骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2011-09-14 09:40


「まず自分が観たいものを作りたい。それがアクションだった」映画作家・山本俊輔の世界を網羅『大激突!マッドシネマ'11』

9/14~16渋谷アップリンク・ファクトリーにて、アクション、バイオレンスなどキッチュでビザールな山本ワールドを堪能する3日間
「まず自分が観たいものを作りたい。それがアクションだった」映画作家・山本俊輔の世界を網羅『大激突!マッドシネマ'11』
山本俊輔監督の新作『破戒尼僧YUKI』

2010年の小説デビュー作『デス・ゲーム・パーク』が携帯ドラマ化され、自身で脚本も担当するなど、注目を集める本邦アクション映像の新鋭、山本俊輔監督の特集上映が渋谷アップリンク・ファクトリーで開催される。新作『破戒尼僧YUKI』を含む過去の監督作品・計8本を9月14日から16日まで特集。ゲストを招いてのトークセッションや、公開オーディションなど連日趣向を凝らしたイベントも行われる。アクション、バイオレンス、エロス、ホラー、ナンセンス……『シベリア超特急』の故・水野晴郎閣下、『悪魔の毒々モンスター』のトロマ社も認めた、キッチュ&ビザールな山本ワールドを堪能できる3日間となりそうだ。今回は開催にあたり山本監督による今回の特集上映への思いと各作品の解説を紹介する。




──今回この特集上映が実現したきっかけは?

『カクトウ便/そして、世界の終わり』(2007年)『女神戦隊ヴィーナスファイブ』(2009年)と撮って、それぞれシネマ・ロサと渋谷シアターTSUTAYAで上映されたんです。そこでは、カメラとかもぜんぶ自分でやっていたインディーズ時代とは違う現場のスタイルで撮りました。その後で今回は、インディーズなんですけれど出資も募って、ブロデビュー以前とは格段に大きな規模で作ったのが『破戒尼僧YUKI』です。この作品が2010年に完成して、これを世に出したいということがまず動機でありました。

──ブロデビュー後にインディーズに戻ったわけですね。山本監督にとってインディーズで作ることの意味とは?

仕事の作品はオーダーがあって作るものなので、制作会社なりメーカーの趣旨に沿って作るんですけれど、自分の作りたいものは自分でお金を集めて作るしかないというスタンスです。描ける表現の問題や、ストーリーやテーマ的に自分のやりたいことができるか。そういう意味でインディーズのやり方は続けていきたいです。

──渋谷アップリンク・ファクトリーの3日間のプログラムは「アクションナイト」「ドラマチックナイト」「エロス&ホラーナイト」とそれぞれ命名されていますが、言ってみればこの3つが山本さんの作品を構成している要素だと言えるのでしょうか。

そうですね、基本はアクションが好きなんですけれど、シナリオを勉強していくうちにドラマについても学んでいったり、バイオレンスが高じるとホラーになるとか、エンターテインメントの要素のひとつとしてエロスがあるとか、面白いものを煮詰めて表現していっています。

──日本でアクション映画を作ることの難しさ、公開し観てもらうことの難しさは?

『破戒尼僧YUKI』をトリウッドで上映したときに、尊敬する脚本家の那須真知子さんに「アクションというのはいつの時代でも下に見られるから大変だよ」と言われたんです。でも、みんながやっている流行りの企画をマネするんじゃなくて、まず自分が観たいものを作りたい。それがたまたま他にやる人がいなくなっているアクションになっているということだと思います。僕は特にロバート・ロドリゲスやジョニー・トーやタランティーノといった、作家性のあるアクション監督を目指しているところです。

── 一部で日本がアクション映画不毛の地と言われているのは、きちんとした語り口を持った脚本家が減っているということですか。『破戒尼僧YUKI』でも脚本と監督を兼ねていますが、いいアクション映画にはいい脚本が必要だということなんでしょうか。

僕はガンマニアでもカーマニアでもなく、映画の格闘アクションにもこだわりはないんです。昔の『ダーティーハリー』とか『燃えよドラゴン』『ターミーネーター』もそうですが、アクションのシーンを面白くするにはドラマで盛り上げていって、クライマックスでアクションをしないと、だれてしまう。それが今の日本においては皆無に近いなと思います。やっぱりアクションの脚本は、アクションが好きな人が書いたほうがぜったいいいものになりますから。

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山本俊輔監督



『死望遊戯』

「まだ映画研究会に所属していた頃の習作です。青臭い語り口ですが、音楽のカッコ良さに免じて許して(笑)」(山本監督、以下同)
生命? 弄べ! 明日への希望を持てない、自殺志願の男。彼を更なる闇へと誘う危険な遊戯――。諦念と情動をスリリングに往来する山本監督、初期の名編。
2000年/DV/32分

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『死望遊戯』

『殺し屋たちの挽歌』

「インディーズ時代のエポック・メイキング。韓国・プチョン映画祭でダニー・ボイル監督『28日後…』や三池崇史監督『牛頭』と同じ部門で上映され、オールナイトで800人収容の大ホールが湧き立った思い出は、死ぬまで色褪せないだろう」
ロードアイランド国際ホラー映画祭観客賞
殺し屋業界最底辺を這いずり回るランキング・ワースト2の息を呑む死闘――が、いつしか暴走。銃撃、クンフー、ホラー、そしてナンセンス! 山本俊輔の娯楽魂炸裂。
2003年/16mm/66分

