骰子の眼

music

東京都 渋谷区

2012-08-31 11:46


EXTREME MUSIC FROM CHINA!現在の“中國極瑞音樂”を担う重要人物たちが一挙来日

今回来日するアーティストの一人で、香港在住の「Sin:Ned」に中国アンダーグラウンド音楽シーンの現在について訊く
EXTREME MUSIC FROM CHINA!現在の“中國極瑞音樂”を担う重要人物たちが一挙来日
Sin:Ned

北京、上海、香港といった中国の大都市にそれぞれ活動の拠点を持ち、ノイズ/エキスペリメンタルの流儀でオリジナルな音楽を作り続けている中国アンダーグラウンド音楽シーンの重要人物たちが一挙に初来日を果たし、本日8月31日(金)の大分での公演を皮切りに日本ツアーを敢行、東京では9月4日(火)渋谷UPLINK FACTORYほか3カ所でパフォーマンスを行う。

世界中に点在する“アンダーグラウンド”な音楽家たちが形成する不可視のネットワーク上で、近年最もホットな現場として注目を集めている中国において、独自の活動を展開する気鋭の音楽家たちによる、貴重なショーケースイベントをどうかお見逃しなく。さて、彼らの日本ツアー開始を目前に控え、webDICEは香港のDennis Wongに中国のアンダーグラウンド音楽の現状について話を聞いた。彼は今回来日するアーティストの一人で、香港を拠点に「Sin:Ned」名義で音楽活動を行い、オーガナイザー/ライターとして中国のアンダーグラウンド音楽の情報を世界に発信し続けている人物である。

──あなたたちが日本へ来るのは初めてとのことですが、今回のツアーはどのような経緯で企画され、実現したのでしょうか?

日本で演奏をするのは初めてのことなので、とても興奮しています!僕と「NOJIJI」のクルーは昨年の終わり頃から日本ツアーを計画していたのですが、日本在住の音楽家ズビグニエフ・カルコフスキーがあなたたちUPLINKを紹介してくれて、今回のツアーが実現しました。そして、偶然にも「Torturing Nurse」も同時期に日本でのツアーを計画していることを知って、彼と一緒に様々なイベントを行うというアイデアに発展していったんです。基本的に「Torturing Nurse」が大分、福岡、大阪のブッキングを調整してくれていて、一方で僕たちが東京でのイベントをアレンジしました。

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Sin:NedとYan Jun

──UPLINKで9月4日に開催されるイベントは「中国極端音楽」というタイトルが冠せられています。あなたは香港、Torturing Nurseは上海、Mei ZhiyongやMafeisanといった「NOJIJI」の中核メンバーたちは北京と、それぞれ離れた場所で活動を展開されていますね。各アーティストの活動について、簡単に説明して頂けませんか?

僕がTorturing Nurseと仕事を始めたのは2009年で、僕が『RED』というCD作品への楽曲提供を依頼した時ですね。『RED』は香港の「Lona Records」がリリースした三枚組のコンピレーションCDなのですが、中国全土及び香港で活動している実験音楽家たちの音源を数多く収録しています。

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Torturing Nurse

「Torturing Nurse」はこれまでに250に及ぶリリースと100回以上のライブ・パフォーマンスを行っている、現在、中国で最も多作なハーシュノイズ・アーティストであるといえます。ハーシュノイズを基調とする彼らの極端で暴力的なスタイルは観客を吃驚させるでしょうね。彼らは上海の実験音楽/ノイズのシーンの最重要ユニットの一つであり、彼らは「NOIShanghai」というパフォーマンスシリーズを継続して主催しています。

Mei Zhiyongと「Mafeisan」は共に北京のミステリアスなノイズ共同体「NOJIJI」の中心人物たちです。NOJIJIは単にノイズのコミューン、或いはレコードレーベルではなく、かつて北京郊外の養殖場の廃墟にあったアンダーグラウンドなライブハウス「Raying Temple」の首謀者たちでもあります。ノイズと中国の神秘主義をミックスさせた彼らの音楽は、多くの人に東京のサイケデリック・アンダーグラウンド音楽を強く想起させるでしょう。

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Mafeisan

僕は昨年に「Mafeisan」のMei ZhiyongとLi Yangyangと接触し、彼らの中国ツアーのうち香港でのイベントを主催しました。それ以来、Mei Zhiyongと「Torturing Nurse」と僕は頻繁に連絡を取り合うようになり、中国国外のアーティストたちとの交流を含むネットワークを形成するに至りました。

僕自身の活動についてですが、僕は「Sin:Ned」という名前を使って香港で実験音楽を作り続けています。KWCという香港のアーティストと共にエレクトロアコースティック・デュオ「No One Pulse」として演奏したり、「Re-Records」というエキスペリメンタル・プロジェクトを運営しています。加えて、CDR作品のリリースやライブ・パフォーマンスを香港で定期的に企画しています。現在は「NOISE TO SIGNAL」「AV RIOT」という二つのイベントシリーズを定期開催していて、前者は即興演奏/ノイズ/実験音楽全般をフォローするコンサート企画で、後者はオーディオとビジュアルのマッシュアップを核とした企画です。僕はかなり頻繁に国内外のアーティストたちと仕事をしているんですが、現在はYan Junによるフィールドレコーディング音源を集めた3枚組CDや、ズビグニエフ・カルコフスキーと中国人アーティストによる、2枚組DVDのリリースを計画中です。

──あなたたちが「中国の極端な音楽」と定義する音楽は、中国各地で同時多発的に起こっている現象なのでしょうか?

