骰子の眼

cinema

東京都 千代田区

2012-11-09 18:17


私たちがこの映画から学ぶべきは人間の心の脆さと消え去ってしまうということ

マルジャン・サトラピ監督が自身を投影『チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~』クロスレビュー
私たちがこの映画から学ぶべきは人間の心の脆さと消え去ってしまうということ
映画『チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~』より (c) Copyright 2011Celluloid Dreams Productions - TheManipulators – uFilm Studio 37 - Le Pacte – Arte France Cinéma – ZDF/ Arte - Lorette Productions– Film(s)

前作『ベルセポリス』(2007年)で、自らの半生を描いたコミックをアニメーション化したマルジャン・サトラピ監督だが、今回は別のコミック作品『鶏のプラム煮』の実写化に挑んだ。主人公となる音楽家ナセル・アリには、監督の母親の叔父にあたる人物がモデルとなっている。サトラビ監督はあるとき写真を目にして、彼をメインにしたストーリーを描いてみたくなったという。コミック制作にあたり、親族たちへ取材を敢行し、フィクションとノンフィクションをミックスさせてこの映画の原作『鶏のプラム煮』を完成させた。

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映画『チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~』より (c) Copyright 2011Celluloid Dreams Productions - TheManipulators – uFilm Studio 37 - Le Pacte – Arte France Cinéma – ZDF/ Arte - Lorette Productions– Film(s)  

「芸術家とは素晴らしい存在ですが、同時にとてつもなく自分本位で自己愛が強く、それでいてとてもロマンチストなんです」とはサトラビ監督の言葉だが、親族のルーツを探る作業は同時に、芸術家であるとはどういうことかという実存的な問いかけにも繋がったに違いない。映画化にあたり監督は、マチュー・アマルリックを主役に起用。果たして出来上がったこの映画は、アマルリックの持つ強い眼力、007の悪役さえ演じきるそのエキセントリシティ、そして母性本能をくすぐってやまない甘いマスクといった魅力を存分に用い、芸術家の不埒なまでの情熱をロマンティックに描いている。

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映画『チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~』より (c) Copyright 2011Celluloid Dreams Productions - TheManipulators – uFilm Studio 37 - Le Pacte – Arte France Cinéma – ZDF/ Arte - Lorette Productions– Film(s)  



映画『チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~』
11月10日(土) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次ロードショー

大切なバイオリンを壊されて、天才音楽家ナセル・アリは死ぬことにした。ベッドに横たわり、死を待ちながら人生を振り返るナセル・アリ。技術はあるが、おまえの音は空っぽだと、師匠に叱られた若き修業時代。本物の音色を見つけ、絶大な人気を獲得し、演奏旅行で世界各地を飛び回った黄金時代。人生最大の失敗となった愛のない結婚。何よりも怖く誰よりも大切な母の死。大好きなソフィア・ローレン、大好物のチキンのプラム煮。そして今も胸を引き裂くのは、叶わなかった恋。8日目、ついに死が訪れるその時、聴く者すべてが涙する、ナセル・アリの伝説の音色の秘密が明かされる──。

監督・脚本:マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー
原作:マルジャン・サトラピ「鶏のプラム煮」(小学館集英社プロダクション刊)
出演:マチュー・アマルリック、マリア・デ・メディロス、イザベラ・ロッセリーニ、キアラ・マストロヤンニ
原題:Poulet aux prunes
配給:ギャガ
2011年/フランス・ドイツ・ベルギー合作映画/92分/カラー/シネスコ/ドルビーSR、ドルビーデジタル/PG-12

公式サイト:http://chicken.gaga.ne.jp

▼映画『チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~』予告編



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