骰子の眼

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2012-11-20 17:44


キアヌ・リーブス インタビュー「映像体験への理解を深める助けになってくれればいい」

シネマの現在と未来を探るドキュメンタリー映画『サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ』は12月22日(土)公開
キアヌ・リーブス インタビュー「映像体験への理解を深める助けになってくれればいい」

シネマの現在と未来を探るドキュメンタリー映画『サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ』が2012年12月22日(土)渋谷アップリンク、新宿シネマカリテほか、全国順次公開となる。

スコセッシ、ルーカス、キャメロン、フィンチャー、リンチ、ノーラン、ソダーバーグらがキアヌ・リーブスの質問に答える本作は当代きってのハリウッドの巨匠監督たちと、撮影監督、編集技師、カラーリスト、特殊効果技師をはじめとする映画制作者たちの貴重な証言から、映画制作の過去・現在・未来を浮き彫りにする。

企画製作インタビュアーをつとめるキアヌ・リーブスの全米公開時インタビューを掲載する。




僕は「フィルムがなくなって失うものは何だろう」と考え、
クリスは「デジタルで得るものは何だろう」と考えた


Q : いつ頃から映画の舞台裏に興味を持っていたのですか?


映画がどのように作られるのかについては、いつも気になっていたよ。俳優として、まずカメラやレンズ、照明などに興味を持った。でも2010年秋に、『フェイク・クライム』という映画の仕事をしていた時、従来の映画制作が変化している事実を目の当たりにした。デジタルカメラがどんどん多用されるようになっていた。「フィルムはもうお払い箱なのか」と思った。それで、後にこの映画の監督を務めてくれることになったクリス・ケニーリーに、その質問をぶつけた。そして、過去・現在・未来の映画制作を探検する旅に付き合ってくれるかどうか尋ねたんだ。


Q : この映画は両サイドの立場をバランスよく取り上げていますが、あなたご自身はデジタル派ですか、フィルム派ですか?


このプロジェクトを始めた時は、僕はどちらかというとフィルム派で、クリスはデジタル派だった。僕は「フィルムがなくなって失うものは何だろう」と考え、クリスは「デジタルで得るものは何だろう」と考えたんだ。だから製作サイドとして意見の偏りがなく、それが映画に現れたんだと思う。この作品の製作を通じて僕は多くのことを学んだ。そして、ミヒャエル・バルハウスが言う「情熱と愛情を持って何かをするなら手段は関係ない」という境地に達したんだ。


Q : この映画で、デヴィッド・フィンチャー、マーティン・スコセッシらのみならず、ウォシャウスキー姉弟に至るまで多くの巨匠たちにインタビューしていますね。皆さんの協力を得るのに苦労されたのではありませんか?


会いに行っただけだよ。映画の製作を始めた時は、僕らが何をしているのか誰も知らなかった。撮影監督へのインタビューを始めたのは、ポーランドで開かれたキャメリメージ国際映画祭だった。街で声を拾うことから始めたんだけど、そこからはイモ蔓式って感じだね。

たとえば、『セレブレーション』という"ドグマ95"映画を撮影していた最中のアンソニー・ドッド・マントルに話を聞けば、彼が『28日後...』や『スラムドッグ$ミリオネア』で一緒に仕事をしたダニー・ボイルに話を聞きたくなる。初期の編集について話をすれば、EditDroidを開発したジョージ・ルーカスと話をしなきゃならなくなる。

『アラビアのロレンス』を編集したアン・V・コーツとは一緒に仕事をしたことがあったが、彼女は僕が出演した映画をデジタル編集していた。彼女は従来の映画製作に傾倒していたが、新しいデジタルの領域にも詳しかったから、彼女と話せたのは収穫だった。だから、とにかくインタビュー相手に会って、話してくれるよう頼むだけでよかったんだ。


Q : ぜひインタビューをしたかったのに叶わなかった人はいますか?


もちろんいたよ。でも、過去をくよくよ考えることはしたくないんだ。

『サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ』


デヴィッド・リンチの
もうフィルムで映画は作らないかもしれないという発言に驚いた


Q :多数の映画関係者に話を聞いた中でも、最も驚いたことは何でしたか?


ひとつはデジタルの保存問題について聞いたとき。もう一つは、デヴィッド・リンチのもうフィルムで映画は作らないかもしれないという発言。それと、アリ社がもうフィルムカメラは製造しないと決めたことも。デジタルで得るものについての解釈もいろいろあって驚かされた。


Q : 今年の大作である『ダークナイト ライジング』と『ハンガー・ゲーム』は、いずれもフィルムで撮影されました。観客は撮影方法の違いに注意を払うと思いますか?