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『殺し屋たちの挽歌』

『地獄弾丸祭り』

「今はNHKドラマにも顔を出すほどメジャーになった山本浩司さんが怪演してくれました。劇中の爆発はCGではなく、全部本物の火薬です!」
動く標的? 撃ち落とせ! 飛び交う銃弾、炸裂しまくる火薬。そして、妖しく蠢く女って生き物のアクセサリー…。全アクション映像マニア必見のドンパチ大作!
2004年/DV/18分

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『地獄弾丸祭り』

『窓女』

「珍しくラブストーリーを撮った。主演・三坂知絵子さんのエロスがすべて」
東京国際ファンタスティック映画祭600秒部門正式出品
窓辺にたたずむ女。心惹かれる一人の男――を、メロウにリリカルに綴りつつも、いつしか血と硝煙の最中に観客を叩き込む。山本演出の真骨頂たる逸品。
2004年/DV/10分

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『窓女』

『冷血デスマッチLOVE』

「観客の見方によって、全く印象が異なってくると思われる作品。意外と自分は、考えながら見てもらうような作品が好きなんです」
自分にしか興味の無いナルシストの男と、彼につきまとうストーカー醜女が織り成す、可笑しくも悲しいラブストーリー。
2004年/DV/10分

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『冷血デスマッチLOVE』

『マタニティ・ブルー』

「二度と日本で上映する機会は無いと思っていた。人によっては鑑賞に注意を要するかなり激ヤバな一本。(R-18指定)」
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアター部門正式出品
常世に蔓延る憂鬱。内へ内へと向かう破壊衝動。ゼロ年代・日本の心象風景を鋭く抉り、某映画祭コンペの審査員を激怒させたバイオレンス・ポルノ、今、スクリーンに凱旋。
2006年/8mm/17分/R-18

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『マタニティ・ブルー』

『MADDOG VIRUS』

「撮影は『リアル鬼ごっこ』『結び目』の俊英・早坂伸さん。だが録音部がいなかったために、特殊な上映形式に……」
街はいつしか不穏な空気に包まれ、野獣どもが跋扈する「狂犬の巣」と化す! 歪な社会正義が蔓延する時代の空気を標的にするかのような、本格的感染ホラー。
2009年/HD/17分

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『MADDOG VIRUS』

『破戒尼僧YUKI』

「原点は三家本礼氏のマンガ『サタニスター』。修道女のバイオレンスは不謹慎なので、日本の尼僧に変更。意識したのは『座頭市』と『木枯らし紋次郎』。前代未聞の悪役設定に注目! 」
悪と欺瞞が蔓延る街。今日もD.V.野郎が婦女子に金をたかっている。そこにふらりと現れる托鉢の尼僧。静かに唸るチェーン、D.V.野郎に突きつけられるFUCK SIGN、そして、唸るアクション!………彼女こそ、さすらいの破戒尼僧YUKI!
2010年/HD/32分

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『破戒尼僧YUKI』
▼『破戒尼僧YUKI』予告編




山本俊輔 プロフィール

立教大学社会学部卒業後、映像の世界へ。16ミリ長編監督作『殺し屋たちの挽歌』(2003年)が、米・ロードアイランド国際ホラー映画祭で観客賞を受賞。『カクトウ便/そして、世界の終わり』(2007年)で劇場公開デビュー。 初の小説作品『デス・ゲーム・パーク』は、BeeTVで携帯ドラマ化され、自身も脚本を担当。その他の作品に、氣志團・綾小路翔プロデュースドラマ『木更津グラフィティ』(脚本)、小説『絶望中学』『クローン ベイビー』など。




大激突!マッドシネマ’11 ~山本俊輔監督特集~
2011年9月14日(水)、15日(木)、16日(金)

会場:渋谷アップリンク・ファクトリー [地図を表示]
9月14日(水)【アクションナイト】18:30開場/19:00開演(上映後イベント)
9月15日(木)【ドラマチックナイト】18:30開場/19:00開演(上映後イベント)
9月16日(金)【エロス&ホラーナイト】18:30開場/19:00開演(上映後イベント)
料金:当日一律¥1,800/UPLINK会員¥1,500(いずれも1ドリンク付)
各日ご来場先着10名様に、おつまみスナックをプレゼント(予約・当日券関係なし)
★リピーター割引
半券(1枚)提示で、2日目または3日目の当日料金が¥1,800→¥1,300に割引
さらに半券(2枚)提示で、3日目の当日料金が¥1,800→¥1,000に割引


■9月14日(水)ゲスト
川野弘毅(俳優・『OVER8』プロデューサー)、サーモン鮭山(俳優・映像ディレクター)、日下部あい(女優・声優/パーシモンズ)

■9月15日(木)ゲスト
小林英造(脚本家『サザエさん』『ドラえもん』)、長津晴子(脚本家『ふたりはプリキュア』『痴漢男』)、谷村典子(脚本家『もっけ』『クロヒョウ龍が如く新章』)、入江信吾(脚本家『相棒』『白夜行』)、佐々木誠(映画監督『Fragment』)、水戸英樹(映画監督『ホームシック』)、山本俊輔(映画監督)

■9月16日(金)公開オーディションゲスト審査員
後藤庸介(ドラマディレクター)、蔭山周(映画監督・プロデューサー)
公式サイト http://ameblo.jp/hakainisou/


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