新大久保から、歌舞伎町方面へ向かう途中の韓国料理街とラブホテル街が同居、共存しながらしのぎをけずる地区にひときわきわだった建造物が目に留まる。
築40年以上のラブホテルを改装して、ビル丸ごとテーマパークのようにしてしまった非日常的な建物が『The Ghetto(ザ・ゲトー)』だ。建物中いたる所に、落書きがされているのは全て名のあるグラフィティライター達が『ザ・ゲトー』の為に、また自己の作品展示としてのグラフィティ、タギングであり、圧倒的な存在感を放っている。
ただの落書きではないポジティブな外側からそのテーマパークへと侵入すれば、所狭しと多種多様なショップが軒を連ねる。ラブホテルの色気を残しつつ、ショップのジャンルはスケート、グラフィティ、写真、ストリートアート、ピスト等様々だ。現在、1階に、レストラン、バー(※1)とスケートパーク(※2)、2階に6店舗(現在626CLOSETは休業中)のショップとギャラリー(※3)を兼ね備え、ヒップホップでもロックでもパンクでもないひとつのジャンルでくくれない音楽のティストが発せられる。
2006年8月にオープンして以来、様々な展示、イベントを行ってきた『ザ・ゲトー』だが、この度、5月10日(土)に1階のレストラン「$1000000来音」から「HELLS KITCHIN GHETTO RULES」と名を改めリニューアルオープンした。
以前までは、多国籍料理を提供するレストランだったが今回趣向を一新した。『ザ・ゲトー』のオーナー、造形師でもある“大橋AKO章彦氏”は「『ザ・ゲトー』でも、他の新宿周辺でも遊んだ帰りに立ち寄って、ガッツリと食べれて、遊んで行ける楽しいお店を作りたかった。同時にカルチャーの発信地として、ただのレストランではなく、毎回違ったアーティストの作品を展示しつつ、料理のメニューと一緒に作品のメニューも見れて、レストランでも気に入ったアーティストの作品を購入できるようにしました」と話す。
さらに、レストランではオープン当初から月1回の音楽イベントが行われていたが、以前まで吹き抜けで大きな音を出すと近隣の方々に迷惑をかける心配もあり、今回のリニューアルに併せ、防音工事をして、思う存分音楽も食欲も満たしてくれるレストランに仕上がった模様だ。
大橋氏は、この建物のジャンルについて「ロックミュージックではなく、ロックな感じ、ヒップホップミュージックではなくヒップホップな感じを出したかった」と語る。「ただ、自分が面白い、周りの人が面白がって遊んでくれる場所やイベントを現在進行形で作ってる」。グラフィティを一括りでカテゴライズできないように、ここ『ザ・ゲトー』も多種多様なカルチャーコンプレックスなのである。
思えば、オープンの2年程前から、この建物の構想はあったという。
「廃墟っぽいホテルの階段を上ると、椰子の木があって、ノスタルジックな、不良映画の一場面で、息が合って、“それじゃーパーティーやるか“、みたいなのりで、自由に周りの人も楽しんでくれる雰囲気がいい。そういうイメージで作りたかった」と大橋氏は等身大の『ザ・ゲトー』について説明する。
「参加者それぞれのモチベーションで楽しんでいただきたい」というように、ゲトーに訪れた人は、飲食、買物目当てはもちろんのこと、毎回違った形で進行されているイベントや展示を取捨選択して遊べるような形になっている。
「ピンストライプの展示を見て車を好きになる人もいれば、イベントを通して刺青やグラフティを好きになる人もいる。様々な物に触れ合い、参加して繫がっていく、ここはフィルターっぽいのかもしれない」と大橋氏は語る。
歓楽街といえども、まわりの人達と共存しながら独自のカルチャーを発信し続ける『ザ・ゲトー』は、少しずつファンを増やしながら確実に新しい何か、わくわく感を感じずにはいられないワンオンリーな場所となっている。リニューアルを機に、これからも多くのグラフティライターのインスタレーション、展示やイベントも行う『ザ・ゲトー』の活動は目が離せない。
--
(※1)「HELLS KITCHIN GHETTO RULES」
ザ・ゲトー内1階に併設されたバー(TIKI ROOM)を抱えるレストランー。百ギャラリーの展示などに併せイベントなども行う。また、月1回の音楽イベントGHETTO CULTURE(第4土曜)も人気を博している。
(※2)スケートランプ
ザ・ゲトー内1階に併設されたスケートバンク。1時間500円や、一日滑り放題でも1500円で利用できる。また、定期的にスケボースクールなども開催している。
(※3)百ギャラリー
http://www.theghettotokyo.com/sb
ザ・ゲトー内2階に併設されているギャラリー。ホテルの1室をそのままギャラリーにした、その場所にふさわしい様々なジャンルのグラフィティ作品や写真の展示を行っている。「今では百ギャラリーの展示を楽しみにくるお客さんも増えている」と大橋氏は語る。6/27より韓国のグラフィティアーティスト“デイジ”の初エキシビジョンが行われる。
(取材・文:山口生人)
■『ザ・ゲトー(The Ghetto)』HP:http://www.theghettotokyo.com/