骰子の眼

cinema

2011-12-01 12:45


ケネス・アンガー、MOCAでライブを披露!

12/3(土)から『マジック・ランタン・サイクル』公開!
ケネス・アンガー、MOCAでライブを披露!
テクニカラー・スカルのケネス・アンガー(左)とブライアン・バトラー(右)

 実験映画作家にして、ハリウッドの光と闇を暴く『ハリウッド・バビロン』の著者としても知られるケネス・アンガー。伝説として語られがちな存在だが、84歳の今も精力的に活動中で、去る11月19日には、自らがテルミンを担当するノイズ・パフォーマンス・ユニット“テクニカラー・スカル”としてハリウッドの野外ステージに登場した。
 このライブは、11月13日からロサンゼルス現代美術館(MOCA)で始まった、ケネス・アンガーのレトロスペクティブ展“Kenneth Anger:ICONS”のオープニングイベントとして行なわれたもの。来年2月27日まで開催中のこの企画展では、アンガーのハリウッド黄金期への思慕を物語る写真やスクラップブックなど私物の数々が公開され、別室では天井から吊るされた5つのスクリーンに、アンガーの映像作品が流れるインスタレーションとなっている。

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テクニカラー・スカルのケネス・アンガー(左)とブライアン・バトラー(右)
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ロサンゼルス現代美術館(MOCA)で開催中のケネス・アンガー展(photo by Jesse Grant)
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ロサンゼルス現代美術館(MOCA)で開催中のケネス・アンガー展(photo by Noel Vasquez)

 近年ファッション業界もケネス・アンガーに注目し、昨年はヴァレンティノのショーやミッソーニのキャンペーンに映像を提供。最近では、幼少時代から好きだった銀色の飛行船をモチーフにした短編『エアシップ』も完成したばかり。ファッション誌『Purple』最新号(F/W 2011)のインタビューでは、「過去ではなく今こそ自分はクリエイティブだと感じている。まだ映画を楽しんで作っているし、これからも作り続けていく」と語っている。

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『快楽殿の創造』より ©Kenneth Anger

 そんなケネス・アンガーの集成『マジック・ランタン・サイクル』が、12月3日から公開される。これは数十年にわたり幾度も改訂を重ね、1980年に最終完全版のフィルモグラフィとしてまとめられたもの。神や道化師、無骨なバイカーたちといった登場人物からなる9本の作品は、ハリウッド黄金期への憧憬と、現実の世界への疑い、居心地の悪さのようなものを重ねあわせ、ロマンティックに仕上げられている。魔術、バイオレンス、夢、ドラッグ、ゲイをテーマにアンガーが創り出す万華鏡のような映像美は、マーティン・スコセッシ、デヴィッド・リンチ、デレク・ジャーマン、ミック・ジャガー、デニス・ホッパーら、ジャンルを越えたアーティストに多大な影響を与えた。

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『スコピオ・ライジング』より ©Kenneth Anger

 渋谷アップリンクでの『マジック・ランタン・サイクル』の上映では、通常プログラム以外に、川勝正幸、柳下毅一郎、滝本誠、Mari Mari、釣崎清隆、五所純子ほか10名のセレクトによるプログラム“あの人が選ぶケネス・アンガー”も決定している。また、劇場では、ケネス・アンガーに魅せられたデザイナーやアーティスト6名(スケートシング、伊藤桂司、鈴木ヒラク、服部一成、河村康輔、いすたえこ)が、『マジック・ランタン・サイクル』をモチーフにビジュアルを考案したTシャツが発売される。

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『我が悪魔の兄弟の呪文』より ©Kenneth Anger

■ケネス・アンガー PROFILE

1927年、米国生まれ。ハリウッドでサイレント映画の衣装担当として働いていた祖母の影響で、映画や芸術への興味を持ち始め、10歳頃から16ミリカメラで映画を撮り始める。高校卒業後に制作した『花火』が初公開作品。59年には、ハリウッドのゴシップを書籍にまとめ『ハリウッド・バビロン』と題してパリにて発行(アメリカでは75年発行)。1982年から1999年まではニューヨークを拠点に、『ハリウッド・バビロン2』(1984)の執筆や世界中の映画祭への出席など、映画製作から離れた生活を送っていた。しかし2000年に入ってからは映画製作に復帰、2011年現在までに既に10本以上のショートフィルムを完成させている。近年では、ロサンゼルスにてミュージシャンのブライアン・バトラーと共に、“光とサウンドの魔術的儀式”である「Technicolor Skull」を結成し、各地でライブを行なっている。80歳を越えた現在もショートフィルムの製作を続けており、近年では軍服についての作品『Uniform Attraction』、サッカーのウォームアップを題材にした『Foreplay』、2003年に自殺した友人でもあるシンガー・ソングライター、エリオット・スミスについての作品『Elliott's Suicide』などを発表している。


ケネス・アンガー『マジック・ランタン・サイクル』
12月3日(土)より、渋谷アップリンクほか、全国順次公開

◆Aプログラム(計91分)
魔術的神秘家アレイスター・クロウリーに捧げられた『ルシファー・ライジング』、アナイス・ニン出演のサイケデリックムービー『快楽殿の創造』、ミック・ジャガーが音楽を担当した『我が悪魔の兄弟の呪文』など、アンガーのめくるめく悪魔的イメージサイド。

A1 『ルシファー・ライジング』 (1980年/カラー/29分)
A2 『快楽殿の創造』 (1953年/カラー/38分)
A3 『我が悪魔の兄弟の呪文』 (1969年/カラー/11分)
A4 『人造の水』 (1953年/カラー/13分)


◆Bプログラム(計69分)
魅惑的なイメージと音楽のコラージュがミュージック・ビデオの原型と言われるアンガーの最高傑作『スコピオ・ライジング』、男がただただ改造マシンを磨き上げる『K.K.K.』、古き良き20年代のモード『プース・モーメント』、ほろ苦く甘いファンタジー『ラビッツ・ムーン』、アンガーが17歳で監督した『花火』など、アンガーの憧れが詰まったフェティッシュ・サイド。

B1 『スコピオ・ライジング』 (1963年/カラー/29分)
B2 『K.K.K. Kustom Kar Kommandos』 (1965年/カラー/3分)
B3 『プース・モーメント』 (1949年/カラー/6分)
B4 『ラビッツ・ムーン』1950年バージョン (1950年/カラー/16分)
B5 『花火』 (1947年/白黒/15分)

※上映スケジュールおよび、渋谷アップリンクでの10名のセレクトによるプログラム“あの人が選ぶケネス・アンガー”の詳細は、映画公式サイトをご覧ください。


『マジック・ランタン・サイクル』オリジナル特製Tシャツ
劇場およびパルコシティ「アップリンク・マーケット」にて限定販売

6人の日本人アーティスト/グラフィック・デザイナーたちが伝説の映像作家ケネス・アンガーをモチーフに制作した超強力ビジュアルをシルクスクリーン印刷したTシャツを数量限定で販売!

◇サイズ S,M,L 全6種
◇価格 ¥2,800 (税込)
◇参加アーティスト/グラフィック・デザイナー(敬称略)
 いすたえこ(NNNNY)、伊藤桂司、河村康輔、スケートシング、鈴木ヒラク、服部一成
◇制作協力 NADA.


【関連リンク】

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