骰子の眼

cinema

東京都 中央区

2012-07-13 16:09


自分の中にある、しまい込んでいた夢や感情が揺さぶられる

日本を代表する絵本作家が辿った数奇な人生『いわさきちひろ~27歳の旅立ち~』クロスレビュー
自分の中にある、しまい込んでいた夢や感情が揺さぶられる
映画『いわさきちひろ~27歳の旅立ち~』より (C)CHIHIRO ART MUSEUM

子どもの頃に日本人の誰もが親しんだ、いわさきちひろの絵本。滲んだような効果を用い透明感に溢れた彼女の作風がどのようにして生まれたのか、そして子どもを描き続けた理由について、本作で明らかにされる。

若くして望まぬ結婚を強いられ、挫折感のなかで画家を目指す、そのひとつひとつのエピソードが、彼女の元来の芯の強さを証明する。わが子を作品のモチーフとし続けることで、作品の進化と子どもの成長と、ちひろ自身に芽生える平和を脅かすものへの強い抵抗。がんとして譲らない意思と衝動こそが、それまで軽んじられてきた画家の著作権や地位について社会が再考をうながすきっかけとなり、強い反戦への思いに満ちた絵本があらゆる図書館に置かれているということを実感する。

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映画『いわさきちひろ~27歳の旅立ち~』より (C)CHIHIRO ART MUSEUM

彼女の夫や知人、ちひろが絵を描いた『窓ぎわのトットちゃん』で知られ、ちひろ美術館の館長でもある黒柳徹子など、関係者の証言からも、たゆまぬ子どもへの愛情を持つ、とてもロマンティックで情熱的な女性だったことを窺い知ることができる。

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映画『いわさきちひろ~27歳の旅立ち~』より (C)CHIHIRO ART MUSEUM

ドキュメンタリーの醍醐味とは、知られざる個人や世界の歴史を白日の下に晒すこと。そして見る者に価値観の転換をもたらすもの、そして問いを投げかけるものだとしたら、この『いわさきちひろ~27歳の旅立ち~』は、ドキュメンタリーでなければいけない必然性のある作品だろう。




映画『いわさきちひろ~27歳の旅立ち~』
7月14日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町、テアトル新宿ほか全国順次ロードショー

エグゼクティブプロデューサー:山田洋次
監督・編集:海南友子
声の出演:檀れい(女優)、田中哲司(俳優)
ナレーション:加賀美幸子
出演:黒柳徹子(女優/ちひろ美術館館長)、高畑勲(アニメーション映画監督)、ほか
プロデューサー:向山正利
撮影:南幸男、伊東慎治、若尾泰之
企画・特別協力:財団法人いわさきちひろ記念事業団
製作:ホライズン・フィーチャーズ
助成:文化芸術振興費補助金
配給・宣伝:クレストインターナショナル
2012年/日本/カラー/96分/HDCAM/ステレオ/16:9

公式サイト:http://www.chihiro-eiga.jp




▼『いわさきちひろ~27歳の旅立ち~』予告編



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