写真左:映画『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』より 写真右:ミラーボーラーのFUJI ROCK FESTIVAL 2011での作品
これから日本はどうなっていくのか?と、答えのない問題を悶々と考え、日本の政治が変な方向に向かっている気がし、何が「本当」なのか?何を信じていいのか?誰を信じて良いのか?考えてる時に、ドキュメント映画『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』(長谷川三郎監督作)を鑑賞したのです。
映画『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』より (C) 2012『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』製作委員会
反骨の報道写真家・「福島菊次郎90歳」のこれまでの生き方と思いと圧倒的に力のある写真を丹念に描いた問題作。菊次郎のキャリアは66年!第2次世界戦後の広島の原爆症に苦しむ中村杉松さん一家の撮影から本格的に始まる。「死んでも死にきれない、仇うってくれ」と中村さんと約束をする。10年にもわたり、中村さん一家の苦悩を記録していく。真実というには、余りにも苦しく、悲しく、怒りが詰まった菊次郎も傷付いた写真群。その写真を発表し賞を受賞し、3人の子供とともに上京し写真集「ピカドン ある原爆被災者の記録」を刊行。三里塚闘争、安保、東大安田講堂、水俣、ウーマンリブ、祝島原発建設問題など激動の日本の鋭い写真を撮っていく。
自衛隊と軍需産業の工場を潜入取材して盗撮。その写真を発表後、暴行にあい、家を放火される。しかし負けずに権力の嘘を告発し信念を貫き通す。映画で語かかける菊次郎は、一人暮らしで自炊して元気にバイクに運転し、愛犬ロクと穏やかな日々を満喫しているように見えるが、胃ガンを患い、耳も悪くなりいつ死んでもおかしくない状態。
しかし、東北の震災、原発の事故で「フクシマはヒロシマと重なる」と感じて、福島にも撮影にいくのです。90歳で現役のカメラマン!菊次郎のレンズから通した生き方、主張はシンプルかつ深いのです。貧しいが年金も、子供からの援助も受けずに国のお世話(システム)を受けずに、権力のデタラメを訴える。その根底には放射能の後遺症で亡くなった中村さんとの約束があるからだと思うのです。本当に切ない約束なのです。日本の戦後の歴史の平和的に解釈され、忘れさせたい埋もれた真実を、思い込みを解き放つとても貴重で重要な作品。
映画『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』より (C) 2012『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』製作委員会
そして、私が尊敬する表現者、去年(2011年)参加させてもらったフジロックのミラーボーラー(ヘブンからオレンジのミラーボールのアート)の吉田真之市に話を聞きました。
吉田:章くんとは、以前やっていたバンドで交流があったんです。今は、CAVE GAZE WORLDというバンドを一緒にやっていて、ミラーボーラーというインスタレーション・アートの活動をやってるんだけど、フジロックだけでも1日ミラーボーラーみたいな感じで参加せんかね、ということで、本番と前後3日間ずつぐらい仕込みと撤収作業があるので、1週間くらい苗場で過ごすというのをやってみたらどうかな、というのが始まりですね。
── あれ一回じゃやることが覚えられない。空間デザインみたいなところがあるから、それ私はやったことないし。初めて行った2010年は土砂降りやって、とにかく寒かったという記憶しかない。
吉田:手伝ってもらうという感じで、ミラーボールを吊るす高さをあと10cmくらい上がいいんじゃない?とか言ってもらったり。実際はフジロックの3日間楽しんでもらえればという気持ちで誘ったんです。章くんが参加してくれた2011年は筒がテーマだったんです。まず、ディレクターが出してきたイメージにしたがって組んでいくんですが、テープ状の蛍光ビニールでチューブ管みたいなものを作って、そのなかにミラーボールを入れたり。それをやったら3日目のトリのケミカル・ブラザーズの舞台セットにも同じようなのが出てきて、あ、間違ってなかったんだと思いました(笑)。
FUJI ROCK FESTIVAL 2011より、ミラーボーラーの作品
── ミラーボーラーはメンバーが決まっている集団なんですか?
