「フリー、ビルマ! フリー、アウンサンスーチー!」
午後2時、都内の野外イベントとして定着したアースデイの会場の空気はある一人の人物の登場によって高次元の緊張感と、怒りと希望に満ちた熱気に包まれた。野外ステージに集まった観衆の前に、自身のプロデュースした<FREE BURMA>Tシャツを着て姿を現したいとう氏はステージ上の椅子に腰掛け、ゆっくりと朗読を始めた。
「無抵抗の僧侶を威嚇してはならない、無抵抗の僧侶を殴打してはならない…」
ブログを介して抗議活動を呼びかけて来たいとうせいこう氏は、抗議Tシャツによる寄付活動に留まらず、ネット社会を超え、直接訴えかけてきた。それが今回のポエトリー・リーディングである。ダブルDJとして高木完とDJ BAKUが、ミックスとしてダブマスターXが参加したこの日のパフォーマンスは、日本でこれまで行われてきた軍事政権に対する抗議活動としては異例の内容であった。
圧倒的な暴力によって民衆を抑圧する軍事政権に対し、「対話」を通じて他者とつながる事を強く促すメッセージは、漠然とした抗議活動とは一線を画す明確なテーゼとして人々を強く刺激した。
「話し合いを拒んではならない、なぜなら、話し合うことが唯一、他者と他者をつなぐ道だからだ。他者と他者がつながれなければ、威嚇が始まり、殴打が始まり、投獄が始まり、殺害が始まる。だから対話せよ! 対話せよ!そして、対話のためにこそ伝え合え!言論の自由と、報道の自由はこうして、威嚇と殴打と投獄と殺害を防ぐためにある。対話せよと言い、伝え合えと訴えることは、威嚇と殴打と投獄と殺害の目の前に立ちふさがることだ」
当日は、チャリティーTシャツの売上の寄付先であるビルマの独立系放送局DVB(ビルマ民主の声)日本特派員のティンアウン氏もステージでマイクを握った。
「ビルマという国は外国人観光客からすれば文化遺産の多い魅力的な国です。しかし軍事政権が統治している母国において、政治、経済、教育、医療など様々なものが衰退し、国民は生きる事に必死で、死の一歩手前の状態です。中でも最もひどいことは、人権がないことです。人間の生活に必要とされる基本的なものが全くないということです。ビルマ国民は人権とは何であるのかがわからない状況にすらあります」
いとう氏の抗議の声はチベット問題に関し、中国政府にも及んだ。
当日のライブは12インチのレコードとして発売され、一枚購入ごとに売り上げの一部を「ビルマ民主の声」に寄付するという企画が検討されているそうである。
<関連リンク>
ドキュメンタリー映画『ビルマ、パゴダの影で』
いとうせいこう公式ブログ
アースデイ東京 Earth Day Tokyo 2008
ビルマ民主の声 Democratic Voice of Burma
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