骰子の眼

cinema

東京都 新宿区

2012-01-11 10:00


ニューヨークの表現者から生きる力を貰う!

映画の愛に☆直感 第13回:アミール・ナデリ監督新作『CUT』、ブルータル・トゥルース・ライブWレビュー
ニューヨークの表現者から生きる力を貰う!
写真左:映画『CUT』より (c) CUT LLC 2011 写真右:ブルータル・トゥルース、新宿LOFTでのライブより

映画を愛しすぎたゆえのストレートなテーマ『CUT』

イラン出身、現在ニューヨーク在住のアミール・ナデリ監督の最新作『CUT』!主人公・秀二(西島秀俊)は、兄からお金を借りて映画を製作し、売れない映画監督。フィルム上映会も自分でやり、拡声器とチラシを持ち「映画は今、上映する場所はない!映画が映画であった頃、それが芸術であり娯楽であった事を忘れてはならない!」と叫ぶが、通行人には響かない……ある日、組の親分正木(菅田俊)に呼ばれ、兄が秀二のためにヤクザから借金をして、そのトラブルで急死したことを知る。借金を返済するため、秀二はヤクザの組員相手に仕事をする陽子(常盤貴子)と、組員のひとりであるヒロシ(笹野高史)を巻き込みながら「一発いくら」で殴られ屋を始める……。

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映画『CUT』より (c) CUT LLC 2011

この映画の主題は映画の在り方そして、巨大資本のエンターテイメント(中身のない気楽な)映画への批判と上映する場所がないインディペンデント映画(低予算だが作家性のある)の現状の怒り。ニューヨークでも上映できない映画が200本もあるようなのです。DCサーバーとかの問題もこれからでてくると思うし、こんな時代の映画を愛しすぎたゆえのストレートなテーマ。きっと日本人だけでは撮れない闘ってる作品なのです。監督の熱い映画への想いを単純に台詞で言い合いして語るとか頭でっかちな映画でなく、借金を返済するために兄のイタミを知るためにチンピラ相手に殴られる西島秀俊の演技がホント救いようのないくらい凄いアクション娯楽映画でもある。殴らる度に大好きな映画を思い出し、立ち上がる。回顧主義ではけっしてなく、往年の名画がボロボロになって独り横になる西島秀俊の身体に写されて、圧倒的暴力で押し切っていくのではなく、静と動の絶妙なバランスがとれているのです。

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映画『CUT』より (c) CUT LLC 2011

音楽は引用された映画のみで、効果音と環境音で繊細に構築されているのです。無駄な台詞もなく劇中音楽がなくても緊張感を持続させて観れるのも監督の手腕なのです。「生きたい!映画を撮りたい!」とぐるぐる歩き回る西島秀俊の叫びに涙したのです。監督自身が西島秀俊であり、代わりの役者はいない!と思ったのです。借金を返さないといけない日の最終の殴られるシーンは圧巻!今の時代にこの作品は痛快だし、意義が非常に高く、人を描いた「生きる力」を貰える傑作!!映画にはまだ未来はある!因にこの作品、現在上映中のシネマート新宿とシネマート心斎橋ではフィルム上映なんで是非銀幕へ!パンフには引用されてる映画も載っていて浴びるように映画を観てた頃を思い出したのです。

奇跡的な再結成で進化/深化したブルータル・トゥルース

色々悩んでいる時(もはや悩んでいるのが日常になっている)に、シャキッとしたいので、BRUTAL TRUTH(以下ブルータル)のワンマンライブを10月31日新宿ロフトに観戦しにいったのです。ライブレポおそくなってすんませんです!!ニューヨークのグラインドコアの伝説バンドのワンマン!!最新アルバム『END TIME』を全曲演奏そして、ノイズライブもあり!!新宿ロフトにいきますとかなりいい意味で濃ゆいお客さん(知り合いのバンドマンもいました)で、クラシカルな男性ファルセットの音楽が流れたので、ワタスはバーにいてBGMかな?と思ておりましたが、ゲストバンドFUの「On No Words」という曲で、全くハードコアでもグラインドではないので頭に?がいっぱいになったのです。フロアでは、ブルータルのドラマー・リッチが「グレイト!」と叫んでいる……FUの音楽は不思議がいっぱいで一言では表現できない個性的なアートロックなのです。ギターボーカルのユビキタスのビブラートが超個性的だったのです。単純に曲とセンスがいいのです!!

