骰子の眼

東京都 ------

2011-05-04 19:15


ひと月前の上杉隆氏の糾弾から情報公開は進んだのか!? 東電・政府・記者クラブによる国民を欺く「大本営発表」

4月6日に自由報道協会代表の上杉隆氏が記者会見を行った。3月11日からあまりにもすごいスピードで様々な報道がされ、状況も大きく変わっていく中、ひと月前の会見の内容ではあるが、振り返って検証する価値があると思い会見の内容の全文を掲載します。

今では国民が認識している『福島第一原発炉心"溶融"事故』に関して当時、政府と東電がどのようにメディアをコントロールしようとしたのか、またフリーの記者との情報公開を巡る攻防戦がどのようにあったのかを今一度確認しておきたい。そしてその大半が現在も何も変わっていない事を思い知らされる。

民主主義が成立するための最も重要な条件として「情報公開」がある。情報公開がされていない状況で選挙をやったらどうなるのか。たんに情報が公開されていないならまだしも、情報が意図的に国民を欺くために操作されて公開されていたとしたら当然ながら賢明な有権者の判断も間違うのは当たり前だろう。風評被害は正しい情報公開がされていればその情報から風評が間違っているという判断をできる人によって収められていくのではと思う。

とにもかくにも「情報公開」は、民主主義国家としての大前提である。そしていかに日本がそれがなされていないかが悲しい事だがわかる会見である。


スポンサーに気を遣い、東電会見で質問すらしない大手メディア

 3月11日以降、ずっとフリーランスや海外メディア等が取材に入っています。現地にすぐ飛んで、ガイガーカウンターで取材をした者、さらには被災地に入って被災民の声を拾った者、あるいは東電と保安院等の会見に出て追及を続けてきた者がいますが、残念ながら、驚くべきことに、官邸と政府の公式の会見だけはフリーランスと海外メディアが入れない状態が続いていました。

 最初に結論を申しますと、そのために海外メディアならびにほかのネットも含めて、正しい情報が出ないのです。なぜならば、そのアクセス権を政府自ら止めているので、正しい発表が聞こえないわけですね。だからこそ、海外ではいろんな形で風評被害に近いニュースが出ました。その理由も含めてこれからお話しします。今日も東京電力の会見を抜けてきたのですが、東電の会見と保安院の会見は、24時間やっています。朝から晩まで、朝11時、1時、3時、5時、夜中11時、1時半、2時、ときには3時過ぎにスタートします。しかもそれが開始1分前に発表されるので、外にも出られず、みんな泊まりこみで待ってる状況です。

 その中で、常に情報を出してくれと言い続けていたのが、今日ここには来ていませんが、フリーランスの何人かのメンバーです。既存のテレビ・新聞は、これから話しますが、質問すらまったくしません。東京電力という電事連のスポンサーに気を使ってしまって、なにひとつ質問をしないで、結果として半ば大本営発表のように、情報が出てくるのを止める、防衛するような状況になっています。

 たとえばプルトニウムの問題があった時、3号炉はご存知のとおりMOX燃料なので、プルトニウムが発生する可能性が高いということが、当初から海外メディアや専門家によって指摘されてきました。14日に爆発したときにも、セシウムとヨウ素が検出され、当然ながらプルトニウムが検出されるだろうということは、素人でもわかるわけです。しかし、なんと2週間、これはたまたま私だったわけですが、私が質問するまでプルトニウムという単語を記者会見で聞いた記者は、一人もいませんでした。そして、その質問に対して東電は、プルトニウムは検出されていないのではなくて、測っていないと言うのです。測る計器も持っていないと言ったのです。これが26日のことです。ところが翌日、枝野長官が突然プルトニウムが検出されたと発表しました。驚いたことに、検出したときの検体より、調査は21日、22日の2日間で行い、23日にそれを外部の組織に持って行き、28日に発表すると。時系列がまったく逆なのです。これから個別のことを全部お話しますが、とにかく万事がこの調子です。

 まず最近、取水口付近にあるピット(立て坑)の亀裂からの汚染水の漏出問題も、実は23日の段階で、日隅一雄さんと木野龍逸さんというフリーのジャーナリストが、「汚染された水が大量に海洋に流れているのではないか」ということを訊いていました。ところが東京電力側は一貫して「そんなことはない」と回答していたのです。それを朝から晩まで訊き続けた結果、やっと認めて、ご存知のように今月に入って1万1500トンの汚染水を海洋に流すと発表しました。その汚染状況も、あらかじめ繰り返し訊くことによってやっと出てくる。

 格納容器の破断についても同様です。また、「どうして社長がでてこないのか」という質問も、私を含めたフリーランスの記者しかしませんでした。これは別に既存メディアを否定するわけではなくて、たとえば森永の事件とか、牛肉問題とか、海老蔵とか、小向さんとか、そういうようなニュースソースの場合には、家まで押しかけて「出て来い」「会見しろ」と言うわけですね。前総理の個人献金問題の時もそうですが、そういう時はさんざんやるにもかかわらず、今回のことに関して東電の清水社長に質問した記者がいません。私が訊くまで3週間、清水さんがなぜ出てこないかということを訊かなかったのです。

 要するに、単純に言うと、民放を含めて、自分たちのスポンサーは傷つけない、電事連については絶対に批判しないというタブーがあるから、テレビや新聞ではご存知のように東京電力を非難する記事が1回も出ないわけです。発生4日目に、NHKの清水解説員がはじめて「東京電力は情報を隠蔽しているんじゃないか」と言ったのが最初です。NHKだけはスポンサーがないからでしょうが、民放に出演するご立派なコメンテーターや論説員、新聞の解説員は、一言も東京電力を批判しません。

