骰子の眼

cinema

東京都 新宿区

2012-01-13 20:20


震災以降の日本人に意識の「チェンジ」を迫る

園子温監督『ヒミズ』クロスレビュー:人々の葛藤や現実への恐怖から未来への希望を描く
震災以降の日本人に意識の「チェンジ」を迫る
映画『ヒミズ』より (C)2011「ヒミズ」フィルムパートナーズ

『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚」『恋の罪』なども含め、園作品に特徴的な、詩の引用(今回はフランソワ・ヴィヨン)、エディプス・コンプレックスと家族、暴力といった幾つかのモチーフは引き継がれているなかで、監督自らが愛読していたという古谷実のマンガを原作とすることで、元来持っていた「青春」性を再び強く蘇らせることに成功している。東日本大震災後、震災後の日本に書き換えられた舞台設定のなかで、執拗に「君たちは世界にひとつだけの存在なんだ」とどこかで聞いたような言い様で説き伏せる学校の先生に「普通で何が悪い」と反抗する主人公・住田の存在は、311以後の空虚な全体主義的論調への園監督ならではのニヒリスティックな回答とも言える。

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映画『ヒミズ』より (C)2011「ヒミズ」フィルムパートナーズ

独自のキャスティングと演出に定評のある園監督だが、今回も主演の若い染谷将太と二階堂ふみに、未成熟が生む無軌道ぶりやイノセントのみならず、生きることへの動物的なまでのふてぶてしさを表現させる。吹越満、でんでんといった園組お馴染みの面々のキャラクターの際立ちも見どころのひとつだ。容赦なくスクリーンにセックスを描写してきた園監督が、15歳という設定のふたりに持たせたプラトニックな関係性の果てに、ラスト用意した〈希望〉の見せ方は、『アカルイミライ』のラストの高校生の行進のように、観客の脳裏に深く刻み込まれることだろう。

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映画『ヒミズ』より (C)2011「ヒミズ」フィルムパートナーズ



映画『ヒミズ』
2012年1月14日(土)新宿バルト9シネクイント他全国ロードショー

住田祐一(染谷将太)、15歳。彼の願いは、「普通」の大人になること。 大きな夢を持たず、ただ誰にも迷惑をかけずに生きたいと考える住田は、実家の貸しボート屋に集う、震災で家を失くした夜野(渡辺哲)、圭太(吹越満)たちと、平凡な日常を送っていた。 茶沢景子(二階堂ふみ)、15歳。夢は、愛する人と守り守られ生きること。 他のクラスメートとは違い、大人びた雰囲気を持つ少年・住田に恋焦がれる彼女は、彼に猛アタックをかける。疎まれながらも住田との距離を縮めていけることに、日々、喜びを感じていた。夢と希望を諦め、深い暗闇を歩きだした少年と、ただ、愛だけを信じ続ける少女。2人は、巨大な絶望を乗り越え、再び、希望という名の光を見つけることができるのだろうか ─?

出演:染谷将太 二階堂ふみ
渡辺 哲 吹越 満 神楽坂 恵 光石 研 渡辺真起子 黒沢あすか でんでん 村上 淳
窪塚洋介/吉高由里子/西島隆弘(AAA)/鈴木 杏
監督・脚本:園子温
原作:古谷実「ヒミズ」(講談社『ヤングマガジン』KCスペシャル所載)(C)古谷実/講談社
製作:依田巽/吉岡富夫
エグゼクティブプロデューサー:小竹里美
プロデューサー:梅川治男/ 山崎雅史
製作・著作:ギャガ・講談社
制作プロダクション:ステューディオ スリー
2011年/日本/カラー/アメリカンビスタ/ドルビーSR/129分
公式サイト


▼映画『ヒミズ』予告編


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