サントリー芸術財団が開催する、今年で25周年を迎えるシリーズ・コンサート「サマーフェスティバル」が東京都港区赤坂のサントリーホールで2012年8月22日(水)から31日(金)まで開催。毎年20世紀の音楽の検証と、新しい作家が紹介されるこのフェスティバル、本年もクセナキスの『オレステイア』ジョン・ケージの『ミュージサーカス』など、多様な催しで目が離せない。
今年は、フェスティバル25周年を記念して、古代ギリシャの悲劇作家アイスキュロス原作『オレステイア』3部作にヤニス・クセナキスが作曲した現代オペラをサントリーホールのための新たな演出で上演する。
ヤニス・クセナキス (c)Photo X - Salabert - All rights reserved.
演出には、現在、オペラの世界で最も大きな注目を集めている舞台演出家集団ラ・フラ・デルス・バウスを迎える。ラ・フラ・デルス・バウスは、1979年に街頭演劇集団としてスタート、1984年までカタルーニャ周辺の都市で活動を展開し、独自の演劇言語を確立した。1992年のバルセロナ・オリンピック開会式の演出を務め、一躍その名を世界に知らしめた。その模様を5億人以上が目にすることになったことで、演劇、オペラ、企業イベント、デジタル・シアター、映画といった多方面へ表現活動を広げた。
ラ・フラ・デルス・バウスの演出家カルルス・パドリッサ (c)La Fura Dels Baus
ラ・フラ・デルス・バウスの舞台美術を担当するローラン・オルベーター (c)La Fura Dels Baus
ラ・フラ・デルス・バウスの衣装を手がけるチュー・ウロス (c)La Fura Dels Baus
ラ・フラ・デルス・バウスによるコスチューム・ブック (c)La Fura Dels Baus
主なオペラ作品としてファリャ『アトランティダ』(1996年)ドビュッシー『聖セバスチャンの殉教』(1997年)モーツァルト『魔笛』(2003年)ワーグナー『ニーベルングの指環』(2007年)プッチーニ『トゥーランドット』(2011年)などを手がける。日本では、2005年にカフカ『変身』、2008年にはパリ・オペラ座来日公演で『消えた男の日記』『青ひげ公の城』が紹介された。
本格的な演出による『オレステイア』完全版での上演は日本初となる。これにあたり、ブザンソン国際指揮者コンクール優勝以来、国内外に活躍の場を広げている若手、山田和樹氏が初めてのオペラ指揮にあたる。
『オレステイア』の指揮を担当する山田和樹氏 Photo:Marco Borggreve
ジョン・ケージ (C)Courtesy Edizioni Suvini Zerboni, Milano
音楽家としてのみならず、詩人、思想家、そしてキノコ研究家として知られるジョン・ケージ。今年、生誕100年・没後20年を迎える彼の芸術活動の中で象徴的・社会的な意味を持つマルチメディア・パフォーマンス〈ミュージサーカス〉がサマーフェスティバル25周年を記念して行われる。千 宗屋氏(武者小路千家15代若宗匠)、白石美雪氏、岡部真一郎氏の監修による今回のテーマは「即今」。会場内を移動しながら、ケージのアート作品展示や、易卦によって個別に決められた時間にスタートする、まさに今ここでしか得られない音楽、様々なパフォーマンスを体験することができる。なおこのパフォーマンスは入場無料となっている。
フランコ・ドナトーニ(C)Courtesy Edizioni Suvini Zerboni, Milano
他にも特集として、2012年で生誕85年を迎えるイタリアの現代音楽の作曲家フランコ・ドナトーニの管弦楽作品集が上演される。現代音楽界の巨匠であり、国際的に影響力の強い存在でありながら、日本で演奏される機会の少ないドナトーニの作品をまとめて聴くことのできる貴重な公演で、全曲日本初演となっている。作曲を彼に師事して学んだ杉山洋一氏の指揮、東京フィルハーモニー交響楽団の演奏により、ドナトーニの個性を堪能することができる。
細川俊夫氏 (C)Kaz Ishikawa
武満徹氏の偉大な創意とヴィジョンによってサントリーホールが1986年の開館以来続けてきた国際作曲委嘱シリーズは、2004年からサマーフェスティバルの一環として開催しているが、2012年は同シリーズの監修者に就任する、日本を代表する作曲家細川俊夫氏が数ある委嘱作品のなかから選んだ3曲を、秋山和慶氏の指揮、東京交響楽団の演奏で再演。「これまでの作品群の中から、既に世界の作曲界の中でも問題作として再演が繰り返され、しっかりとした歴史的評価を獲得している作品を選びました」という細川氏の言葉にもあるように、クセナキス「ホロス」など、刺激的な楽曲がサントリーホールで奏でられる。
山根明季子氏 (c)Miya
西原鶴真氏
戦後の日本音楽界の発展に多大の貢献をされた故芥川也寸志氏の功績を記念して、1990年に創設された「芥川作曲賞」。前年度(1月~12月)に国内外で初演された日本人新進作曲家による管弦楽曲の中から、もっとも清新かつ将来性に富む作品1曲を公開の演奏選考会形式により選定し、同賞を贈賞。受賞者には新しい管弦楽曲の作曲が委嘱される。候補4作品の演奏前には、第20回受賞者である山根明季子氏の新作『ハラキリ乙女~琵琶とオーケストラのための』が世界初演されることになっており、琵琶奏者として西原鶴真が参加する。
例年にもましてバラエティに富んだ出演者と趣向に富んだサントリーサマーフェスティバル。現代音楽を難しいと感じている人にこそ楽しんでもらいたい。
サントリー芸術財団
サマーフェスティバル 2012〈MUSIC TODAY 21〉