 震災発生の3月11日、東電の勝俣会長と出版も含めたマスコミのOBは、中国に接待旅行に行っていました。ひとり5万円で1週間、これを毎年やっていました。さらに、毎週のように接待ご飯、接待ゴルフ、接待海外旅行が繰り広げられていて、その上20億円の広告費が投入されています。つまりマスコミは電事連に完全に飼われていたわけです。震災後もまだ、お詫び広告という形で、東電の広告が新聞・テレビに載っているわけです。お詫び広告を出す前に、当然ながら被災地への手当てをすべきところ、数億円単位で広告費に使う。福島県の4テレビ局と2ラジオ局は、お詫びよりも先に原発の処理をなんとかしてくれということで、東電の広告を怒りながら拒否しました。



 さらに、私がプルトニウムについて質問した後、御用学者や御用ジャーナリストたちがテレビに出て、「プルトニウムは安全です」というキャンペーンを張るのです。本当に冗談のような話ですが、動燃が作ったビデオを流しながら、紙1枚で防げるのでプルトニウムは安全ですと、日本では既存の立派なメディアで報じられるのです。そして日本人の大半がこれを信じています。なぜかというと、新聞やテレビの情報のほうが正しいと、大半の日本人が思っているからです。私もそう思っていました。インチキ臭いフリーのジャーナリストよりも、新聞のほうが高級だし信じられるだろうと。そういう形で洗脳されて、その情報を信じているというのが日本の現状です。

政府による海外メディアとインターネットメディアの締め出し

 日本のメディアにはこのような前提があり、海外メディアは当然ながら違うソースから情報を取っています。当初から原発の中で作業していて、爆発と同時に200人ぐらいが逃げたのですが、まだ50人残っています。逃げたうちの何人かにお話を訊いたところ、「とんでもないことが起こっている」と言っていました。そして今日は来ていませんが、自由報道協会所属の島田(健弘)さんというフリージャーナリストが、たまたま作業していた自衛隊の人を知っていました。それで発生3日目ぐらいに訊いたところ、「自分は立場上逃げない、ただ、とんでもないことが起こっている。この後、爆発が起こって大変なことになりますよ」ということを知らせてくれました。これをフリーのジャーナリストが報道したわけです。ワシントン・タイムズ、ニューヨーク・タイムズも、メルトダウンの可能性があると報道しました。当然ながら水蒸気爆発も起こり得て、その後はセシウム、ヨウ素も排出され、さらには3号機からプルトニウムが出る可能性もあるということを、発生翌々日にほとんど全世界の新聞、テレビが報じたんです。

 すると日本のテレビ、新聞からは「デマ野郎」「うそつき」、さらには「風評被害を煽るな」という批判を受け、その後、枝野官房長官には、会見でわざわざ「風評被害を煽る、デマを流す人間がいる」と半ば名指しで批判されました。結果は皆さんもご存知だと思います。枝野官房長官は「水蒸気が爆発してもなんの問題もありません。放射能が外に出ることはありません。格納容器は守られています」「そんなことありません。そういうデマを流さないでください」「放射能が飛ぶことはありません。仮に放射能が飛んでも安全です。東京に行くことは絶対ありません。海洋に流れることはありません。水等に入ることはありません」とずっと言い続けていました。

 つまり政府と東京電力が情報を隠し、それに基づいて報道した大手のメディアこそが、デマを言っていたわけです。これを「安心デマ」「安全デマ」と言います。本来ならば、世界中のルールに則って「30㎞、大丈夫だったら20㎞、大丈夫だったら10㎞、大丈夫だったら5km」と、避難区域を減らしていくのが普通です。なぜ日本だけが「大丈夫です。安全です」と言って、「2㎞、3㎞、5㎞、10㎞、20㎞、30㎞」と言って増やしていくのでしょうか。増やしていけばいくほど、人々は不安になり、それこそ風評やデマが生じるではないですか。事故発生当初から、われわれはラジオやツイッターで、30㎞圏内は避難したほうがいいという海外のメディアや海外の政府の情報をずっと伝えていました。ここに来ている自由報道協会の面々、ニコニコ動画、岩上(安身)さんのIWJ、神保(哲生)さんのビデオニュース・ドットコムは、みんな伝えていました。

 さらに驚いたことに、3月11日を境に、緊急事態だからということで、海外メディアとインターネットメディアを会見から締め出したのです。当然ながら外国から日本に取材が殺到したのですが、誰も政府の情報を取れないために間接的な情報で書かざるを得ない。それがどんどんどんどん風評を広げていく。つまり今回の報道に関して何が問題だったかというと、情報公開をきちんとしなかったために、東電のニセ情報に踊らされたのです。そして結果的に嘘ばかりを報じ続けて、会見を行った菅政権、枝野官房長官がデマをばらまき続けた1ヶ月だったというわけです。

1000ミリシーベルト以上を測る計測器を東電は持っていない

 震災だけならよかったのですが、一昨日の4月4日から汚染水の海洋投棄が始まりました。この瞬間に、世界中のメディアが、これまでの同情的な論調から一転して、日本を非難しはじめました。日本は被害者から加害者になりました。放射能を、公共の財産、世界の財産である海洋に撒き散らす、海洋犯罪テロ国家になった。おおげさじゃないんです。英語を読める方はご覧になってください。アルジャジーラ、ニューヨーカー、ウォールストリート・ジャーナル、どの新聞もそう報じています。周辺諸国へ事前通告もせずに、高濃度の汚染水を故意に流す決定をした。低濃度と言っていますが、低濃度ではありません。環境基準値を100倍から1000倍超える放射能汚染水を故意に流す、歴史上はじめての事例です。

