骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2012-07-27 00:00


3姉妹の前を向いて颯爽と生きようとする姿が愛おしい

小林政広監督が311被災地を舞台に女性のたくましさを描く『ギリギリの女たち』クロスレビュー
3姉妹の前を向いて颯爽と生きようとする姿が愛おしい
映画『ギリギリの女たち』より (C)2011 モンキータウンプロダクション/映画「ギリギリの女たち」製作委員会

2011年3月11日の東日本大震災から5ヵ月後、被災地である気仙沼市唐桑町で今作は撮影された。この町に家を持つ小林政広監督は、できるだけ震災後の空気感が反映されるようにという意図のもと、35分にわたる長回しをはじめ、様々な技法をこらし、自然の猛威が生んだ傷跡と、そこで戸惑う人間を捉えようとする。多くの命を奪った311はまた、離れていた姉妹をこの場所で再び出会わせる。小林作品には4度目の出演となる渡辺真起子がダンサー役の長女・高子を、『ストロベリーショートケイクス』などで高い評価を得る中村優子が東京で主婦となっている次女・伸子を、そしてふたりが離れた後の実家を憤りを感じながら守り続けてきた強気な三女の里美を藤真美穂がそれぞれ好演。

webdice_giri_sub3
映画『ギリギリの女たち』より (C)2011 モンキータウンプロダクション/映画「ギリギリの女たち」製作委員会

三者三様の生活での悩みを抱えながら、ポジティブに生きようと姉妹の関係性を確認する過程が、ちょっとしたユーモアを交えながら描かれる。極限まで削ぎ落とされた構成やセリフを特徴とし、常にストーリーの中に現代社会の暗部を捉えようと野心的な試みを続ける小林監督。『愛の予感』『ワカラナイ』などこれまでの作品でも印象深かった、登場人物が無心に食事をするシーンは今作にも用意されており、人間の根源的な渇望をここでも活写している。そして、シリアスなテーマにもかかわらず、ふいに訪れるラストの開放感こそ、小林監督作品の真骨頂と言えるだろう。

webdice_giri_sub4
映画『ギリギリの女たち』より (C)2011 モンキータウンプロダクション/映画「ギリギリの女たち」製作委員会



映画『ギリギリの女たち』
2012年7月28日(土)より、ユーロスペース、シネ・リーブル梅田他、全国順次公開

2011年の夏。震災の傷跡が残る気仙沼市唐桑町にある一軒家。震災を機に、ダンサーの長女・高子(渡辺真起子)がニューヨークから実家へ帰ってくる。15年ぶりにわが家で彼女は、同じく故郷を離れ、東京で主婦をしている次女・伸子(中村優子)と再会。ふたりの会話はどこかぎこちなく、噛み合わない。そんな中、姉たちに取り残され、一人で家を守り続けてきた三女の里美(藤真美穂)が現れる。里見は突然戻ってきた身勝手な姉たちに対して、ため込んでいた怒りを爆発させる。バラバラになってしまった3姉妹。傷つき合いながら、徐々に互いの気持ちを吐き出し、やがて彼女たちの心に変化が訪れる…。

出演:渡辺真起子、中村優子、藤真美穂
脚本・監督:小林政広
製作:オールイン エンタテインメント、Grist
企画・制作:モンキータウンプロダクション
企画協力:Breath、DECADE
配給:ブラウニー
2011年/101分/デジタル
(C)2011 モンキータウンプロダクション/映画「ギリギリの女たち」製作委員会

公式サイト:http://www.girigiri-women.com

▼『ギリギリの女たち』予告編



レビュー(4)


コメント(0)