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ブルータル・トゥルース 新宿LOFTでのライブより

そしてブルータルのライブが始まったのです!!とにかく爆音!!圧倒的なのです!!
およそ10年前にワタスが大学時代に聴いてた音楽で、解散し、奇跡的な再結成で進化してそして深化している。ブルータルのロゴマークに掲げてる言葉にDISTORT/DESTROY/EVOLVE/NOISEで、BRUTAL TRUTHというバンド名もさることながら奇跡的に存在するバンドなのです。
ボーカル/ケビン・シャープの怒りのデス声、複雑な変拍子をきざむベースのダン・リルカ、そこに絶妙なリフをのせるギターのエリック・バーク、まさにハイテンションに野獣なビートを叩くリッチ・ホーク!!時々、曲の入りを間違える、しかしリッチがハイテンションで叫んでいる!!(そこがワタスは笑えるツボなんです)メタルバンドにはありえない、凄くパンクだ、けど上手い!!FUと同じく一言でカテゴライズできないのです。もー圧倒的なアートなのです。noiz.popinnskiとのブルータルとのノイズセッションはもはや爆音すぎて何をどーしてるのか理解できないず、うおー凄いなーと感じすぎたのです。

そもそも、ブルータルのメンバーは音楽的には雑食性で、経歴も独特なのです。カバーする曲も、交流のあるバンドもいいバンドが多いのです。それを結晶化させたのが、今のブルータルで最新アルバム『END TIME』なのです。歌詞もラディカルで深いのです。今のワタスにはここまで書けない!!むー!!さすがなのです。
今年観たライブで一番の爆音ライブやったのです。シャキッとしすぎました!!

再結成後2作目となるブルータル・トゥルースの『END TIME』

結論!なんだかんだで、ニューヨークという街からの表現者はすごい!!こんな時だからこそ『END TIME』を聴いて欲しい、映画『CUT』も鑑賞してほしいのです!!

(文:松本章)



映画『CUT』
シネマート新宿シネマート心斎橋ほかにて上映中、シネマート六本木にて1月20日(金)まで限定上映中

秀二は映画監督。兄が遺した莫大な借金を返すため、陽子とヒロシを巻き込みながら、殴られ屋をしている。殴られるたびに名作映画を想い浮かべる秀二。何度殴られても、映画への愛情が秀二をふたたび立ち上がらせる。何故、そこまでできるのか。この試練を乗り越えることで愛する映画を救おうとしているのだろうか……。第68回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門のオープニング作品としてワールド・プレミア上映され、10分に及ぶスタンディングオベーションで熱狂的に迎えられた話題作。

出演:西島秀俊、常盤貴子、菅田 俊、でんでん、鈴木卓爾、笹野高史
監督・脚本・編集:アミール・ナデリ
脚本:アボウ・ファルマン
共同脚本:青山真治、田澤裕一
企画・製作:東京ストーリー
プロダクション協力:マッチポイント
制作協力・配給:ビターズ・エンド
2011/日本/カラー/1:1.85
(c) CUT LLC 2011

※詳細は公式HPにて

▼映画『CUT』予告編





松本章(まつもとあきら、音楽・ふーてんき)PROFILE

1973年生まれ、大阪芸術大学映像学科卒。本名松本章、伊勢男子、とあるバンドを脱退し現在高円寺当りに在住。ふーてんきの音楽担当。熊切和嘉監督作品、山下敦弘初期作品の映画音楽をプロデュース。熊切和嘉監督『ノン子36歳(家事手伝い)』、内藤隆嗣監督『不灯港』、山崎裕監督『トルソ』などの音楽を手掛けた。
Twitterは @akiraise
blogは http://ameblo.jp/akira-toumei/


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