そうですね。それぞれ中国の異なる地域で活動するアーティストたちは“極端な音楽”を、もう随分前から自主的に作り続けてきました。とても喧しくてノイジーで極端にミニマルで抽象的な音楽を。興味深いのは、僕たちはそれぞれが色々なやりかたで、それぞれ異なる理由をもって極端な音楽を作っているということですね。

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例えば……北京のYan Junはアブストラクトでミニマルなフィードバックノイズ、杭州市出身のLi Jianhongはサイケデリック・ノイズ・ギター、深圳市出身のZenLuはエレクトリック・ドローン、Qulin出身のRonezはエクストリームノイズの先駆者的な存在で、香港出身のAlok and Nerveはアブストラクトな電子音響……といった具合に。

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僕たちの音楽には明確な政治的なメッセージがあるわけではないんですが、僕たちの音楽が現行のシステムに対して反発する一つの手段として機能していると信じています。

もし中国のアンダーグラウンド音楽についてもっと知りたければ、以下の3枚のコンピレーションCDを聴くことをお薦めします。

Various Artists『RED』 (Lona Records)
Various Artists『An Anthology of Chinese Experimental Music』 (Sub Rosa)
Various Artists『CHINA ? the sonic avant-garde』 (Post-Concrete)

『RED』

──今回、UPLINKでのイベントで上映される映画『FUCK YOU / Fucking Noise In China Now』について、少し教えて頂けませんか?

『FUCK YOU』はGuy-Marc HinantとDominique Lohleが作ったドキュメンタリー映画です。ズビグニエフ・カルコフスキーの2008年の中国ツアーを撮影したもので、Torturing Nurse、Wang Changcun、Wang Fan、Li Jianghung / Dickson Dee、the poet Sun Meng Jinといった中国人アーティストたちがフィーチャーされています。中国のエクストリーム・ミュージックの現場で起こっていることが、まるで目撃談のように記録された素晴らしくて貴重な映画だと思います。このプロジェクトを実現させるためにビジョンを持って根気強く取り組んだカルコフスキーと監督たちに改めて敬意を表したいですね。

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Sin:Nedとズビグニエフ・カルコフスキー

──今回のツアーでは大分、福岡、大阪をめぐり、東京では4カ所でイベントが開催されますね。あなたたちの初来日を楽しみにしている人たちに、メッセージをお願いします。

僕たちは会場ごとにそれぞれ内容の異なる、特別なショーを準備しています。例えばUPLINKでは、スイス人アーティストLaurent Valdesと共にオーディオ/ビジュアル・パフォーマンスを行います。更に今回のツアーのために、「Torturing Nurse」「Mei Zhiyong」「Mafeisan」「Sin:Ned」の音源を収録したコンピレーション盤も作りました。

ぜひ僕たちに会いに来て下さい。だけど、僕たちのやりかたはあなたの気持ちを昂らせてしまうと思いますので、くれぐれもご注意を。

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今回の日本ツアーのために制作されたCD
(インタビュー・文:倉持政晴)



中國極瑞音樂 ─ Extreme Music from China
(ライブ+上映+レクチャー)
2012年9月4日(火)
東京・渋谷UPLINK FACTORY

19:00開場/19:30開演
料金:予約1,800円/当日2,300円(+1ドリンク別)
上映:『FUCK YOU / Fucking Noise In China Now』(100分/英語字幕)
レクチャー:Circuit Bending by Mei ZhiYong
ライブ:Torturing Nurse/Ray Temple/Sin:Ned Ensemble、Laurent Valdes(from Switzerland/映像)
ご予約は下記より
http://www.uplink.co.jp/event/2012/1563




■ツアースケジュール

2012年8月31日(金)大分・AT HAll
http://www.athall.com/

2012年9月1日(土)福岡・Graf
Against 2012: Fukuoka Extreme Music Festival
http://fukuokaextrememusic2012.blogspot.com/

2012年9月2日(日)大阪・難波ベアーズ
http://namba-bears.main.jp/

2012年9月5日(水)東京・武蔵野美術大学
http://www.musabi.ac.jp/

2012年9月6日(木)東京・新大久保 EARTHDOM
D/G/Sp
http://www.musabi.ac.jp/

2012年9月7日(金)東京・落合SOUP
The End of Logosp
ttp://ochiaisoup.web.fc2.com/


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