骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2012-04-06 16:31


駐留=Standing Armyがもたらす住民の心的被害を映し出す

イタリア人監督が世界の米軍基地問題を捉えた『誰も知らない基地のこと』クロスレビュー
駐留=Standing Armyがもたらす住民の心的被害を映し出す
映画『誰も知らない基地のこと』より (c) Effendemfilmand Takae Films

沖縄の普天間に代表される世界各地に存在する米軍基地は何のために存在するのか。イタリアの若手監督、エンリコ・パレンティとトーマス・ファツィはこの『誰も知らない基地のこと』で、自国で2007年に発表されたビチェンツァの米軍基地建設とそれに対する反対運動や住民投票への行動を発端に、インド洋のディエゴ・ガルシアなど、各地の住民を取材。専門家の分析を交えながら、国民の安全ではなく軍事複合体の成長を最優先する一部の人々によってコントロールされており、基地が決して抑止力にはならずむしろ戦争に繋がることを伝える。

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映画『誰も知らない基地のこと』より (c) Effendemfilmand Takae Films

冷戦後、軍事複合体を存続させるために、共産主義に変わる別の敵を探し戦争を繰り返し、世界約40ヵ国、700ヵ所以上まで基地を拡大させたアメリカの現実を突き付ける今作。ヨーロッパでの良い評価に対して、アメリカでなかなか配給されず苦心していることを両監督は漏らしていたが、テレビのニュースでは報じられない事実を伝えるドキュメンタリー映画の意義を率直に感じることのできる作品だ。そして、先祖代々受け継ぎながらも基地となってしまった土地で、大根を育て県民に配ろうと語る沖縄の反戦地主・島袋善祐氏の言葉や「これはレジスタンス」だと座り込みを続ける人々の態度といった、各国の住民たちの抵抗の姿勢には希望を感じずにはいられない。

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映画『誰も知らない基地のこと』より (c) Effendemfilmand Takae Films



映画『誰も知らない基地のこと』
2012年4月7日(土)、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

監督:エンリコ・パレンティ、トーマス・ファツィ
撮影:エンリコ・パレンティ
編集:デジデーリア・ライネル
音楽:ステファノ・ピロ
出演:ゴア・ヴィダル、ノーム・チョムスキー、チャルマーズ・ジョンソン
提供:メダリオンメディア
配給・宣伝:アンプラグド
宣伝協力:プレイタイム
2010年/イタリア/74分/カラー/ビスタサイズ/ステレオ
公式サイト:http://kichimondai.com/

▼『誰も知らない基地のこと』予告編



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