どうかな。ケースバイケースだと思うよ。統計をとったらどういう結果が出るか分からないけどね。ここ数年でデジタル映像が進歩したことは確かだね。でも、どちらの場合も映写環境を整える必要がある。プロジェクターが対応していなければデジタル映像でもフィルムでも魅力は半減する。観客が注意を払うかどうかは分からないけど、このドキュメンタリーが、映像体験への観客の理解を深める助けになってくれればいいと思う。確かにフィルムからデジタルへの変化は、サイレントからトーキー、あるいは、白黒からカラーへの変遷よりは、観客にとって画期的な出来事ではないかもしれない。それでも、撮影から編集、特殊効果と、映画作りの過程全体を見せるようにしたから、映画のことがよくわかるし、出演者がみんな情熱を持ったその道のプロばかりだから、彼らの発言を聞くだけでも楽しめるはずだと思う。



画質の悪いフィルムもあり得るし、
画質の悪い3Dもあり得る


Q : 映像が暗くて、画質がいまひとつであることが多いのに、監督たちが3Dに飛びつくことに驚いていますね?


求めるもののレベルの違いが問題なんだ。画質の悪いフィルムもあり得るし、画質の悪い3Dもあり得る。ジェームズ・キャメロンは明るさの問題を克服したから、『アバター』の画面は明るかった。スコセッシとロバート・リチャードソンは、『ヒューゴの不思議な発明』で、画質の向上に細心の注意を払った。

もちろん、うまくいってない3D映画もあるけどね。キャメロンは、3Dの斬新さの効用について語っている。3Dが奇跡を起こす瞬間もあるし、観客が頭痛を覚えることもある。まだ発展途上なんだ。長い間3D映画の製作について話し合ってきたけど、3Dの映画言語とデジタル技術はまだ成熟してない。だが、キャメロンやスコセッシのような巨匠の手にかかれば、いい作品ができる。彼らは自分がしていることを分かっているからね。ストーリーの語り方を知っているんだよ。


Q : 俳優としては、フィルム映画とデジタル映画のどちらに出演したいですか?


僕はフィルムだね。フィルムの黄金時代の映画界で育ったから。映画を作ることはすなわち、35ミリフィルムの撮影とイコールだった。もちろん、時代は変わり、僕ももうそんなふうには感じない。初期のころは、デジタル撮影のセットはフィルム撮影とは違っていた。フィルム撮影はデジタルの場合より短時間だった。フロアのリズムが違っていた。どちらがいいとは言えないけど、時々フィルム撮影に郷愁を感じるね。


Q : 初の監督作品『Man of Tai Chi』はフィルムで撮影したのですか?


デジタル撮影だよ。カメラはアリのAlexaを使った。


Q : なぜですか?


突き詰めて言えば、僕にはそれが正しいと思えたから。最初はフィルムで撮りたいと思っていたが、撮影現場の中国はまだ映画産業が確立されておらず、品質管理に不安があった。デジタルのほうが確実だった。数台のカメラを試して、すばらしい結果を得ることができた。満足しているよ。


Q : このドキュメンタリーの製作は、監督の仕事に役に立ちましたか?


このドキュメンタリーの製作を経験したことで、自分がしなければならないことについての理解を少し深めることができたと思う。デジタル撮影の作業の進め方や映像の見方に詳しくなった。セットになじむこともできたし、デジタル撮影技師とも親しくなった。自分が足を踏み入れようとしていた世界を知るのに役立ったことは確かだよ。



▼『ダークナイト ライジング』予告編


▼『ハンガー・ゲーム』予告編


▼『アバター』予告編


▼『ヒューゴの不思議な発明』予告編





キアヌ・リーブス プロフィール

1964年レバノン生まれ。トロントで育つ。9歳の頃から地元の劇団やテレビで俳優活動をはじめる。これまでの出演作は60本以上にのぼる。2010年にプロデューサー兼主演を務めた『フェイク・クライム』(マルコム・ヴェンヴィル監督)のDI作業現場で、ポストプロダクション監修者だったクリス・ケニーリーと"フィルムの終焉"について話す中で本作の構想を得る。その後、約1年半にわたり本作出演者たちにインタビューを慣行した。最新主演作は2013年公開予定の『47RONIN』(カール・リンシュ監督)。また、初監督作となる米中合作のカンフー映画『Man of Tai Chi(太極侠)』も2013年に公開予定。




映画『サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ』
2012年12月22日(土)渋谷アップリンク、新宿シネマカリテほか、全国順次公開

監督:クリス・ケニーリー
プロデューサー:キアヌ・リーブス、ジャスティン・スラザ
撮影監督:クリス・キャシディ

出演:
キアヌ・リーブス
マーティン・スコセッシ
ジョージ・ルーカス
ジェームズ・キャメロン
デヴィッド・フィンチャー
デヴィッド・リンチ
クリストファー・ノーラン
スティーヴン・ソダーバーグ
ラナ&アンディ・ウォシャウスキー
ラース・フォン・トリアー
ウォルター・マーチ
ヴィットリオ・ストラーロ
レナ・ダナム
ほか
公式サイト

▼映画『サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ』予告編


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