 これまではアラスカ沖にしろ、メキシコ湾にしろ、原油の事故で海洋が汚れたとなると、国連海洋法条約などに基づいて賠償が発生し、BPなどの経営陣は、アメリカだと逮捕されて懲役禁固300年ぐらいとられますが、莫大な賠償金を払うことになっています。今回はそれを超える放射能という、核実験以外は基本的には漏れることのない、人類史上類のない海洋汚染が故意に行われているというひどい状況になっています。1万1500トンという想像を絶する量を投棄するのですが、ここにもプロパガンダがたくさん隠されています。具体的に言うと、最初はフリージャーナリストの追究で、汚染水漏出の事実を隠していたことを認めました。そして漏れていたことがバレると、次は「低濃度だ」と言うのです。低濃度はなんの基準なのか訊くと「東京電力の相対的な基準だ」と言うのです。海外の基準に照らし合わせると、東京電力の「低濃度」は高濃度で、「高濃度」は超高レベルの汚染水なのです。

 資料には1000ミリシーベルトを超えるとあるんですね。1000ミリシーベルトというと1シーベルトですが、「それ以上はなんですか」と訊くと、「測ってない」と言うんですね。「なんで測ってないんですか」と訊いたら、「測る機械を持っていない」と言うんです。ご存知のように、100ミリだったら15分で白血球が破壊されだします。甲状腺もかなりやられると思います。2000ミリシーベルトだと7分30秒です。4000ミリだとまたその半分。つまり、1000ミリ超えたら全部同じじゃなくて、たとえば8000ミリシーベルト超えれば瞬時に死に値する可能性がある。仮に10シーベルト、15シーベルトになると、その瞬間に体内の穴から血が出て死ぬ可能性が高い。それを測らないで作業させていることが危険なので、「なんで測らないんですか」と訊いたら、「計器がないから測らない」。これが東電の正体です。

 これだけではありません。「型番を教えて下さい」と訊いても「わかりません」。もっとひどいのはプルトニウムの件ですが、「プルトニウムはどうして測ってないんですか。14日に爆発しているんですよ。100歩譲って、21、22日まで1週間あるじゃないですか。IAEAの勧告では、発生直後にセシウム、ヨウ素が出た場合はプルトニウムを検査するって書いてあるじゃないですか。なんでやらないんですか」って訊いたら、「計器がありません」と。「え、プルトニウムを測る計器がないんですか」と訊くと、「ありません。α波はありません」と。嘘でした。ただ、新聞、テレビは最初「α波を測る計器はない」と書きました。当然ながら訂正していません。それから、じゃあ測ったらどうなったかというと、「測るのに1週間かかっています」と。「違いますよね。プルトニウムを測るのは22時間で測れるじゃないですか。なんでそういう嘘をつくんですか」と言ったら、「測ったのは22時間だけど、チェックして、外部機関から戻ってきて、数字を修正したりするのに数日を要した」と。なんで数字を修正する必要があるのか意味がわかりませんが、「じゃあ2回目はどうしたんですか」と昨日訊きました。2回目は9日ぐらい経っています。「なんで発表しないんですか」と言ったら、「いま準備をしています」。なんで22時間で測れるものが9日間もかかるんだと。

 さらには、3号機は14日に爆発しています。その瞬間に作業している職員は被曝している可能性がある。ご存知のようにプルトニウムは小さな粒子でも、肺に取り込んで肺の奥に着地すれば、そこから永久にα波を出し続け肺ガンを引き起こす、もっとも危険な放射能です。IAEAの基準では、プルトニウムについては防護服を二重にし、さらに吸い込んだら一発でアウトですから、マスクも二重にするとされている。これを作業員にやらせていたのか訊いたら、「その時点ではプルトニウムが測定されていないのでやっていません」と。当たり前ですよね、測っていないんですから。すべてがそうです。

フリーの記者は知っていた、ガイガーカウンターが振り切れるほどの放射性物質が漏れた事を

 それから、空気中の放射線量についても同様です。かなり早い段階で、飯舘村の40㎞圏内に自由報道協会のメンバーも入っていて、ガイガーカウンターで測った結果「これはおかしい」ということを発表していました。少なくとも、チェルノブイリの例もあるように、胎児ならびに1歳未満、さらに5歳までの乳幼児、子どもと、妊娠の可能性のある女性は避難させるのが、WHOを含めてのルールではないかと。「すぐに避難させてください」と言ったのが1ヶ月ぐらい前です。ところが、それをフリーのジャーナリストや海外メディアが言ったときにどうなったかというと、「デマを流すな。安心です。風評を流すな。安全です。みなさん心配ありません」と政府は言ったのです。

 広河隆一さんという、「チェルノブイリ子ども基金」を設立された方がいます。ガイガーカウンターを持ってチェルノブイリに20年通って、核取材、原子力取材に関しては日本でも、というより世界でも有名なフォトジャーナリストです。その方が事故から3日目に、福島にガイガーカウンター持って入ったんですね。政府はまだ1㎞も言っていませんでした。自主避難が2㎞の時に電話で話すと、「大変なことになっている。今、3㎞のところまで来て病院に入ったら幼稚園の子どもが遊んでいるんだけど、ガイガーカウンターが振り切れてしまった。さらにレンジを上げて、もう1個で測ってみたらもう1個も振り切れた。3つ持っていってたのでさらにもう1個で測ってみたら、それも振り切れた。とんでもない」と。普通にしてる子どもたちのお母さんたちに、「早く逃げろ」と言ったそうです。

