骰子の眼

神奈川県 横浜市

2011-07-23 13:10


人間の可能性を語る30人のトークイベントEARTHLING 2011──地球人大演説会

7/30~7/31に横浜で開催される“EARTHLING 2011”主催の上田壮一さんに聞く
人間の可能性を語る30人のトークイベントEARTHLING 2011──地球人大演説会
EARTHLING 2011公式サイトより

NPO法人Think the Earthプロジェクトが主催する“EARTHLING 2011:地球人大演説会”なるイベントが、7月30日(土)~31日(日)の2日間にわたり開催される。EARTHLING(アースリング)とは英語で「地球人」の意。科学者、技術者、アクティビストなど地球的視野で活躍するゲストスピーカーが1日15名登壇し、持ち時間15分で演説するという趣旨。Think the Earthプロジェクトのプロデューサーである上田壮一氏は、現在公開中の映画『セヴァンの地球のなおし方』のアフタートークにも7/24(日)に出演するが、そのトークテーマは、「1日1回、地球のことを考えてみよう」。1日1回どころか1日中、地球のことを考えている上田さんに話を聞いた。


世間の関心が薄いなら、別の入り口をつくることが大切

──まず、Earth=地球つながりで、7/24(日)に『セヴァンの地球のなおし方』のアフタートークにゲストとしてご出演していただきますが、映画を観た感想からお聞せください。

 「どうやってなおすかわからないものを、壊し続けるのはもうやめてください」。セヴァンのこの言葉に衝撃を受けた日を、僕も忘れることができません。僕たちは何かを「創る」ために、あるいは「享受」するために、他の何かを壊し続けていることに気づいていないのです。セヴァンのスピーチから20年が経った現在も、人はまだ世界を壊し続けていますが、一方で自然と調和した生き方を実践している人もたくさん現れています。この映画は、そうした人たちの実践を丁寧に追いかけていて、まだ間に合うかもしれない、という希望を与えてくれるものでした。

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Think the Earthプロジェクト プロデューサー上田壮一氏

──そもそも上田さんがThink the Earthプロジェクトを2001年に設立したのは、「アースウォッチ」という時計を思いついたからだそうですが。

 宇宙から地球を見るライブのカメラがあればいいなと、1988~1990年頃からずっと思っていました。宇宙飛行士には全員はなれないけれど、メディアを通じて宇宙飛行士と同じ目線を持てば、人の意識が変わるんじゃないかなと考えたのです。その一つの形としてアースウォッチを思いついたのです。それが1995年頃でしたが、背景としてはインターネットが1993年から商用化されて、携帯電話も出始めて、それから各国の気象衛星からの画像がインターネットを通じて見られるようになっていった。そういうものを組み合わせると、こんな小さな腕時計でも、もしかしたら宇宙からの視点が持てるかなと考えたのです。

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自転と同じ方向(反時計回り)に、小さな地球が24時間で一周するアースウォッチ。

 それを皆に持ってもらうことで、当時、僕が出会っていたNGOとNPOの人たちを応援できないかと。地球と向き合ってがんばっている人たちがいても、世の中の関心が薄いので、彼らが何かを言ってもなかなか波及しません。セヴァンのように子供が訴えると注目するけど、大人が訴えても世間の関心は引かないですよね。だったら、違う入り口を作ることが重要なんじゃないかと思ったのです。この時計を作って、その売り上げを通じて、社会に貢献していくような仕組みを作ろうと、1997年頃に最初のアースウォッチのプロトタイプをつくりました。

──現在は書籍をはじめ多くの商品を扱われていますね。

 書籍は毎年1冊は作ろうと最初から決めていました。本は気軽に手にとってもらえて、時代を超えるものですから、そういう意味で映画と同じだと思います。僕は映像ディレクターをやっていた時期があるのですが、コソボやカンボジアなどで活動している国際協力NGOの取材を通じて、とても人間味のある魅力的な人たちと出会いました。僕から見ると、過酷な現実に向き合いながらも、非常にいきいきと楽しそうに活動していて、彼らを紹介していければいいなという思いがありました。『セヴァンの地球のなおし方』で描かれている人々も、同じようにいきいきとしていますね。

これからの地球人のあり方、可能性について考えてみたい

──今回の“EARTHLING 2011”はどういう意図で企画されたのですか?

 Think the Earthプロジェクトが今年の2月で10周年だったんです。その記念イベントを何かしたいと一昨年からずっと思っていたところ、偶然、2011年はガガーリンが1961年に宇宙から地球を見て50年だということに気づき、もともとThink the Earthは宇宙から地球を見る視点を大切にしようという呼びかけから始めた活動なので、これはちょうどいいと思いました。
 51年前までは人類は誰も地球を外から見たことがなく、ガガーリンによって地球は青かったということを初めて知ったわけです。それから5~6年して、宇宙から地球のカラー写真が撮られて初めて人々の目に丸い地球の姿が認識された。70年にアースデイが生まれ、72年にはローマクラブが『成長の限界』というリポートを書き、国という枠組みを超えて地球という単位で考え始め、その結果、企業の公害問題が環境問題という大きな枠組みで捉えられはじめるようになった。宇宙から見た地球の映像がなければそういうビジョンは描けなかったと思います。
 それから半世紀を経た今、人口は増え続け、資源を掘りつくそうとしていて、環境破壊やいろいろな問題があります。でも、逆に50年前は環境問題という言葉さえなかったし、30年前にようやく持続可能な開発という言葉が出てきて、CSR(企業の社会的責任)という言葉が日本に定着したのもこの10年以内のことだし、そう考えるとこの50年間で人間はさまざな過ちに気がついて、良い方向にも行っている部分は多いと思うのです。だったら、さらに50年先を見つめると、ポジティブなことがたくさんあるのではないかと思って、そういうことを皆でシェアできる場を作れたらいいなと企画したイベントです。するとアースリング=地球人という良い言葉が見つかったので、たくさんの地球人がやってきて演説するから地球人大演説会にしよう、というふうにイベントが形づくられていきました。

