『タンタンと私』より
これまでも世界の多様な価値観を伝える映画作品の配給を続けてきたアップリンクが、11月4日と5日の2日間、半日で映画配給のノウハウを知ることのできるワークショップを渋谷アップリンク・ファクトリーにて行う。4日にはスピルバーグ監督作『タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密』の12月公開で注目を集める作家、エルジェの貴重な姿を収めたドキュメンタリー『タンタンと私』、5日には、先日の山形国際ドキュメンタリー映画祭2011で山形市長賞(最優秀賞)を受賞した『光、ノスタルジア』の特別上映も行われる。
『半日映画配給ワークショップ ~インディペンデント映画を配給する方法~』では、そうした2012年にアップリンクで配給する作品を誰よりも早く観てもらい、アップリンク社長の浅井隆のレクチャーにより、新作をどのように宣伝していけばいいかを参加者と一緒に考えていく。
その他両日とも、ケース・スタディ作品として既に公開された作品を取り上げ、映画をどこで見つけ買付けを行ったのか、どのような宣伝計画を立てて実行したのか、またその効果はどうだったのか、買付けの金額、宣伝費、興行収入など、具体的な数字をもとに映画の配給の仕組みとビジネスを知ることができる。
なぜ映画を配給する仕事は面白いのか、それは一言で言うなら自分の知らない多様な価値観を知る事ができるからだと思います。世界はインターネットを始めとして情報を得るという事では狭くなっています。ただその一方で、多様化を望ましくないと思い、移民排斥を訴える事件も頻発しています。他者を理解する事は不可能でも、自分と違う価値観を持った文化の存在を認める事は可能です。そのためには、簡単には言語化できない感覚や人の心の内をかいま見る事ができる映画は、多文化の存在を認めるための一つの有効なメディアです。
アップリンクではこれまでに様々な国の監督の映画を配給してきました。様々な国の映画を配給する仕事はちょっと気負って言えば、世界を均一化する力に抗うことだと信じています。国際映画祭では世界中の映画が一気に上映されます。それらの映画祭でセレクトされる映画は世界の今を反映したラインアップです。アップリンクでは一年を通して映画祭を行うディレクターのような気持ちで作品を選定し買付けを行い配給しています。
今回の半日配給ワークショップでは、映画が観客の皆さんにに観てもらうまで配給会社はどのような活動をしているのかを知ってもらうためのワークショップです。映画の買付け、宣伝、地方の映画館への配給、そしてDVD化、テレビ放送、インターネット配信など実際にアップリンクで配給した作品をケーススタディとして取り上げ、そしてこれから公開する新作を誰よりも早く観てもらい、その新作をどうやって宣伝していけばいいかを皆さんといっしょに考えていくワークショップができればと思います。映画の配給に興味のある人、将来映画の仕事に就きたいと考えている学生の方の参加をお待ちしています。
──浅井隆(アップリンク社長)
11月4日(金)
スピルバーグによる『タンタンの冒険』が12月1日に全国公開されますが、この映画はその作者エルジェについてのドキュメンタリーです。アップリンクでは買付けを2年前に行っていましたが、すぐに公開するより、『タンタンの冒険』の公開を待ったほうがいいと判断をして公開する作品です。タンタンでさえ知名度がまだ低いですが、今後スピルバーグ作品の宣伝が行われ一気にタンタンの知名度があがる事は予想されますが、どうやってその作者エルジェにまで興味を持ってもらい、そのドキュメンタリーを観てもらえばいいのかを考えます。
プレミア上映:
『タンタンと私』(2012年2月4日より、渋谷アップリンク、銀座テアトルシネマほか全国順次公開)
世界中で愛されているキャラクター、タンタンとその仲間。その生みの親であるベルギーの漫画家、エルジェはいかにしてタンタン・シリーズを作り上げたのか。その疑問に答えるべく作られたのが、本作『タンタンと私』だ。エルジェが本音で話しすぎたために、30年以上も公開されなかったインタビュー音源を中心に、タンタンを描くエルジェの姿、インスピレーションの源となった中国人チャン・チョンジェンとの感動の再会を捉えたニュース映像、エルジェをよく知る人たちのインタビューなどを収録。エルジェの生涯とタンタン・シリーズに込められた本当の意味を紐解いていく。
(2003年/デンマーク、ベルギー、フランス、スイス、スウェーデン/16:9/フランス語、英語/カラー/75分)
ケース・スタディ作品:
『セヴァンの地球のなおし方』(2011年6月25日公開)
ケース・スタディ作品:
『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』(2011年7月16日公開)
(C)2010 Paranoid Pictures Film Company All Rights Reserved.
11月5日(土)
2年に1回開催される山形国際ドキュメンタリー映画祭。10月に開催された映画祭で本作はコンペティション部門で上映され、山形市長賞(最優秀賞)を受賞しました。チリの標高3000メートルの砂漠には世界中の天文台が集まっています。また同じ砂漠ではチリのピノチェト軍事政権下に虐殺された人々の遺骨を探し続ける女性たちがいます。天文学者と遺骨を探す女性たち、一見なんの関係もない人たちをパトリシオ・グスマン監督は、過去の時間を探し続ける人々というテーマで繋いでいきます。ハヤブサやプラネタリウムで天文ブーム到来か?そこに南米の歴史を重ねた本作にどのような宣伝戦略を練っていけばいいのかを考えます。
プレミア上映:
『光、ノスタルジア』(2012年春公開)
世界中の天文学者が集まる、標高3,000メートルの高地のチリ・アタカマ砂漠。監督パトリシオ・グスマンは幼い頃の天文学への憧れを語りながら天文学の聖地であるアタカマを紹介、さらにここがピノチェト軍事政権下の弾圧の地であることを明らかにする。永遠とも思われるような天文学上の時間と犠牲者の遺骨を捜し求める遺族たちの止まってしまった時間。チリの歴史を描き続けるグスマンの、諦観に満ちた語り口と圧倒的な映像が際立つ。
(2010年/フランス、ドイツ、チリ/スペイン語/カラー、モノクロ/35mm/90分)
ケース・スタディ作品:
『100,000年後の安全』(2011年4月2日公開)
ケース・スタディ作品:
『グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独』(2011年10月29日公開)
(C)Jock Carroll
半日映画配給ワークショップ ~インディペンデント映画を配給する方法~
2011年11月4日(金)、5日(土)
渋谷アップリンク・ファクトリー
16:30受付開始 17:00開始(22:30終了予定)
ナビゲーター:浅井隆(アップリンク社長)
参加費:一律¥3,000 / UPLINK会員¥2,800
※上記料金には【4日】最新作『タンタンと私』の鑑賞料金と、配布する『セヴァンの地球のなおし方』のパンフレット代(¥600)【5日】最新作『光、ノスタルジア』の鑑賞料金と、配布する『100,000年後の安全』のパンフレット代(¥800)、『グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独』のパンフレット代(¥600)が含まれています。
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▼『光、ノスタルジア』海外版予告編