骰子の眼

cinema

東京都 中央区

2013-03-15 11:51


後半の劇的な展開に、ドキュメンタリーが秘めた「現実を変えられる力」を感じさせられる

アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞!『シュガーマン 奇跡に愛された男』クロスレビュー
後半の劇的な展開に、ドキュメンタリーが秘めた「現実を変えられる力」を感じさせられる
映画『シュガーマン 奇跡に愛された男』より ©Canfield Pictures / The Documentary Company 2012

今作で本年度のアカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー賞を受賞したマリク・ベンジェルール監督は、2006年に、本編にも登場するスティーブン・“シュガー”・セガーマンにケープタウンで出会い、1960年代後期、ミシガン州デトロイトにいたミュージシャン、ロドリゲスについての話を聞いたことを発端に、この天才アーティストの物語を作品にすることを構想したという。ベンジェルール監督は「当時の欧米でとても限られた世界だった白人のロック・シーン、つまりルー・リードやボブ・ディランの世界で勝負することは、ロドリゲスにとってもの凄いチャレンジだった」と語っているが、単なる一世を風靡した音楽家の人生、ということのみならず、「白人リベラル派のアフリカーナの観点からのアパルトヘイト政権の混乱」という、南アフリカの歴史と社会的運動についても描いていく。

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映画『シュガーマン 奇跡に愛された男』より ©Canfield Pictures / The Documentary Company 2012

当初30分のTVドキュメンタリーとして構想されていたものの、なにも情報がないこの謎のアメリカ人ミュージシャンについて、死亡説や死者に対する印税についてなど、調査を開始し、ロドリゲスが辿った運命を探っていくなかで、およそ3年を費やして今作は完成に至った。「もし自分に誠実でいたいのなら、自分のルールを作ることだ。自分のお金を使うか、もし十分なお金がないんだったら低予算の映画を作るっていう風にね」、ベンジェルール監督は夢のために妥協を許さなかったロドリゲスについてそう敬意を表する。フィクションと異なり、製作開始の時点で結末があらかじめ用意されていないのがドキュメンタリー映画だとすれば、この『シュガーマン 奇跡に愛された男』ほど感情を揺さぶる物語の結末はないだろう。

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映画『シュガーマン 奇跡に愛された男』より ©Canfield Pictures / The Documentary Company 2012



映画『シュガーマン 奇跡に愛された男』
2013年3月16日(土)角川シネマ有楽町他全国ロードショー

監督・製作・撮影・編集:マリク・ベンジェルール
2012年/スウェーデン・イギリス/86分
原題:Searching for Sugar man
配給:角川映画

公式サイト:http://www.sugarman.jp/
公式twitter:https://twitter.com/sugarman_jp

▼『シュガーマン 奇跡に愛された男』予告編



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