骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2011-11-30 00:35


311以後の水問題を考える国際水映画祭

『ブルー・ゴールド』ほか世界各国の水をテーマにした映画のほか、原発問題を捉えた作品も上映
311以後の水問題を考える国際水映画祭
『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』より

12月3日、4日の2日間にわたり国際水映画祭2011が開催。アップリンク配給で2009年に公開された、世界各地の水の利権争いを捉えたドキュメンタリー『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』をはじめ、水をテーマにした映像作品が多数上映される。会場となる東京・渋谷の国際連合大学では、映画の上映に加え、ワークショップなど関連イベントも催されることになっている。また特別企画として、原子力と放射能汚染を題材にした作品も上映が決定。今回は映画祭期間中の上映作から、注目作品を紹介する。3月11日の東日本大震災と福島第一原発の事故では、放射性汚染物質が河川と海に流されたことで周囲の農民や漁民が被害を被り、水の汚染について意識を問い直される事態となったが、この映画祭は世界の水にまつわる映画を通して、我々の水をとりまく問題をあらためて考えてみる機会となるだろう。




上映作品

アジアの開発と人びとの暮らし

『ナルマダ・ダムの5年』

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西インド・ナルマダの5年にわたる住民闘争を記録したドキュメンタリー。ダム建設プロジェクトに住民は猛反対、あくまで非暴力主義に徹底し、住み慣れた土地を離れることよりもダムとともに沈む運命を選択しようとする。開発の犠牲となった人びとのたたかいを描いている。

監督:シマンティニ・デュル、アナンド・パトワルダン
1996年/インド/57分




グローバル化と水の民営化・商品化

『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』

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あなたは清涼飲料より水が高い国があることをご存知ですか?あなたが手に持つ花は生産地の水を枯らしている?「民族紛争」は実は水紛争?水利権の争奪戦がはじまる一方で、水は人類共有の財産だと訴える人びとがいる。世界各地の事例から水戦争の時代の真実を捉える。

監督:サム・ボッゾ
2008年/アメリカ/90分

『水なき世界』

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世界的な水不足が進行する中で、「水」から取り残された貧困層に焦点を当て、豊富な現地取材をもとに、取り残された人びとの悲鳴と葛藤を鋭く描いた作品。ボリビアの8歳の女の子ベネッサは、毎日1マイル以上歩き汚れた溜め池に汲みに行くが、彼女の暮らす家からは、市の巨大浄水施設を眺めることができる。タンザニアでは民営化によって水道料金の高騰と、利用時間の減少が見られ、水をタンクで売り歩く「水売り」が大繁盛していた。効率化の名の下に進められた世界各地の水事業の民営化によって高騰した水道料金によって、水へのアクセスがより難しくなった人びとが多く存在している。

監督:ブライアン・ウッズ
2006年/イギリス/76分




海・川・森と暮らしのつながり

『濁りゆく海―グレートバリアリーフの生と死』

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自分たちの食の背景にある真実を探るため、1エーカーの農地でトウモロコシ栽培を始めた2人の大学生が、農地から生じる川や海への影響を調べ始めた。安価で大量に生産できるという近代農業は本当に「経済的」なのか。そこには隠されたコストが存在していた。

監督:サリー・イングルトン
2003年/オーストラリア/52分




わかちあう海の恵み

『海盗り―下北半島・浜関根』

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1981年、青森県下北半島の浜関根。原子力船「むつ」の母港化計画が持ち上がる。国策に従えば豊かな生活が得られると夢見る者、「カネよりも『海』が大事」とたたかう少数派の漁民たち……。原発列島・ニッポンへと向かう激変の時代を漁村の人びとの暮らしから伝える。

監督:土本典昭
1984年/日本/103分




【特別企画】原子力と放射能汚染

『アレクセイと泉』

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チェルノブイリ原発事故後、ベラルーシ東南部の村ブジシチェでは、いたるところで放射能が検出される。不思議なことに〈泉〉からだけは検出されない。「なぜって?それは百年前の水だからさ」と、村人は自慢げに答える。自然の循環が原発事故を乗り越え、「豊かさ」を問いかける。

監督:本橋成一
2002年/日本/104分




紛争・占領地における水

『プンジ/PUMZI』

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第三次世界大戦のあとの東アフリカ。自然は破壊され、飲み水は枯渇し、人類は外界から隔絶された人口的な空間で生き延びていた。ある日、干からびた植物の種を見つけたアシャに封印された「自然」の記憶がよみがえる。水と大地を求め居住区を抜け出すが―。近未来を予測する衝撃のフィクション。

監督:ワヌリ・カヒウ
2009年/南アフリカ・ケニア/20分




関連イベント

12月3日(土)14:00-15:00
●安全な水はどう確保する?
講師:橋本淳司(世界各地の水問題やその解決方法などを取材し「水と人」をテーマに執筆活動を行うジャーナリスト。アクアスフィア代表)

12月4日(日)10:00-12:00
●生物多様性と里山保全の可能性
講師:ジョージ・クッティー(インド・バンガロール フィルムソサエティ代表)
ジョン・クラマー(国連大学)
●上映作品、以下の2本他1本
Faith Revisited(2011/インド/Ishani K Dutta/24分):インドの伝統的な環境保全のやり方や思想に焦点をあて、それが現代にも息づき、重要であることを感じさせる作品
Inheritors of the River(2010/インド/ Manilal/23分):ダムなどの近代開発に対して運動を行う住民を映し、その伝統的な水保全のあり方などを映し出している。

12月4日(日)13:30-16:40
●私と水をつなげて考えるためのワークショップ

※参加費500円(チケット購入者は無料) ★Part.1 ワークショップ「海・川・森と人びとのつながりを考える」  13:30-15:00

★Part.2 ワークショップ「水はだれのもの?」 15:10-16:40
講師:宮崎花衣((特活)開発教育協会)
※企画:(特活)開発教育協会

12月4日(日)17:00-19:30
●岡村淳ブラジルから来たる!前代未聞「お楽しみ多数決上映会!」
監督トーク:岡村淳(記録映像作家/在ブラジル)
※映画祭チケット購入者のみ参加可能




国際水映画祭2011
2011年12月3日(土)4日(日)

会場:国際連合大学
(東京メトロ表参道駅B2出口[銀座線・半蔵門線・千代田線]より徒歩5分
渋谷駅東口・宮益坂口より徒歩10分)
公式HP http://www.parc-jp.org/mizu_eiga/

主催:国際水映画祭実行委員会
特定非営利活動法人アジア太平洋資料センター(PARC)/アース・ビジョン地球環境映像祭/特定非営利活動法人メコン・ウォッチ/国際有機農業映画祭運営委員会
助成:一般財団法人セブン-イレブン記念財団
後援:国際連合大学(UNU)
協力:株式会社シグロ/有限会社アップリンク/有限会社ポレポレタイムス社/パタゴニア


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