映画『ライク・サムワン・イン・ラブ』より (c)mk2/eurospace
年老いた元大学教授は、かりそめの愛を求めた。かつて確かに存在していた家庭のぬくもりがほしかったから。しかしその夢をかなえてくれるはずの少女の出現は、人生の終わりをむかえつつある老人をはげしく揺さぶっていくのだった…。
10分近く鳴り止まぬスタンディング・オベーション。本年度カンヌ国際映画祭のコンペティションで『ライク・サムワン・イン・ラブ』が正式上映された後、監督・出演者らは暖かい拍手に包まれつづけた。イランの巨匠アッバス・キアロスタミが、国境を超えて監督した2作目、しかも日本人俳優を使い日本で撮影し日本語で作られた映画『ライク・サムワン・イン・ラブ』。アジアやヨーロッパなど各国のジャーナリスト・批評家がつめかけた公式記者会見でキアロスタミ監督は「私の映画は始まりがなく、終わりもない」と謎めいた言葉で自作を語った。
すでに70歳を越えたキアロスタミ監督が、自身を投影するかのように造形し、その逡巡する姿がいかにも「キアロスタミ的人物」である、社会学の元教授タカシ。彼の“老いのロマンティシズム”ともいえる愛への執着を中心に、場面ごとに刻々と表情や態度を変えていく女子大生明子、彼女の恋人だがストーカー的に明子を拘束しようとするノリアキ、それぞれの「一方的な愛と欲望と孤独」「うそとほんと」をめぐるドラマが、一日にも満たない時間の中で、表面上は穏やかに、水面下では激しく、めまいのように展開し、ふいに投げ出されるかのように唐突に終焉を迎える。それはキアロスタミによって鋭く切り取られた、「始まりもなく、終わりもない」、途切れなく続く人生というドラマの一部分だ。
映画『ライク・サムワン・イン・ラブ』より (c)mk2/eurospace
かつて『クローズアップ』(90年)や『友だちのうちはどこ?』(87年)で、〈こんな映画がありうるのか?!〉と世界を驚かせたキアロスタミは、カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した『桜桃の味』(97年)以降、さらに大胆な表現へと向かっていった。デジタルビデオの活用や、ほとんど物語のない作品、写真や映像インスタレーションの展示、同い年で交流のあるビクトル・エリセとの往復映像書簡(05-07年、ポンピドゥセンター等で上映)、演劇を見る人々の表情だけを撮った『シーリーン』(08年)や、イランの古典聖史劇の舞台とその観客をマルチスクリーンのインスタレーションで展示する『タジエを見る』(04年)など、年齢とともにその自由度、実験精神は広がる一方だった。
そのなかで、長篇映画としてはイラン国外ではじめて撮影され、「一見ふつうのロマンスに見えて、ありきたりではないラヴストーリー」という不可思議な魅力にあふれた前作『トスカーナの贋作』(10年)につづいて企画されたのが、日本・フランス共同製作の本作『ライク・サムワン・イン・ラブ』である。
映画『ライク・サムワン・イン・ラブ』より (c)mk2/eurospace
本作の制作にあたりキアロスタミ監督は、日本においてもその独自の演出スタイルを貫き撮影を敢行した。有名無名、演技経験の有無に関わらずオーディションで選ばれた全てのキャストは、その日ごとの台本しか渡されず、最後の結末も知らされないまま撮影は進んだという。そうした俳優にとっては過酷な洗礼といえる現場において、タカシ役の奥野匡は84歳にして初の主演ながら、その年齢がもたらす経験値でタカシを演じきり、もう一人の主役明子役の高梨臨も無垢な少女の驚きや戸惑いを感情のおもむくままに体現している。海外監督作も多いノリアキ役の加瀬亮は、変則的な演出にも柔軟に応え、新たな魅力を引き出している。
本作は日本とフランスの共同製作であり、クラウドファンディングのmotion gallaryによる製作出資も行われた。2011年10月29日にクランクインし、12月24日にクランクアップ。東京と神奈川、静岡で撮影されている。(以上、プレスより引用)
映画『ライク・サムワン・イン・ラブ』
9月15日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開
監督:アッバス・キアロスタミ
出演:奥野匡、高梨臨、加瀬亮
撮影:柳島克己
編集:バーマン・キアロスタミ
美術:磯見俊裕
録音:菊池信之
製作:ユーロスペース+mk2
配給:ユーロスペース
2012年/日本・フランス共同製作/109分/DCP/1:1.66
公式サイト:http://www.likesomeoneinlove.jp/
試写会に3名様をご招待
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『ライク・サムワン・イン・ラブ』3名様ご招待
日時:2012年8月2日(木)15:00開場/15:30開演
会場:松竹試写室(中央区築地4-1-1 東劇ビル3F)[日比谷線、都営浅草線東銀座駅6番出口徒歩2分][地図を表示]
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