 なぜかというと、チェルノブイリの例があるからです。チェルノブイリでは男性はほとんど死んでいません。作業に当たった方はみんな死んでいますが、内部被曝でガンになって死んだのは、当時0歳から5歳までの子どもたちです。甲状腺に放射能を溜め込んで、その後10年20年してから発ガンして死ぬのです。だからいま、キエフを含めてチェルノブイリの近くの20歳から25歳の人口が、ほとんどゼロに近いんです。みんな死んでしまった。生きている人もチェルノブイリ・ネックレスといって、甲状腺を摘出した手術痕を持つ若い女性が多いのです。こうしないと助からず、永久に薬を飲み続けなければならない。だからとにかく、子どもたちだけでも逃がしてくれというふうに訴え続けていたんですが、1ヶ月経ってやっと、村が自主判断した。本来なら国が判断するべきですよ。

 今日そこにいる畠山さんも含めて、フリーランスには事故発生翌日からこういう情報は全部入ったので、官邸に申し入れたのです。新聞、テレビの記者は30㎞避難なのですが、朝日新聞は社命によって50㎞までしか入りません。時事通信は60㎞。自分たちが報道しているわりには、そういう勝手なルールをつくっています。こういうようなことをやっている新聞、メディアは本当のことを知りません。だから海外メディアは、今日も何人か入っていますけど、ガイガーカウンターを持って1㎞とか2㎞まで入って、「とんでもない情報だ。政府も東電も嘘ばっかりついている」ということを言い続けたのです。しかし会見から締め出すというので、私は地震発生の翌日、3月12日の朝5時から車に乗って、官邸の横、国会記者会館の横に止めて、官邸の報道室の笹川武報道室長、ならびに広報室の西森昭夫さんに電話しました。枝野幸男官房長官の携帯に電話し、福山哲郎副官房長官、細野豪志総理補佐官の携帯電話にずっと電話しました。とにかく海外メディアの一人でもいいから入れてくれと。こういうときは、別に誰も攻撃なんかしない。海外は情報を持っている。フランスもアメリカもロシアも核については情報を持っていて、ジャーナリストはそれらを伝えたいのだと。そして現場に行っているフリーランスの記者も、福島が大変なことになるということを伝えたいんだと。

 さらには、これはあまり言いたくないですが、岩手や宮城に入っていた記者は、当時、日本の大手メディアが「死亡者12人、行方不明者3人」という報道をしているときでも、「とんでもありません。目の前に何百体も死体があります。早く救出に来てくれれば、まだ生きている人もいる。72時間以内が勝負です」と伝えたかったのです。
 海外メディアとフリーの記者あわせて100人ぐらいいますから、全員で官邸に電話してしまうと迷惑がかかるので、私が代表になって官邸の横に車を止めて、携帯電話の充電を車から引っ張りながら、朝から晩まで約100時間、4日間申し入れをしつづけました。とにかく入れてくれと。これまで入れてくれたんだからいいじゃないかと。しかしダメでした。しかたないので、インターネットのカメラマンだけでも入れてくれと頼みました。自分たちはそれを見ながらパソコンでリツイートしたり、情報を発信するからとお願いしたんです。なにしろ当時、被災地はテレビは映らない、新聞は届かない、だけど携帯でツイッターとかは届くわけです。だったら、これがもしかしたら命を救うかもしれない。さらにはガイガーカウンターを持って現場に入っている人からの情報も伝えられるかもしれない。しかし官邸は全く受け入れようとしない。そこで、「政府のほうで、誰でもいいから官邸のツイッターアカウント作ってください。それをこちらでリツイートしますから」と頼んで出来たのが、3日目の官邸災害というツイッターです。

 それ以降も、繰り返し申し入れをしたわけです。海外メディアの報道がおかしくなってるのは、あなたたちが発表しないで勝手に取材しているから、思い込みでどんどん書くんだと。早く会見に入れてあげなさいと。日本じゃなくて世界中から記者が集まっているんだと。私がかつて働いたニューヨーク・タイムズのニコラス・クリストフというボスも来ていましたし、CNNのアンダーソン・クーパーも来ていましたし。そういうスター記者というのは影響力があるので、彼らを記者会見に入れないと大変なことになると言っても、入れませんでした。そして3日目ですかね、やっと海外メディアだけ入れますという報告がきた。そして次の日に、インターネットメディアだけ入れますと。ニコニコさんと、神保さんのところですね。

原発批判報道を排除するメディアコントロールの実態

 ところが1ヶ月経ってもフリーランスはまだ入れません。自分の仕事を全部止めていたんですが、もうここでこんなことにエネルギーを使っているのは無駄だと、15日から東電の記者会見に行くようになりました。ほかの人にも同じように、みんなそれぞれ仕事をしていたんですが、いまフリーランスがやっている仕事というのはお金にならないわけですね。自由報道協会もそう。なぜかというと、自分たちの仕事を打ち切って会見に出て、そして質問するわけです。テレビ、新聞の記者がなにも質問しない。これは何度でも言いますが、なんにも質問しないんです。東京電力に気を遣って、東電の社長の居場所すら訊かない。プルトニウムという言葉すら発しない。格納容器が壊れたとも言わない。メルトダウンと言った瞬間に袋叩きにあって、テレビの番組から降ろされる。

