骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2012-04-04 23:59


Shing02が語る内部被曝「ファイナル・アンサーは個人の免疫力」

4/7(土)より『核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝』公開
Shing02が語る内部被曝「ファイナル・アンサーは個人の免疫力」
Shing02

被爆医師として広島の原爆投下直後から現在まで低線量放射線、内部被曝の問題を訴え続けている肥田舜太郎医師のドキュメンタリー映画『核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝』が4月7日(土)から渋谷アップリンクで上映される。今回は、「僕と核」と題して2006年よりウェブ上で原子力について自らの研究結果を発表し、先ごろその最新レポート「僕と核2012」をリリースしたMC/活動家のShing02によるテキストを掲載する。

政府がなかったことにしようとしているのは、今も昔も変わらない

僕は2006年に坂本龍一さんから六ヶ所村の核燃料再処理工場に反対するプロジェクトに誘われたのをきっかけに、原子力について調べたレポートを「僕と核」というかたちでウェブで発表してきました。そして鎌仲ひとみ監督の映画『ミツバチの羽音と地球の回転』(2010年)と、新作『内部被ばくを生き抜く』の音楽を担当しています。その鎌仲さんの新作にも、肥田先生はインタビューで出演しています。
『核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝』では、311以降議論されてきた内部被曝という脅威と、広島・長崎での被爆との間を、体験としても解釈としても被曝とは何かを知る肥田先生が繋げています。歴史の文脈で見ていくと、そこがリンクしていることがわかります。
被曝の問題は、結局は細胞に対する暴力です。 バイオレンスとは、必ずしもフィジカルなものだけではなく、人権にも健康についても言えるし、情報や映像もバイオレンスになりうる。なにをもって暴力と呼ぶのか、公共の場で行われているコミュニケーションや消費活動など、対人関係の基本的なところから振り出しに戻して考えなければならないと思います。
今年の3月21日に、この一年間のレポートを『僕と核2012』としてインターネットに出しました 。そこで僕は、個人の健康と免疫について触れることで、原子力は怖いというイメージをいちどニュートラルにしています。けれど、『核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝』を観た人が、原子爆弾と原子力発電のふたつのイメージをどう処理していくのか。ひとつのパレットにごちゃまぜになっているところをどうやって伝えていくかは 、すごく難しいことではないでしょうか。
そして、多くの人が新聞やテレビといったメディアを通して学んでいる裏で、このような原爆の歴史を知ることは大事です。311の事故がなかったとしても、みんなが学ばなければいけないことだし、政府がなかったことにしようとしているのは、今も昔も変わらない。まとまった意見としての存在価値がこのような映画にはある。そして、能動的なアクションとして学ぶこと。情報を記憶するだけではなく、学んだ分パワーアップするんだ、という意識が必要だと思います。

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映画『311以降を生きる:肥田舜太郎医師講演より』の一場面

強い意思を持って前向きに生きることが大切

肥田先生をはじめとした専門家が低線量被曝について語っていることも、安全だという人とそうではないという人のどちら側にも偏見があるというのが、この一年間調べてきたなかでの率直な意見です。僕はスターングラス博士に直接インタビューしているけれど、彼の言葉だけが全てとは思いません。たとえばスターングラス博士は、アメリカで原発の近くに住んでいる子供たちの乳歯から検出されたストロンチウム90は、かつての核実験の時代と同じくらい高くなってきていて、これは原発が放射性物質を出し続けている確固たる証拠だと語っています。しかし、内部被曝が多くの病気の増加や、学力の低下にまで100パーセント関係しているのかは、統計をもってみても言い切れません。
でも、そこで議論することは重要ではありません。僕はそのファイナル・アンサーは、科学者の出した統計ではなくて、個人の免疫力だと思います。そこまで健康にこだわるのであれば、放射能以外の問題もこれだけあります、ということをフェアに言う必要があるでしょう。
アートに無限の解釈があるように、情報を提供して、その人なりに理解してもらった以上、その情報はその人のものです。教育も同じで、情報を受けとった人が他の人に伝えられる力がなければなりません。情報の点と点を繋げると線になり、その線を繋げるとなにが見えるのか。それを促すために、このような映画という手法があると思います。
最新の科学も示しているように、人間の健康はホルモンなどを通して精神状態と密に繋がっていますから、心をタフにすることも健康を守ることに大きく貢献しているのではないかと思います。
僕が肥田先生の言っていることでいちばん共感したのは、放射能の不安と戦うためにも、生まれ持った免疫力を保つために早寝早起きをして、食事はよく噛んで、規則正しい生活をしろ、というところ。
そして、強い意思を持って前向きに生きることが本当に大切だと思います。

(『核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝』パンフレット『311以降を生きるためのハンドブック』より転載 構成:駒井憲嗣)



映画『核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝』
2012年4月7日(土)、渋谷アップリンク他、全国順次公開

監督・脚本・撮影・録音:マーク・プティジャン
助監督・編集:瀬戸桃子/製作:オンライン・プロダクションズ
日本版ナレーション:染谷将太
フランス/2006年/日本語・英語/53分

併映作品:『311以降を生きる:肥田舜太郎医師講演より』
日本/2012年/日本語/27分/アップリンク製作

公式サイト:http://www.uplink.co.jp/kakunokizu/

▼『核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝』予告編



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