメラはまたも不思議なことに、極めて自然でありながら奇跡とも呼ぶべき、驚くべき瞬間を記録する。この映画のきっかけは、2009年にワン・ビン監督が知人の家に行った帰路、この三姉妹に出会ったことだという。その後、2010年から2011年にかけての6ヶ月間、時折、雲南に出かけては撮影をするという、監督の過去作『名前のない男』に似たスタイルで製作された。撮影日数はわずか20日あまり(ただし編集にはかなりの時間を要した)。カメラの存在を消し去る訳でもなく、インタビューで説明する訳でもない、まさしく“ワン・ビンの距離”というしかない被写体との距離感で、短い日数の撮影の中で客観的でありながら親密でもある、胸打つ瞬間を息づかせることに成功している。
映画『三姉妹~雲南の子』より (c)ALBUM Productions, Chinese Shadows
雲南では、高地に暮らす村民の貧困を解決するため、低地への全村移住政策が推し進められているが、本作が撮影された洗羊塘(シーヤンタン)村もすでに全村移住が決まっている。だが、どこへいつ移住するのか、村民もまだ知らされていないという。本作は、政治的なメッセージを発する映画ではないが、急激な経済的繁栄に沸く中国に、これほどの格差が存在するという事実には驚かざるをえない。また、今もなお“ひとりっこ政策”が続いている中国にあって、三姉妹というタイトルにすでに中国社会が現在抱える問題を感じる観客も多いだろう。本作には、これまでのワン・ビン作品同様、中国の資本は一切入っていないため、撮影に政府の許可は得ていない。製作にはフランスと香港の製作会社があたり、言語のほとんど(学校の授業シーンなどを除き)は雲南の方言である。(以上、プレスより引用)
映画『三姉妹~雲南の子』
5月25日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
監督:ワン・ビン(王 兵)WANG BING
配給:ムヴィオラ
フランス、香港/2012年/153分/16:9/stereo
公式サイト:http://www.moviola.jp/sanshimai
試写会に5名様をご招待
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『三姉妹~雲南の子』試写会
日時:2013年5月10日(金)15:30開場/16:00開映
場所:シネマート六本木(スクリーン2)[港区六本木3-8-15 B1F TEL5413-7711][地図を表示]
アクセス:大江戸線「六本木」駅5番出口より徒歩3分/日比谷線「六本木」駅3番出口より徒歩5分
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■応募締切:2013年5月6日(月)午前10:00
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▼映画『三姉妹~雲南の子』予告編