吉田:僕はミラーボーラー結成当初はいたんですけれど、途中地元に帰るために抜けて、戻ってきたら知らない人がいたりとかしてけっこう出入りはあったみたいですね。でもいまは、ほぼ固定メンバーで多い時は15人くらいかな。普段はそれぞれ自分の仕事をしていて。
── ミラーボールと一緒に記念写真を撮ってるお客さんを観るとよかったなって思う。前の日に仕込んで、前夜祭が終わった後、公式のパンフレットを買おうと思って(入口付近の)岩盤のところまでいったんだけど、ミラーボーラーはオレンジコートの裏にキャンプを張ってるんで、そこから戻る時に会場全体がすごい真っ暗で道に迷ったんです。でもミラーボールが見えたときにホッとした。
FUJI ROCK FESTIVAL 2011より、ミラーボーラーの作品
吉田:これからは、インスタレーションアートとしての部分を推し進めていきたい、そういう気持ちがありますね。ビジネスの面もあるし、フェスのデコレーターとしてももちろん重要なんですが、瀬戸内国際芸術祭みたいなアートイベントなどにも出展できるような、アート集団を目指したいですね。Chim↑Pomみたいになれればいいな(笑)と。ミラーボーラーとしての知名度をもっと上げて、アートの分野でもっと活動していきたいというのが目標です。やっぱり瀬戸内をはじめとした、日本全国の芸術祭に参加したり、そうしたことを経て海外でもやってみたいなと思います。あとは金閣寺とか(笑)。と僕は長崎出身なので、軍艦島でやれたらいいですね。廃れていく美しさに対して、きらびやかにしていくというのがいいんじゃないかと思います。
左:ミラーボーラーの吉田真之市氏、右:松本章氏
結論、『ニッポンの嘘』は、学ぶところが多すぎる作品すぎるのです。あきらかになるまであきらめないと感じ、後半の「祈り」で涙したのです。
映画『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』
銀座シネパトス、新宿K's cinema、広島八丁座ほか全国順次ロードショー公開中
ジャーナリスト界で「伝説」と語り継がれる報道写真家・福島菊次郎、90歳。
そのキャリアは敗戦直後、ヒロシマでの撮影に始まり66年になる。
ピカドン、三里塚闘争、安保、東大安田講堂、水俣、ウーマンリブ、祝島―。レンズを向けてきたのは激動の戦後・日本。真実を伝えるためには手段を選ばない。防衛庁を欺き、自衛隊と軍需産業内部に潜入取材して隠し撮り。その写真を発表後、暴漢に襲われ家を放火される。それでもシャターを切り続けた指はカメラの形に沿うように湾曲している。並々ならぬ執念、攻撃性を帯びた取材で生まれたのは、苦しみに悶える、ある一家の主、機動隊に槍を向け怒りを叫ぶ若者、不気味な兵器を前に笑顔を輝かせる男たちの姿だ。25万枚以上の、圧倒的な真実から我々は、権力に隠された「嘘っぱちの嘘っぱち」の日本を知ることになる。冷静に時代を見つめ、この国に投げかけ続けた「疑問」を、今を生きる我々日本人に「遺言」として伝えはじめた時、東日本大震災が発生。福島第一原発事故を受け、菊次郎は真実を求め最後の現場に向かうのだった…。ヒロシマからフクシマへ。権力と戦い続けた老写真家は、今ここで「日本の伝説」となる。
監督:長谷川三郎
プロデューサー:橋本佳子、山崎裕
撮影:山崎裕
録音:富野舞
編集:吉岡雅春
配給:ビターズ・エンド
2012年/日本/114分/カラー
※詳細は公式HPにて
ミラーボーラー MIRRORBOWLER プロフィール
数百個のミラーボールを使って「宇宙と和式美」をテーマに光と反射の空間作品を創りだすアート集団。 グラフィックデザイナー、写真家、照明家、美術講師など様々なジャンルのメンバーからなる。2000年から活動を始め、2003年夏に世界的ロックフェスFUJI ROCK FESTIVALに会場装飾として参加、数百個のミラーボールで森の中に壮大な光の幻想空間を演出、大きな反響を得る。以降ライジングサン・ロックフェス、カルティエ新作披露パーティー、CHAUMET新作披露パーティー、バレンタイン・アイランド・ENOSHIMA、十五夜の宴(奈良)など数々のイベントなどにおいて作品を発表している。
http://www.mirrorbowler.com/
■松本章(まつもとあきら、音楽・ふーてんき)プロフィール
1973年生まれ、大阪芸術大学映像学科卒。本名松本章、伊勢男子、とあるバンドを脱退し現在高円寺当りに在住。ふーてんきの音楽担当。熊切和嘉監督作品、山下敦弘初期作品の映画音楽をプロデュース。熊切和嘉監督『ノン子36歳(家事手伝い)』、内藤隆嗣監督『不灯港』、山崎裕監督『トルソ』、今泉力哉監督『こっぴどい猫』などの音楽を手掛けた。
Twitterは @akiraise
blogは http://ameblo.jp/akira-toumei/
▼映画『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』予告編