──当初は4月2日~3日に開催予定だったそうですが、3.11で延期せざるを得なくなったと。

 イベントは延期しましたが、4月2日にUSTREAMの中継をしました。もともと茂木健一郎さんや今や時の人となった飯田哲也さんなどが、4月2日に出演することが決まっていたので、予定をそのまま押さえてもらい、「原発震災からエネルギーシフトへ」というテーマと、実際に被災地に行っていたNGOとNPOに状況を報告してもらったり、あるいは、震災からほんの20日間で多くのプロジェクトが生まれてきていたので、それら10団体くらい紹介するというような組み立てで中継をしました。結果的に4万人くらいが観てくれて話題を呼びました。われわれも震災直後から被災地で活動しているNGOとNPOを支援するための「Think the Earth基金」を立ち上げて、これまでに7千万円近いお金が集まり、被災地で活用していただいています。
 今度のイベントは、3.11の後だからこそ深い意味を持つイベントになるんじゃないかと思っています。30名の登壇者の方たちは、3.11前でも、各自の活動やビジョンを述べていたと思うんですが、もちろんそれぞれ何かしら3.11の影響を受けているわけで、言葉の端々にそれが出てくるはずだと想像しています。あえて主催者側のフレームは、震災前に企画した内容といっさい変えていません。1日15人がひたすらしゃべることがメインのイベントなので、主催者側が声高に言わなくても、彼らの話す内容が結果的にイベントのテーマとなると考えています。僕らもやってみなければどういうイベントになるのかわからない面もありますが、きっとすごく素敵な2日間になるのではないかと期待しています。
 ちなみに4月2日のイベントの続編は、9月頃にまたやろうと思っています。NGOやNPOの方たちに、3月11日から半年経った状況を聞こうと。3~4カ月たった現段階はちょうど過渡期で、緊急支援が終わって復興支援に移っているのですが、国は8月のお盆までに避難所で暮らしている被災者全員を仮設住宅に住めるようにすると言っているので、つまり避難所がなくなれば支援のかたちが変わってきます。その後、瓦礫が片付き始めて、そこに街や産業をどう再建していこうかという話になってくるので、NPOとNGOの人たちの役割も変わってきます。9月のイベントではそれが伝わるように工夫をしたいと思っています。

(インタビュー・構成:隅井直子)


上田壮一 プロフィール 

2000年にソーシャル・クリエイティブの拠点として株式会社スペースポートを設立。2001年に非営利団体「Think the Earth プロジェクト」を設立し、以来コミュニケーションを通じて環境や社会について考え、行動する「きっかけづくり」を続けている。主な仕事に地球時計wn-1や携帯アプリ「live earth」、写真集『百年の愚行』、書籍 『1秒の世界』、プラネタリウム映像「いきものがたり」など。
Think the Earthプロジェクト
公式twitter


EARTHLING 2011:地球人大演説会

会場:慶應義塾大学 日吉キャンパス 協生館 藤原洋記念ホール
アクセス;東急東横線・東急目黒線、横浜市営地下鉄グリーンライン「日吉」駅徒歩1分
日時:2011年7月30日(土)~31日(日)
1日目/開場9:15 開会10:00 閉会20:00(予定)
1日目/開場9:15 開会10:00 閉会20:00(予定)
前売り券:1日券3000円/2日通し券5000円/学生券3000円(2日間有効)
登壇者:茂木健一郎(脳科学者)、岡田武史(日本サッカー協会理事 環境担当)、久保田晃弘(多摩美術大学/FabLab Japan)、瀬谷ルミ子(日本紛争予防センター事務局長)、冨田沓子(アムネスティ・インターナショナル)、大塚茂夫(ナショナルジオグラフィック日本版編集長)、池上清子(国連人口基金 東京事務所長)、瑳山ゆり(写真家 / コミュニティーデザイナ)ほか

EARTHLING 2011公式サイト


上田壮一さんがアフタートークに登壇する
映画『セヴァンの地球のなおし方』トーク付き上映

日時:2011年7月24日(日)、13:25開場、13:35開演、15:40トーク
会場:東京都写真美術館ホール
アクセス;JR「恵比寿駅」東口より徒歩約7分、東京メトロ日比谷線「恵比寿」駅より徒歩約10分
料金:一般1800円/学生1500円/中学生以下・シニア・障害者手帳をお持ちの方1000円
お問い合せ:アップリンク 03-6821-6821

詳細はこちらから御覧下さい。


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