『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』より (C) 2010 Paranoid Pictures Film Company All Rights Reserved.
バンクシーって名前は聞いたことあるけど、アートの映画って小難しいんじゃないの?なんて思っている人がいるなら、いますぐその考えをあらためてシネマライズの予約画面へ飛ぶか受付窓口へ走って欲しい。
この映画はバンクシーというストリート・アーティストの初監督作なのだけれど、とにかく展開が巧妙。えっこんな事に?の連続の、ジェットコースター的な展開が、彼のグラフィティにと特徴的なブラックユーモアが散りばめられており、、観ている自分がバンクシーの作品世界に取り込まれていくような気分になる。
数々の先鋭性、ラディカルなメッセージでアートシーンでは知らない人はいない存在だったのに加え、今作でのアカデミー賞最優秀ドキュメンタリー賞ノミネートに置ける授賞式参加のエピソードにおいて、エンターテインメントのシーンでも最もホットな存在として躍り出た彼だが、いまだ一切の素性を明かさず、グラフィティをカネを払って見る必要がないということと自らの「I HATE MONDAYS」という作品にもかけて開催中のMOCAの月曜日の展示を、自腹で無料にしたり、営利目的での活動をかたくなに拒んでいる。
『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』より (C) 2010 Paranoid Pictures Film Company All Rights Reserved.
その広範なスタイルによるグラフィティの底を流れているのは、人間と人間の力を信じているということであると思う。それは政治の欺瞞や貪欲なグローバル企業や子供の命がないがしろにされている現在の社会の絶望的な状況といったいわゆるティピカルな社会問題を取り上げ、それをグラフィティとして提示させる。アートが人間を豊かにさせる、というシンプルだけれど気の利いたバンクシーの哲学は、この映画にも通じている(発売中の作品集『Wall And Piece』もぜひチェックしてほしい)。「界をより良い場所にしたくて警察官になる人がいるように、世界をよりカッコイイ場所にしたくて、壁にラクガキする人もいるんだ」そう、世界を本気で変えようとしているこの男は、意外に熱血漢なのかもしれない。
『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』
7月16日(土)より、渋谷シネマライズ、テアトル梅田ほか全国順次公開
監督:バンクシー
出演:ティエリー・グエッタ、スペース・インベーダー、シェパード・フェアリー、バンクシー、ほか
ナレーション:リス・エヴァンス
音楽:ジェフ・バーロウ(Portishead)、ロニ・サイズ
2010年/アメリカ、イギリス/87分/英語
提供:パルコ
配給:パルコ、アップリンク
特別協賛:SOPH.Co.,Ltd.
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