骰子の眼

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2011-11-26 20:20


『サルトルとボーヴォワール 哲学と愛』クロスレビュー

あまりにも有名な哲人カップルの知られざる物語
『サルトルとボーヴォワール 哲学と愛』クロスレビュー
『サルトルとボーヴォワール 哲学と愛』より

 実存主義を世に広め、“知の巨人”として知られるジャン・ポール・サルトル(1905~1980)。そして、『第二の性』を著し、ジェンダー論の基礎を作ったシモーヌ・ド・ボーヴォワール(1908~1986)。この世界的に高名な哲学者カップルの物語が映像化されたのは、フランスでも本作が初めてだという。
 1929年の運命的出会いから、2人が時代の寵児となるまでの20年間が描かれる。戦前・戦後の華やかかりし時代のパリで、2人と同時代を生きたカミュ、ジュネ、モーリヤック、ニザン、ハイデッガー、マルロー、ジッドなどの著名人も登場するのも見どころのひとつだ。

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『サルトルとボーヴォワール 哲学と愛』より

 サルトルとボーヴォワールといえば、事実婚のさきがけで、“自由恋愛”を体現する理想のカップルというイメージが強い。2人が同棲を始めたときにサルトルが提案し、ボーヴォワールが受け入れた“契約結婚”は、サルトルの死まで50年間続いた。だが、その裏には知られざるボーヴォワールの深い苦悩があった。本作はボーヴォワールを軸に、フェミニズム的な視点から、彼女の抱いた葛藤と、そこからどのように『第二の性』が誕生していったかが浮き彫りにされる。
 あえて哲学に比重を置かず、2人の生き生きした人間的魅力が丹念に描かれていることで、イラン・デュラン=コーエン監督のもくろみ通り、一世紀前の神話的カップルを身近に捉えることができる。鑑賞後、『第二の性』の「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」という一節が、新たな響きをもって聞こえてくる作品である。

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『サルトルとボーヴォワール 哲学と愛』より




映画『サルトルとボーヴォワール 哲学と愛』
11月26日(土)より正月第一弾ロードショー ユーロスペース他全国順次公開

出演:アナ・ムグラリス、ロラン・ドイチェ
監督:イラン・デュラン=コーエン
脚本:シャンタル・ド・リュデール、エブリーヌ・ピジエ
撮影:クリストフ・グライヨ
編集:ユーグ・オルデュナ
音楽:グレゴワール・エツェル
美術:シャンタル・ギュリアーニ
配給:スターサンズ
2006年/フランス/105分
公式サイト


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