左から怪物メエ、『痩せ姫君』のメーベル(以上『ハリウッド・バビロンI』より)、マリリン・モンロー、『真夏の夜の夢』のケネス・アンガー(以上『ハリウッド・バビロンII』より)
今作は、インディペンデント映画の大家として知られるケネス・アンガーが、1920年代から始まるハリウッドの黄金時代のスキャンダルを編んだ本である。自身も子役として活動しながら、俳優として大成しなかった彼は、自らを受け入れなかったハリウッドに対し、強烈な憧れとともに、きらびやかな世界の裏にうごめくゴシップを暴き出すことでその人々の羨望の対象である神殿を陥落させようとした。
今回の復刊にあたって新たに書き下ろされた柳下毅一郎氏による解説にもあるように、今作ではとりわけケネス・アンガーのサイレント映画への愛憎入り交じる感情が数多く綴られている。趣きのあるモノクロの美しい画面を構築した俳優やスタッフたちの破天荒な生活をセンセーショナルな文体で描くことで、現在まで連綿と続くショービジネスが裏表あって初めて強く訴えかけることを証明した。
『II』の後半では、1950年代後半から60年代にかけて力を落としていくアメリカ映画産業が、通常のゴシップ程度では満足せずより過激な刺激を求めるようになった観客のニーズによるものであること綴っている。ハリウッドの栄枯盛衰を捉えた本作を読むことで、そのゲイ感覚をはじめとしたやフェティシズムやオカルト的世界で魅了するケネス・アンガーの映画作家としての作品が、彼の憧れたサイレント時代の映画に端を発していることにあらためて気づいていただけるだろう。
『快楽殿の創造 Inauguration of the Pleasure Dome』より
ケネス・アンガー映像作品
2011年劇場上映&DVDリリース
デレク・ジャーマン、デヴィッド・リンチから現代のミュージック・ビデオ、CMにまで大きな影響を与えたアンガーの呪術的イメージの集大成『マジック・ランタン・サイクル』全作品+2000年以降に製作された2作品を2011年劇場上映&DVDリリース!!
上映・DVD収録作品
『花火 Fireworks』(1947/15分)
『プース・モーメント Puce Moment』(1949/7分)
『ラビッツ・ムーン Rabbit's Moon』(1950バージョン/16分)
『人造の水 Eaux d'Artifice』(1953/13分)
『快楽殿の創造 Inauguration of the Pleasure Dome』(1954/39分)
『スコピオ・ライジング Scorpio Rising』(1964/29分)
『K.K.K. Kustom Kar Kommandos』(1965/4分)
『我が悪魔の兄弟の呪文 Invocation of My Demon Brother』(1969/11分)
『ラビッツ・ムーン Rabbit's Moon』(1979バージョン/22分)
『ルシファー・ライジング Lucifer Rising』(1981/29分)
『マウス・ヘブン Mouse Heaven』(2004/13分)
『マン・ウィー・ウォント・トゥー・ハング Man We Want To Hang』(2002/15分)
アップリンク ケネス・アンガーtwitter @Kenneth_Anger
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ケネス・アンガー、灰野敬二、ジム・オルークが織りなしたLUCIFER NIGHTレポート(2010.8.27)
ケネス・アンガー『ハリウッド・バビロンI』
訳:明石三世
発売中
ISBN:978-4-89194-881-8
本体:2,200円
版型:177×111ミリ
ページ:464ページ
発行:PARCO出版
ケネス・アンガー『ハリウッド・バビロンII』
訳:明石三世
発売中
ISBN:978-4-89194-882-5
本体:2,200円
版型:177×111ミリ
ページ:544ページ
発行:PARCO出版