 私はTBSラジオの「キラキラ」という番組を2年間やっていました。そこで、東京電力、電事連に関して「情報隠蔽しているんじゃないですか」と15分間のコーナーで言って、生放送が終わった瞬間にプロデューサーがやってきて、「すみません、上杉さんちょっといいですか。今月いっぱいで辞めてください」と突然言われました。2週間前には「4月以降もお願いします」と言われたんです。ところがいきなり終わった後……。

 その次の週には、朝日ニュースターで放映されている、電事連がスポンサーの「ニュースの深層」という番組でキャスターをやっているんですが、電事連が、火曜日の上杉隆と、木曜日の葉千栄を降ろせと要請してきた。上杉は広河隆一と鎌仲ひとみという上関原発の映画を作った監督をゲストに呼んだと。葉に関しては、広瀬隆と共産党の吉井英勝をゲストに呼んだと。これによって、とてもスポンサーをやれる状態ではないと、圧力をかけてきたのです。朝日ニュースターの岡崎哲也局長がそれを拒否して、「電事連さんが4月からスポンサーを降りてください」ということで、私はここは助かったわけですが。4月からスポンサーなしです。ほかの人にも相当圧力かかっています。いま来ている岩上安身さんも、このことが理由かどうかはわかりませんけど、フジテレビの「とくダネ!」を降ろされました[※編集部注 2011年6月末で降板]。

 つまり、政府、電事連、記者クラブの情報と違うこと言う人間は全部消せと。自分が当事者でありながら、映画の世界にいるんじゃないかという不思議な感覚になるんですが、実際起こっていることです。これが日本のいまの状態です。情報公開をしないことによって、70年前のいわゆる大本営発表とまったく同じことが起こっているのです。当時は、政府、軍部、新聞で、大本営発表の報道が行われました。ミッドウェーで完全に破れ、現場の軍人も政府も新聞も、負けると知っているのに、挺身と言って「日本はチャンスだ。これからだ」とやった。ガダルカナルで玉砕しても「勝った、勝った」とやって、結果どうなったか、皆さんご存知のように、240万人の命が失われたわけです。

 70年後、まったく同じことやっています。政府、枝野官房長官含めて、東電にだまされた情報を喜々として毎日発表して、それを東電の嘘――これは軍部です――自分たちの原発政策、あるいは立場を守るために、ずっと嘘をつき続けました。これはもう表に出ているから、フリーランスの記者に限らず、一般の記者も気づいていると思います。「安心です。安全です。放射能は大丈夫です。プルトニウムは食べても大丈夫です。海洋漏れについてはただちに問題ありません」。当たり前です。ただちには問題ありません。さらには、汚染水の出元を発見するために入浴剤を撒いた。当然、拡散されて見つかるわけないんですが。そういうことも普通に発表するわけです。そして、通常の環境基準の1000倍近いものを低濃度だから安心です、安全です、と言い続けたわけです。それを無批判に報道し続けたのが民法テレビです。要するにまったく批判せずに、そのまま報じた。つまり戦前の新聞がやったことを、民放、それから広告に釣られた新聞がやっている。日本人だけが本当のことを知らずに。「安心です。放射能は大丈夫。日本人は海藻をいっぱい食べているからヨウ素には強い」。これが本当に報じられているということです。

 動燃がつくったこのプルト君についても、原子力発電所を訪れた子どもたちに「僕、プルトニウムのプルト君。食べても安心です。紙一枚でも大丈夫です」と、楽しそうな洗脳のビデオを流したわけです。これが結果としてどうなったかというと、日本人だけが30㎞避難でOK、世界中の政府が80㎞、とゆがんだ構造になったわけですね。

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 要するに、テレビと新聞が大本営発表をやったわけです。それに歯向かう人間は非国民、デマ、不謹慎という形でレッテルを貼って、デマを飛ばすなと。どっちが本当のことを言っていたのか、私が3月11日から言っていたことを検証していただきたい。自由報道協会のホームページに臨時で急遽、メンバーが1ヶ月報じてきたことをリンクするようにしましたので、後でご覧いただければと思うんですが、残念ながら、非常に残念ながら、フリーランスの記者たちが言っていたことが正しかったのです。だからこそこんな事態になった。テレビ、新聞が言ったことはすべて、180度間違っていました。こういうことを気づいていないのが現状の日本の国民、日本の政治家です。やはりここは、そろそろ気づいていただきたい。

 IAEAの勧告も初日、2日目から行われていました。とにかく情報公開しろと。クリントン国務長官は2日目に「日本は情報公開していない」と言いました。メルケル首相も言っていました。1ヶ月前ですよ。にもかかわらず、テレビ、新聞は都合の悪い情報としてこれを報じなかった。海外のメディアはデタラメだと。海外のメディアというのは、すなわち海外の政府が言っていることなわけですね。ノルウェーやフランス、ドイツなどの海外メディアがずっと伝えていた、気象、放射線量、その着地点、モニタリングポストの数字、シミュレーションを根拠がないと日本のテレビや新聞は報道していたんです。ところが今日、根拠がわかって驚いたことには、3月11日から日本の気象庁がIAEAに提出していたものだったんです。気象庁は自分の国には開示しないで、IAEAに出していた。政府は持っていると思います。政府はそれを隠して、「安全です」「世界中が危ないと言っているのは嘘です」と発表していたのです。自分たちが持っていた数字を、データを否定したんです。読売新聞がやっと書きましたが、こんなことは1ヶ月前にみんな言っていたわけです。これに国民がだまされて、要するに防げた福島原発の事故をまんまと失敗に導いたというのが、枝野官房長官と菅総理を含めた官邸なんです。

