骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2012-02-26 17:15


本当の事を知りたいが、まさに幻魔の状態の現在

映画の愛に☆直感 第14回:真利子哲也監督『NINIFUNI』、いましろたかし『原発幻魔大戦』Wレビュー
本当の事を知りたいが、まさに幻魔の状態の現在
写真左:映画『NINIFUNI』より (c) ジャンゴフィルム、真利子哲也 写真右:いましろたかし『原発幻魔大戦』

映画のタイトルが凄く気になって『NINIFUNI』を観たのです。NINIFUNIとは二而不二という仏教用語で、二つであっても一つではなりたたず、決して一つには交ざらず、二つではないもの。煩悩と悟りの境地が二つであって混じらないという仏教の教えなのです。

なんでもない地方都市で二人組が強盗事件を起こす、共犯の青年・宮﨑将(『EUREKA』)は盗んだ車で寂れた国道を当て所なく彷徨う……。世界から取り残されたというか、気付かれていない青年。一方では世間から熱い注目を受けているアイドルグループ・ももいろクローバー(現在はももいろクローバーZに改名)が本人役でプロモーション・ビデオの撮影として、PVのプロデューサ・山中崇(『海炭市叙景』)とその地に訪れる。全く別々の対照的な二つが、重なった時に一体何が見えるのか?

この作品は42分の中編で、決して分かりやすい物語ではないですが、物語には無駄がありません。例えば普通の映画であれば事件を起こす時の心の葛藤とか、人物の描写とか入るのですが、この作品には一切ない。音楽もPV撮影のシーン以外なく、台詞も極力少なくて非常に淡々としていて、役者に寄り添って丁寧に撮影されていて、まるでドキュメント映画を観ている気分になったのです。

第三者の目線で、それを神的な目線というのかもしれないのだけど……ラストのショットの希望と絶望に揺れる世界の融合にハッとさせられ、美しくも現実的な残酷がそこに現れるのです。国道を轟音で走る車が通り過ぎた静寂をはじめ、ヒリヒリと尖った作品で、沈黙の叫びが心に響くのです。実際にあった事件をもとにこの作品は作られているとのことで、何故事件を起こして、より孤独に追い込まれていくのか?この孤独な青年の気持ちを理解しようと思うけど、他人の気持ちを理解するのは非常に難しく、分かった気持ちになる事はきっとおこがましいなんだろうな……人は孤独では生きられないし、心の豊かさとか、きっと今、色んな意味で新しい宗教(カルトでなく)や哲学がいる時代だと感じたのです。

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映画『NINIFUNI』より (c) ジャンゴフィルム、真利子哲也

久しぶりに主演となる宮﨑将の自然すぎる演技、もはや存在というか「在る」という演技が凄い。そして元気の出る音楽にも注目で、エンドロールで流れる「行くぜっ!怪盗少女」の〈笑顔と歌声で世界を照らし出せ〉という歌詞が効いていて、作品のPVシーンも躍動感のある演出だったのです。30歳くらいの若いスタッフで作られた感度の高い作品だけに、是非、銀幕で目撃して体感してほしいのです。いろんな思いを感じられる力作!考え出すと輪廻転生のごとく思考がグルグルまわり、語りにくいので……とにかく考えるな!感じろ!衝撃をうけて欲しい作品なのです。

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映画『NINIFUNI』より (c) ジャンゴフィルム、真利子哲也

『NINIFUNI』の奇麗な海を思い出した後に、いましろたかし作/画『原発幻魔大戦』を読んだのです。東京に住む普通の会社員のサトーが東日本地震後に感じた、原発の爆発事故、放射能の恐怖、政府、マスコミ、財界の「嘘」にまみれた対応、そしてTPPといった大問題に対する恐怖と怒り、慟哭の日々を描き、意義を申し立てた問題作!!