2012年8月22日(水)~31(金)
サントリーホール
サマーフェスティバル25周年記念特別公演〈オペラ〉
ヤニス・クセナキス:オペラ『オレステイア』
8月31日(金)19:00 大ホール
演目:
オペラ『オレステイア』3部作(ギリシャ語上演 字幕付き)(1992)
「アガメムノーン」「供養する女たち」「慈しみの女神たち」
原作:アイスキュロス(紀元前525-456)
作曲:ヤニス・クセナキス(1922-2001
)
出演:
バリトン=松平 敬、打楽器=池上英樹、合唱=東京混声合唱団(合唱指揮=山田 茂)、児童合唱=東京少年少女合唱隊(合唱指揮=長谷川久恵)、 演出=ラ・フラ・デルス・バウス、舞台監督=小栗哲家
音響=有馬純寿、演奏=東京シンフォニエッタ、指揮=山田和樹
サマーフェスティバル25周年記念〈ミュージサーカス〉
ジョン・ケージ:ミュージサーカス
8月26日(日)14:00~19:00 ブルーローズ(小ホール)他
監修:
千 宗屋、白石美雪、岡部真一郎
* 詳細はウェブ上で発信していきます。
http://www.webdice.jp/suntory_musicircus/
* 会場の状況により、入場を制限させていただく場合があります。ご了承ください。
フランコ・ドナトーニ ~ 生誕85年記念 ~〈管弦楽作品集〉
8月22日(水)19:00 大ホール
曲目(全曲日本初演):
フランコ・ドナトーニ(1927-2000):
イン・カウダ(行きはよいよい帰りは怖い)II(1993-1994)
イン・カウダ(行きはよいよい帰りは怖い)III(1996)
エサ(イン・カウダV)(2000)
プロム(1999)
ブルーノのための二重性(1974-1975)
出演:
指揮=杉山洋一
管弦楽=東京フィルハーモニー交響楽団
サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ
再演特集〈細川俊夫セレクション〉
8月27日(月)19:00 大ホール
曲目:
ヤニス・クセナキス:ホロス(1986.10.24初演)
サルヴァトーレ・シャリーノ:シャドウ・オブ・サウンド~オーケストラのための(2005.8.27初演)
ヘルムート・ラッヘンマン:書(2003.12.4初演)
出演:
指揮=秋山和慶
管弦楽=東京交響楽団
サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ
再演特集〈細川俊夫セレクション〉
8月27日(月)19:00 大ホール
曲目:
ヤニス・クセナキス:ホロス(1986.10.24初演)
サルヴァトーレ・シャリーノ:シャドウ・オブ・サウンド~オーケストラのための(2005.8.27初演)
ヘルムート・ラッヘンマン:書(2003.12.4初演)
出演:
指揮=秋山和慶
管弦楽=東京交響楽団
第22回芥川作曲賞選考演奏会
8月26日(日)15:00 大ホール
◇山根明季子(1982-):ハラキリ乙女~琵琶とオーケストラのための~(2012)世界初演
(第20回芥川作曲賞受賞記念サントリー芸術財団委嘱作品)
◇第22回芥川作曲賞候補作品(演奏順未定)
阿部俊祐(1984-):イル(2011)
新井健歩(1988-):鬩ぎ合う先に~オーケストラのための~(2011)
大場陽子(1975-):誕生(2011)
塚本瑛子(1986-):「一瞬の内に」オーケストラのための(2011)
指揮=大井剛史
琵琶=西原鶴真(山根作品)
管弦楽=新日本フィルハーモニー交響楽団
◇公開選考会(候補作品4曲演奏後にステージ上で公開選考を行います。)
司会:片山杜秀
選考委員:北爪道夫/高橋 裕/原田敬子
◇贈賞式
【入場料】
フランコ・ドナトーニ ~ 生誕85年記念 ~〈管弦楽作品集〉(大ホール)
8月22日(水):S席=4,000円 A席=3,000円 B席=2,000円
ジョン・ケージ:ミュージサーカス(ブルーローズ(小ホール)他)
8月26日(日):無料
芥川作曲賞選考演奏会(大ホール)
8月26日(日):2,000円(全席指定)
サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ
再演特集〈細川俊夫セレクション〉
8月27日(月):S席=4,000円 A席=3,000円 B席=2,000円
ヤニス・クセナキス:オペラ『オレステイア』
8月31日(金):S席=8,000円 A席=6,000円 B席=4,000円 C席=2,000円 (※A席は残り僅か、B席、C席は完売)
お問い合わせ・電話予約
東京コンサーツ 03-3226-9755
サントリーホールチケットセンター 03-3584-9999
チケットぴあ 0570-02-9999
イープラス
東京文化会館チケットサービス 03-5685-0650
サントリー芸術財団ホームページ http://suntory.jp/SFA/
監修※1:岡部真一郎、白石美雪
監修※2:千 宗屋
監修※3:細川俊夫
主催:サントリー芸術財団
協賛:サントリーホールディングス株式会社
協力:サントリーホール
協力※4 :(社)日本作曲家協議会、(社)日本音楽著作権協会
助成:芸術文化振興基金
公益財団法人ロームミュージックファンデーション
アーツカウンシル東京準備機構(公益財団法人東京都歴史文化財団)
制作協力:東京コンサーツ
※1 芥川作曲賞選考演奏会を除く
※2 ミュージサーカスのみ
※3 サントリーホール国際作曲委嘱シリーズのみ
※4 芥川作曲賞選考演奏会のみ
詳しい情報はサマーフェスティバル公式HPまで