「安心デマ」をばらまき続けた政治家

 最大の問題は最初に申し上げたように、震災には世界も同情しました。天災はどうにも避けられませんから。ところが福島原発の核の問題については世界中が怒っています。特に海洋汚染に関しては、ヨウ素ばっかり言っていますが――ヨウ素の半減期はたいしたことないんです――問題は2週間以上も指摘されているセシウム。137のほうは半減期30年です。当然ながら食物連鎖によって繰り返し蓄積され、濃縮されていくわけです。大型のマグロや、そういう魚などは日本だけじゃなくて世界中で回遊しています。おそらく、全世界の漁業に打撃を与えます。海産物のみならず、海という世界共通の資源を汚染している日本政府と東電に対して、世界が怒りだしているんです。なぜなら数週間前からフランス、ロシア、アメリカ、IAEA、WHOが「お手伝いしましょうか」と何度も言っているのに、菅総理は「東電、日本だけでできる」と断って、結局できていないわけです。完全に犯罪国家に成り下がっているという認識を持っていただきたい。それはメディアもそうです。

 こうなったからには海洋汚染を止め、原子炉をストップさせることが急務です。まず海洋汚染については、昨日北海道に行ってきましたが、北海道の漁協も海外からの注文がすべてストップしたと。つまり、日本から見たら福島ですけど、世界から見たら日本なんです。国産の魚介類はもう正直言って終わりです。農産物もです。半導体も放射能汚染されれば輸出できませんから。日本人はこの認識がまったくない。政府も含めて。これはたぶん30年から50年ぐらいかかる。なぜなら、皆さんのなかで、チェルノブイリのレタスを食べたいという人は今もいないと思います。スリーマイルは川ですけど、スリーマイルの横で穫れた魚を食べたいかというと、ほとんど食べる人はいないと思います。これが日本で起こるんです。

 なぜかというと、チェルノブイリは居住不能エリアが300㎞です。福島第一原発から数えれば300㎞というと、ご存知のように小田原まで行きます。チェルノブイリのとき最大の被害にあった村は、4号炉から280kmの村でした。それは、風に乗って、当然ながら山にぶつかって、高濃度の放射性物質が雨と一緒に降り注ぎ、その村が全滅したんです。でも、50 kmのところはセーフでした。だから、気象庁とテレビ、新聞が発表してる「東京は安全です、遠ければ大丈夫です」というのは、中性子とかそういう放射線で、飛んでくるものに距離は関係ありません。280 kmというと、福島から平塚ですね。そこが完全にやられたんです。そういう認識を世界が持っているからこそ、過剰だと思える反応をしているわけです。

 現在も、チェルノブイリでは30km以内は立ち入り禁止です。そして300km圏内からは、今なお奇形の子どもや植物、動物が出ています。その周辺は、基本的には産業はほぼ停滞している。ですから今後何が起こるかというと、いまレベル7がチェルノブイリですが、世界は福島をレベル6と見ています。スリーマイルはレベル5ですけど。しかもチェルノブイリは4号炉1基でしたが、福島は4基がきていると。チェルノブイリは25年経っていますが、まだ使えません。スリーマイルは外に放射能は漏れなかったんですけど、7年かかっています。そういう中で福島がどうなるか考えると、軽く見積もっても30~50年はかかるだろうと。その間、日本の農産物、海産物を輸入する国はおそらく無いと思います。

 国家が滅ぼうとしている最中に、その認識がないというのが非常に危険です。海外メディアは1ヶ月前からこのシミュレーションやっていました。ワシントン・ポストを配りましが、とにかく最悪のシナリオを考えて何ができるかを考えるのが政治の役割なのに、それを放棄して「安心です、ただちに問題ありません」と言い続ける官房長官。それをおだてあげるメディア。まさに大本営発表を再現している状況です。

 とにかくお願いしたいのは、現在の菅政権があると、どんなにいい政策をやっても、はっきり言って国際信用力はゼロ、というよりマイナスです。菅さんは悪い人ではないですが、菅さんが何をやろうと、1回犯罪行為を行ったわけです。国際犯罪者の政権、つまり犯罪を犯した国家。たとえば北朝鮮が核汚染の水を流したら、みんな怒りますよね。それを無断で、国連海洋法ロンドン条約に違反しているようなことを、通告もせずにいきなり1日で決めてやったわけです。これは今日、日隅一雄さんと木野龍逸さんがリポートに書いていましたが、突然決まって突然やったことです。4月4日に、夜中にたった数時間、記者会見に出ていたけれど、誰も知らなかったんです。こういうことをやった国は、海洋汚染犯罪国家です。そういったリーダーが率いている国は誰も信用しないでしょうし、仮にどんなことをやっても内面では信用されません。

 地に落ちた日本の信頼を回復するのなら、まずはちゃんとした体制をつくらなければなりません。残念ながら、やはり菅さんでは無理だと思います。別に煽る訳ではないですが、海外の論調からして、菅直人、TEPCO、それからいま日本のメディアも批判されていますが、この体制が続く限り日本は国際的なプレーヤーになれないし、信頼に足る国ではないというレッテルを貼られてしまっています。だから、政治家の皆さんが、ここを何とかしなくてはいけないと思います。

 民主党政権、それから日本の国会議員すべてが、犯罪者の一員です。皆さんも犯罪者です。私も犯罪者です。メディアのひとりですから。世界はそのように厳しく見ています。ぜひその認識を持っていただいて、犯罪者のレッテルを剥がす作業をやっていただかないと、放射能汚染の地域で苦しんで避難されている方や、漁民の方、農民の方が立ち直ることは、絶対に不可能だと思います。

計画停電というプロパガンダ

 それから計画停電についても、東電で会見をやっています。東京電力本社3階で開かれているのが計画停電の会見。本社1階で開かれているのが原発会見。これも変な感じなんですが、原発会見は狭い部屋で記者を押し込めてやってます。記者クラブの席だけで、フリーランスの席はありません。椅子もない。今日は畠山さんかな?

