骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2012-11-08 21:34


会田誠は「日本人の凶暴さをいかに残していくか」というテーマで制作する

センセーショナルな現代美術家の創作の秘密に迫るドキュメンタリー『駄作の中にだけ俺がいる』クロスレビュー
会田誠は「日本人の凶暴さをいかに残していくか」というテーマで制作する
映画『駄作の中にだけ俺がいる』より (c) ザ・ファクトリー

「美術とは、見ることで得られる快楽を刺激するサービス業」とは、今作のコピーであり、本編で会田誠自身が語る言葉である。本作は、彼が好んで取り上げてきた戦争、エロ、サラリーマンといったモチーフがどのように形作られていくのか。数年間かけて完成への道を辿る縦横3メートル×左右7メートルの大作「灰色の山」、そして2010年にミヅマアートギャラリーで行われた『絵バカ』オープニングまでの過程を太い軸として、普段私たちが見ることのできない、会田誠と彼の妻であり現代美術家である岡田裕子、そしてふたりの息子である寅次郎の姿を通して描いていく。

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映画『駄作の中にだけ俺がいる』より (c) ザ・ファクトリー

岡田裕子の寄り添うようなナレーションが導いていくのは、永遠に完成しないかと思われる絵に頭をかきむしりながら、ひっきりなしに煙草をくゆらせながら向かう会田誠の譲らなさだ。自らを〈コンセプチャル・アーティスト〉だと言い切る彼の姿は、振り幅の大きな作風によるノンシャランなイメージを覆すものである。カメラは、家族のプライベートな場面を幾度となく捉えながら、ある距離感を持って、アートと生活についての考察を観客にゆだねる。若い作家や女子学生から「アーティストになるには」という質問を浴びせられ飛び出す冗談交じりの答え、そして息子に絵を描くにあたっての心構えを説く会田誠の驚くほど「精悍な」姿には、受け手それぞれのアートへの視座を変えるふさわしい力がみなぎっている。

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映画『駄作の中にだけ俺がいる』より (c) ザ・ファクトリー



映画『駄作の中にだけ俺がいる』
2012年11月10日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開

監督:渡辺正悟
プロデューサー:キム・ヒージュン
撮影:大石英男
制作協力:三潴末雄(ミヅマアートギャラリー)
企画・製作:ザ・ファクトリー
配給:ブラウニー
2011年/99分/HD
公式サイト:http://aida-artmovie.com/

▼映画『駄作の中にだけ俺がいる』予告編



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