地震があった当初、東北の友人の安否を確認したり、東京では食品などが売り切れ、新潟の知り合いは計画停電で寒いと言っているなか、東京の人がトイレットペーパーを買い占めしていったとか……去年の1年をリアルに思い出したのです。

最初は大丈夫!大丈夫!と自分に言い聞かせ、いろいろあったけど乗り切った気がした……。しかし、五感で感じれない放射能の恐怖と、もう一回地震が来たらまた原発が爆発するんじゃないか?という心配が押し寄せた。
原子力推進派の学者も立場を変えたり、一体何が本当なのか?新聞、ネットなどで情報を集めても限界があるし、大阪の化学者に電話で相談したら「東京は大丈夫でしょう」といってたが、どんどん?が多くなる……。新宿のサウンドデモも逮捕者がでて気狂い扱いの報道……。
やらんよりやった方がいいかなと思って、デモに参加して肌で感じたいと思って参加したけれど、なんだこの異常な事態って本当に感じたのはTPPに対する野田総理の対応を目の当たりにしたとき。TPP交渉参加を各国に相談するとか、国際会議で消費税上げるとか、えっ!!まだ国内で決まってないやんと思う大事な事をなぜ「いやー国際会議で言ったから、もう仕方ないんです」とかなってるの?日本は独自の風土とか失ってはいけない大切な事ってきっとある。自由にしすぎたら悲惨な世界になると思うのです。しかもTPPはほぼアメリカ基準!!毒饅頭すぎる!!しかも野田総理はISD条項分かってなかったし……。駄目だクラクラする…。

『原発幻魔大戦』は、この答えのでない問題をこの作品はワタスの言葉よりも強く表現され理解できる作品。目次には震災からの異常で嘘まみれの1年の問題の年表、そして政治家の田中康夫と著者の対談(これも読みごたえがある!)があって、決して忘れてはいけない1年が記録されいる傑作なのです。続編が読みたい!

本当の事を知りたいが、まさに幻魔の状態の現在、原子力、政治、TPPとか興味がある人ない人、日本で安心して暮らしたいと、ちゅうか日本で生活する人に全員読んでもらいたい!!原発とTPPの話を他の人にするとしょーがないと言われどん引きされたこともあったけど、あきらかになるまであきらめては駄目なのです!

結論、両作品とも現実を感じられる大切な作品なのです。美しい海が戻るまでなんとか生きる!そして本当に笑える日が来るまで頑張ろう強く思ったのでした。




映画『NINIFUNI』
ユーロスペースにて公開中、2/25(土)よりシネ・リーブル梅田
名古屋:シネマスコーレ京都みなみ会館ほか全国順次ロードショー!

殺風景な地方都市。1つの事件が起こる。事件に関与し、奪った車で国道を彷徨う青年(宮﨑将)と、プロモーションビデオの撮影で、その地を訪れたアイドルグループ(ももいろクローバー)。誰にも見えない青年と熱い視線を浴びるアイドル。別々の 世界が交差するとき、そこに見えるものは何なのだろう。

監督・脚本・編集:真利子哲也
出演:宮﨑 将、山中 崇、ももいろクローバー 他
2011年/日本/42分/カラー/1:1.85
配給:ムヴィオラ
配給協力:日活

※詳細は公式HPにて




いましろたかし『原発幻魔大戦』

ダメな男たちを活写し、かつて癒し系漫画家であった、いましろたかし。だが、3.11以降明るみになった政府、メディア、財界、官僚の腐敗を看過できず、本書において反原発、反TPPを宣言するに到る。巻末には、これらの問題の現状を現役の国会議員・田中康夫氏に聞いたインタビューを収録!!

ビームコミックス
発売中
693円
エンターブレイン





松本章(まつもとあきら、音楽・ふーてんき)PROFILE

1973年生まれ、大阪芸術大学映像学科卒。本名松本章、伊勢男子、とあるバンドを脱退し現在高円寺当りに在住。ふーてんきの音楽担当。熊切和嘉監督作品、山下敦弘初期作品の映画音楽をプロデュース。熊切和嘉監督『ノン子36歳(家事手伝い)』、内藤隆嗣監督『不灯港』、山崎裕監督『トルソ』などの音楽を手掛けた。
Twitterは @akiraise
blogは http://ameblo.jp/akira-toumei/




▼映画『NINIFUNI』予告編



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