骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2012-11-27 18:37


世間に媚びない生き方を貫き、自分が求めるものを追求する姿勢にうらやましさを感じた

フィリップ・グランドリューによるドキュメンタリー『美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう/足立正生』クロスレビュー
世間に媚びない生き方を貫き、自分が求めるものを追求する姿勢にうらやましさを感じた
映画『美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう/足立正生』より (c)EPILEPTIC


60代から70年代にかけて日本のアンダーグラウンド映画の先鋒として目され、『女学生ゲリラ』(1969年)『略称・連続射殺魔』(1969年)など鮮烈な作品を発表した足立正生。今作のフィリップ・グランドリュー監督は、インタビューのなかで語っているように、“伝説”と称される映画監督に対し、自ら一眼レフカメラを携え撮ることで、自身も映像の内側に入り込み、直感的に、そして感性のおもむくままに足立正生を捉えることに成功している。グランドュー監督の試みに共感し、足立正生もまた、訥々と自らの“美”に関する意識を語り始める。存在しているものを“美”と感じるかどうかは、撮る側の感性の問題である、ということを、ふたりはこの映画を通した交流そのものによって観客に伝えようとする。


webdice_adachi_sub05
映画『美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう/足立正生』より (c)EPILEPTIC

グランドリュー監督の作品と足立正生監督の作品にある共通点、そして差異を確認すること。足立正生は被写体となった今作について「感性の闘争を描かないと意味がない」と語る。グランドリュー監督もまた、これまでの作品同様、映画について哲学的に取り組みながら、身体性についても極めて意識的である。足立氏の懐に飛び込んでいくように、ブランコのある公園や新宿の街頭に佇む足立正生の姿を捉え、めったに見せない表情を映像に写しこんでいく。このドキュメンタリーを通して、観ている者の側の感性は確かに研ぎ澄まされているか、それを試されているような気がする。


webdice_adachi_sub04
映画『美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう/足立正生』より (c)EPILEPTIC




映画『美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう/足立正生』
12月1日(土)より、渋谷アップリンクにて公開

シリーズ企画:ニコル・ブルネーズ、フィリップ・グランドリュー
監督・撮影・編集・音響:フィリップ・グランドリュー
助監督・通訳:シャルル・ラムロ
音楽:フェルディナンド・グランドリュー
プロデューサー:アニック・ルモニエ(Epileptic)
出演:足立正生、小野沢稔彦
2011年/フランス/74分/HD/カラー、モノクロ/16:9/ステレオ
(c)EPILEPTIC
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/bigawatashitachi/
公式twitter:https://twitter.com/biga_movie
公式FACEBOOK:http://www.facebook.com/bigawatashitachi


関連企画

『美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう/足立正生』公開記念
「特集/足立正生」
渋谷アップリンクにて開催

12月5日(水)18:30『女学生ゲリラ』
※上映後トークショー トークゲスト:足立正生、東良美季(ライター)
12月7日(金)18:30『性遊戯』
12月9日(日)18:30『略称・連続射殺魔』
12月11日(火)18:30『女学生ゲリラ』
12月12日(水)18:30『性遊戯』
12月14日(金)18:30『重信房子、メイと足立正生のアナバシス そしてイメージのない27年間』
12月15日(土)20:30『略称・連続射殺魔』
http://www.uplink.co.jp/movie/2012/4838


▼映画『美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう/足立正生』予告編



レビュー(5)


コメント(0)