 3階は広い会見場で、煌々と明るいところでやってます。これは定例会見で、役員が全員出てきます。原発会見は現場の下の権限がない方です。何が起こるかというと、3階で計画停電の会見がやってる最中に、いきなり原発会見をやったりするんですよね。まあこういう妨害はどうでもいいとして。だいぶ前ですけれど、1度、私のほうで藤本副社長に、「こうやって2つやってるのはおかしいんじゃないですか」と申し入れしたんです。「都民の皆さん含めて、みんなに節電をお願いしてるのに、そもそも2ヶ所でやって電気代が無駄じゃないか。役員の方もいらっしゃいますし、1ヶ所でやりましょう」と提案した。すると次の日、東電側から回答がありました。「記者クラブの方と協議して、記者クラブの方が2ヶ所でやってほしいということで、2ヶ所でやります」と。つまり、社会部と経済部がバラバラのネタが欲しいのです。それから、フリーランスから余計な質問されたくないわけです。

 これは計画停電のみならず、たとえば田中龍作さんというフリーの方が、さきほどの勝俣会長とマスコミOBの中国旅行のことを「なぜずっとこんなことしていたのか」「対応が遅れたんたんじゃないか」と記者会見で吊るし上げている最中に、後ろのほうの記者クラブの記者から「そんな質問するな」と怒鳴られました。で、一昨日、海洋の汚染のことに関して、日隅さんと木野さんと私が「海洋汚染は誰が責任者だ」「こんなのロンドン条約違反だ」と執拗に攻めていたら、記者の方から「同じ質問ばかりするな。お前たちの記者会見じゃない」と言われるんですよね。まあ、こんなのは序の口ですが。

 計画停電は完全にプロパガンダで、なぜかと言うと、実は計画停電について突然ある人からリークがあってですね。電話がきたんです。「上杉君、12時間後に輪番停電っていうのをやるよ」と。聞き慣れない言葉だったので「何ですかそれ?」と訊くと、「要するに、みんなでかわりばんこに停電を起こすというやつなんだ」と言うので、「こんな震災直後に停電が起きたら大変じゃないですか。震災直後だからこそ、後方支援も含めて、普通の生活をする支援こそ支援だ。後方からトラックの輸送とかもあるから、まさに東京はその後方支援基地なので、ここを停電させたらまずいんじゃないですか」と訊いたら、「ヤラセだ。絶対やるぞ」と言われて、本当に発表されました。名前は計画停電に変わりましたけど。

 そのとき何が起こったかというと、福島の3号炉の爆発です。で、驚いたのが、世界中の新聞・テレビが3号炉の爆発という大ニュースをトップで扱っているのに、日本だけが「明日から計画停電が始まります。場所は世田谷区は外れまして多摩市なんとか」とやっている。それで完全にニュースが消えました。そして次の日にまた、夜中に電話がかかってきたんです。プルトニウムが出た日だと思うんですね。「明日、首都圏大停電っていうのを発表するぞ」と。「なんですか、それ?」と訊いたら、要するに海江田経済産業相をだまして、「これから首都圏で夜にかけて、大停電が起こります」と夕方の直前に発表させると。「そんなデマを東京電力と政府が流したらまずいでしょ。それこそパニックになりますよ」言いましたが、本当に海江田さんはそう発表しました。

 そして驚いたことに、東京電力、政府は民間鉄道のラッシュ時に間引き運転をしてくれと頼んだんです。「大口事業者に頼みます」と。民鉄は2%くらいしか使ってないですよね。つまり、「東京電力がないと、お前らこんなに困るんだぞ」と脅したわけです。そうしたらどうなったかというと、世界中のメディアが3号機が爆発してもう1回漏れたと大騒ぎしている間に、日本のテレビと新聞は、首都圏大停電ばっかりを報道するんです。

 次の日、私は、「そもそも計画停電でピーク時に4000万kwが需要推計、だけど昨日も今日もみんなが節電してピーク時3050万kw。950万kwも余ってるのに、なぜ停電する必要があるのか」と質問しました。「400万kw足りないと言ったのに、日本人みんなが協力して節電すれば足りるじゃないか。計画停電して病院も止まって、人工透析も止まって、死亡者が出て、信号止まって交通事故が起こって、死亡者が出て、よほどそっちの方が危険だ。何キロワット足りないんですか」と訊いたら、「とにかく足りない」と。

