骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2011-09-23 21:37


[CINEMA]「過剰感の表出が白日夢のようなイリュージョン効果を一層引き出す」 『緑子/MIDORI-KO』クロスレビュー

「食べること」それ自体や、その行為の純粋さやグロテスクさを見せつけられる─ヤン・シュヴァンクマイエルに絶賛された画狂・黒坂圭太の新作。
[CINEMA]「過剰感の表出が白日夢のようなイリュージョン効果を一層引き出す」 『緑子/MIDORI-KO』クロスレビュー
『緑子/MIDORI-KO』より

世界から注目を寄せられるドローイング・アニメーションの鬼才・黒坂圭太が、構想と制作に計13年を要しひとりで鉛筆一本で描き上げた新作。力強さと繊細さを併せ持つ筆致と描写が横溢し、近未来の東京を舞台とした滑稽かつ奇妙な物語が繰り広げられていく。これまでの黒坂作品でもしばしば登場した〈少女〉というモチーフは、観客を異世界へと誘うミドリの健気な人物造形に受け継がれており、突飛な設定を一見そうとは感じさせない物語の骨格の太さに、初の長編として心血を注いだ黒坂監督の意思が宿っている。

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『緑子/MIDORI-KO』より

飽食の時代への警告、あるいは欲望による無慈悲な殺戮の連鎖といった社会的なメッセージも底辺で感じさせながら、あくまで実験映画ではなく、エンターテインメントとしての完成度を意識した明快なストーリーテリングが、謎の生物MIDORI-KOをはじめとしたグロテスクで美しいキャラクターたちを際立たせる。折り重なる微妙な色合い、何度も訪れる〈潰す〉という行為。そこに込められた説明のつかない激情と自らの頭のなかの狂気をそのままぶちまけたような荒々しさの果て、ラストに訪れるなんともいえない清々しさは忘れることができない。 そしてエンドロールで川上未映子が歌う「麒麟児の世界」のいい意味での歌謡曲テイストには、アヴァンギャルドな作風を持つことで知られる黒坂圭太という作家の根底に流れている、下世話なまでのポピュラリティを明らかにしている。





映画『緑子/MIDORI-KO』
9月24日(土)より渋谷アップリンクXにてロードショー公開

監督・脚本・絵コンテ・キャラクターデザイン・美術・作画・原画・動画・背景
色彩設計・撮影・編集:黒坂圭太
音楽:坂本弘道
演奏:川口義之、小森慶子、関島岳郎、向島ゆり子、阿部美緒、成井幹子、三木黄太
八木美知依、高良久美子、一樂誉志幸、栗木 健、坂本弘道
エンディングテーマ:「麒麟児の世界」作詞・作曲 歌 未映子
声の出演:涼木さやか、ゆうき梨菜、チカパン、三島美和子、あまね飛鳥
木村ふみひで、河合博行、山本満太
助成:文化芸術振興費補助金
製作:株式会社ミストラルジャパン
公式サイト


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