 3週間前に「火力発電所はどれだけ動いてるのか教えてください。だって地震でやられたって日本の発電、東電管区内は原子力30%、火力50%近く、火力で十分賄えるはずです。火力はどれだけ止まっているのか」と質問しました。(東電の)藤本副社長は、「火力に関しては地震で11基壊れました。2基直り、いま9基が止まっています」と言ったんですね。「間もなく直るのはどこですか」と訊いたところ、「鹿島の火力が直ります」と。「それは直ればいくつなんですか」と訊くと「380万kwです」と。「だったらそれ1基直ればいいじゃないですか。いつ直るんですか」と言ったら、「今週末、つまり明日か明後日には直ります」と言ったんです。「じゃあ計画停電いらないですね」と訊いたら、いきなり会見中「すみません。直るのは来週以降になります」とメモが入った。そしたらまた「4月になります」とメモが入って、さらにもう1個「夏になるかもしれません」と入った。そして、380万kwがいきなり320万kwに訂正されたんです。

 「柏崎原発事故の時に、原発17基を点検するために全部止めた。あの時に停電してないじゃないですか。なぜ今、原発が数基壊れただけで停電するんだ」と訊いたら、「一応その配電のやつとか……」と、まぁデタラメ言ってるわけです。で、その嘘を追及したんですが、当然ながら記者クラブメディアは何百人もいますが、シーンとしています。誰ひとり何も追求しない。

 そこで「こんな計画停電なんかして弱いものいじめするんじゃなくて、大口の事業者、しかも民鉄なんかではなく、民放テレビやったらどうですか。民放テレビが一番電気使ってるんじゃないですか。朝から晩までどうでもいいテレビ流して」と言いました。「NHKは節約のために停波してるんですよね。民放こそ24時間じゃなくて昼間を輪番放送すればいいんじゃないですか。なぜ東京電力はそれ言わないんですか」と言ったんです。会見場はシーンとして、終わってますます嫌われてしまったんですけど。とにかく、いまだに民放テレビは、「節電にご協力ください。無駄なパソコン等はお切りください」って広告を出す。これ、自由報道協会の邪魔してますけど。

東電と政府から権限をひっぺがさなければ日本はつぶれる

 それから毎回配られる資料なんですが、いつも書いてあるんですけど今日書いてあるかな……。書いてありました。「節電のために東京電力からのお願い。火災防止のため、ドライヤーなどの電気機器のスイッチを入れたまま外出しないように」。これ毎回言うんです、「ドライヤーとかの無駄な電気は使わないで下さい」と。ドライヤーの消費量とテレビの消費量どっちが多いんだと。で、テレビにお願いしたところ完全無視で、いまだに放送は続いています。なぜかというと、テレビはいまだに東電が守護神として守ってくれているからなんですよね。

 結果として夏に停電をやると言っていましたが、あんなの嘘っぱちですね。だって、それまでに火力発電所も直っているわけです。原子力発電所も直るわけです。まあ、直らないとは思いますけれど。少なくとも火力発電所だけで全然足りるわけです。ところが、ここで調べてびっくりしたのは、なんと火力発電所は壊れてるんじゃなくて、検査のために止めているだけだったんです。こんなことに皆さんもだまされているわけなんです。日本国全体も、計画停電なんてやればやるほど経済も冷え込んで、せっかく復興しようと、東京も生き返ろうとしているのに、お店がどんどん潰れています。金曜日の夜中にやっと食材も手に入った。さあ、今日は開業しようと思ったら「午後7時から計画停電です」と。ホントにみんな泣いてますよ。天下の愚策を放置して、計画停電をお願いしてるどっかの大臣。節電なんとか大臣といって、来ていないのが残念ですけど、襟立てりゃいいとかって問題じゃないんですよ。本当に。

 そうやって庶民の生活を潰しておいて、何が国民のためだと。生活が第一だと。どこかの政府でしたけど、そんなことよりも、早くそんな天下の愚策はウソだと言って、とっとと東電もやめさせて、さらには計画停電もそうですけど、原発に関しては国際緊急チームをつくって、東電と政府から権限をひっぺがして世界中で当たるようにしなければ、日本という国家がつぶれます。

 もうひとつついでに言うと、計画停電の途中に選挙をやっているわけですね。海外の何人もの記者から訊かれたんですけれど、選挙をやっているっていうのはびっくりらしいんですよ。「こんな事態なのに選挙やって大丈夫か」と。この国、ちょっと狂ってるのかと。まぁ、そんな論調になっちゃってるんですよね、本当に。政治家の方は皆さん、はっきり言って狂ってる人たちの一員ですからね、残念ながら。だから早くこの状況を、その一員を脱出していただきたいと。まずは計画停電含めて止めていただきたいということですね。調べていただければ今のことは全部載ってますし。岩上さんのIWJで、計画停電の会見出てますよね。岩上さんのところはUSTREAMでアーカイブ残っていますので。あと、ニコ動さんにも載っています。そのへんをぜひ検証していただきたいと思います。

(2011年4月6日、鳩山由紀夫前首相主催勉強会において)

上杉 隆 プロフィール

1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局・衆議院公設秘書・「ニューヨーク・タイムズ」東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。 政治・メディア・ゴルフなどをテーマに活躍中。自由報道協会(仮)暫定代表。著書に『石原慎太郎「5人の参謀」』 『田中真紀子の恩讐』『議員秘書という仮面―彼らは何でも知っている』 など。最新刊は、『ウィキリークス以後の日本 自由報道協会(仮)とメディア革命』『続・上杉隆の40字で答えなさい』がある。

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上杉隆公式ウェブサイト

自由報道協会

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コメント(1)


  • 坪井野球   2011-05-05 01:06

    ざっと読みましたが、凄く重要な記事である事を把握しました。
    情報を拡散すべく、知恵を絞ってみます。
    いつもながら、webDICEの仕事には頭が下がります。