今年もついに始まりました、『第3回ガンダーラ映画祭』。インダス河か? ゴダイゴか? いろいろと連想させる怪しげなタイトルだが、“この世のユートピアとは何か?を徹底追究する短編ドキュメンタリー映画祭のことです。仏教美術関係の上映イベントではありませんので、あしからず。(公式HPより)”ということらしい。つまり、映画監督や映画業界以外の職業の方たちが自由気ままに面白い作品をつくってお披露目するというワクワク(ときにはヒヤヒヤ)するような映画祭。第3回目を迎える今年は、花くまゆうさくさんが映画監督として『人間爆発』をひっさげて初参加する。ということで、ゆるやかにインタビュースタート。
今回、『ガンダーラ映画祭』(以下ガンダーラ)に参加することになったきっかけは何でしょうか?
単純に言うと、プロデューサーのしまだ(ゆきやす)さんから誘われて。で、まぁちょっと考えさせてくださいと言って。
一旦、考えたんですか(笑)。
過去のガンダーラを観てるので、そこに素人の僕が入っていったら赤っ恥かきそうだなぁって。でも、ガンダーラの話とは別に、自分ひとりで自主映画で1本つくろうという考えがあったので、それも兼ねてガンダーラにのっかっちゃえば思いきってやれるかなぁと思って引き受けました。
ちょうどいいタイミングだったということで。昨年、佐藤佐吉プロデュース企画(「そんな無茶な!」)で「東京ゾンビ外伝」をつくられたのが最初に手がけた映画でしたね。
あの作品は22分くらいの短編なんですけど、DVDにするとなると分数が足りないんです。だから、もう1本つくろうと思ってたんですよね。
そもそも、なぜ映画を撮ろうと思ったんですか?
中学生の頃から映画が好きで。まぁ、男の子だからねぇ(笑)。映画を撮りたい憧れがあるじゃないですか。でも、自分にはできないものだと思っていたので、全然やらずにきたんですけど。「東京ゾンビ」(2005年/佐藤佐吉監督)の撮影現場を見に行ったとき、やっぱりいいなぁと思って。で、ちょうどアメリカ映画の「ナポレオン・ダイナマイト」 とか、ああいうのを見てすごく刺激を受けたというかね。やっぱり自分でもなにかやりたいなという気持ちが湧いてきたんです。そんな流れが、急にここ数年できたんですよね。
今回の作品『人間爆発』は、花くまさん原作の「TAKOあり」がもとネタになっているそうですね。なぜ「TAKOあり」だったんですか?
個人的に「TAKOあり」を気に入っているということもあるんですけどね。漫画を描いてるときから、映画と思って描いてる時期があるというか。自分で映画を撮れないから、映画を撮ってるつもりで「東京ゾンビ」とかも描いていたんですよ。
そうだったんですね~。
根本敬さん(特殊漫画家)が精子三部作を描いてた頃、「タケオの世界」とか一冊を通して読むと、映画を1本観終わったような感動があったんですよ。それで、僕もこれくらいすごいのをやりたいという目標があって。
なるほど。この作品はひとりで作られたんですか?
「東京ゾンビ外伝」では、僕は監督だけで、ちゃんとカメラマンさんや照明さんなどちゃんとしたスタッフがいたんですけど。今回は時間とお金とか全然ないから、自分ひとりでやった方がやりやすいと思って、監督、脚本、撮影、編集、音楽、全部やりました。気持ち的には、今回の作品がデビュー作っぽい感じがしますね。
役者さんたちは個性的な面々ですよね。
「東京ゾンビ外伝」に出演した格闘家の村田卓実くんと、もうひとりの主役としてフラワーカンパニーズ でベースをやっているグレートマエカワさんにお願いしました。僕が15年前にガロで「野良人」を描いていた頃に、フラワーカンパニーズがデビューして、そのときグレートさんが長髪で荒々しい感じだったんですよ。20代のときから、「野良人を実写化したら、野良人役はグレートさんだな」っていう思いがあって。で、今回は野良人でなく、しかもグレートさん髪切っちゃってるけど(笑)、今回の役的にグレートさんはやっぱり顔の雰囲気が合うから、全然面識なかったんですけど思い切って頼んでみたんですよ。
(写真右)『人間爆発』の撮影現場より。左から村田卓実さん、グレートマエカワさん
で、グレートさんの反応は?
大丈夫です、と。たぶんね、グレートさんも「野良人」のことを思っていたかもしんないけど、「脱ぎとかなければいいです」と(笑)。でも作ってみて感じるのは、思い切ってグレートさんに頼んでホントよかったと思ってます。
撮影ではどうでしたか?
もう、期待通りのものが撮れてますよ。あとは僕の技術的な問題が…ほとんど素人なので。でも、狙い通りにはなっていると思います。
では、今回の作品の見どころは?
実際に「TAKOあり」の原作を使っているのは、ほんのちょっとですね。あとは映画用につくっているので。いままでの僕の人生で味わってきたセリフや思いを詰め込んであります。僕は「19歳の地図」という蟹江敬三と本間優二が出演している映画が好きなんですよ。中年男と20代の男が出てくる、底辺に生きる人たちの話なんですけど。そういう思いがちょっとあるから、村田くんを平成の本間優二にしたくて、「東京ゾンビ外伝」にも出してるんですよね(笑)。今回も村田くんの役は本間で、グレートさんの役は蟹江なんですよ(笑)。村田くんはね、編集してて感じたけど、時々本間優二と声がそっくりな時があります。
撮影はいつ頃したんですか?
3月です。みんなを集めて撮ったのは1日だけ。グレートさんは、初めて会ったときにカメラを持っていって、一人だけのシーンとか撮ったりとかしましたね。あと、編集して足りないところは村田くんを呼んで別撮りしたくらいで。編集に関しては、僕はファイナルカットプロを使ったことがなかったんです。だから、去年バンドを初めてやったとき、練習風景とかライブを自分なりにドキュメンタリーっぽく撮ったのを編集しながら、使い方を覚えていくという感じでした。
今は編集作業もけっこう慣れてきたとか。
いや、全然。やっている人から見たら、中学生が作ってるような感じかなと(笑)。実は2月に視力回復手術(レーシック)をしたんです。それまで視力0.04だったのが、手術で1.5まで回復して。で、最初の1ヶ月はあまり近くのものを見るとけっこう辛いんですよ。編集作業でパソコンを見るのがすごく辛くって。また視力が落ちるんじゃないかと、びくびくしながらやってました(笑)。
カメラもひとりで?
そうですね。ビデオカメラと8ミリの2台を使って。だから出演者に同じ演技を何回もやってもらいました。最初は全部8ミリでやろうと思ったんですよ。でも、撮影する前にいろいろ試してみたら半分くらいしか自分の思った通りに映らなかったんですね。顔とか真っ暗になっちゃったり。で、ビデオでも撮っておこうと思って。実際使っているのはビデオの方が多いです。
音楽もオリジナルですか?
僕がギター弾いてるのとか、漫画家の三本(美治)くんとやってるバンドの音とか、僕の好きなかまボイラーというバンドの最新アルバムから1曲使わせてもらっていますね。
作品の出来には満足していますか?
自分的には満足していますね、今年死んでこれが遺作になってもいいかも。人が観たらどう思うかわからないけどね。
ちなみに、次回作は考えていますか?
いや、今はなにもというか、抜け殻状態というか…燃え尽きちゃってるのかもしれない(笑)。
現在、映画や音楽をされていますが、他にやってみたいことはありますか?
特にないですね。映画もバンドもそうだけど、中学や高校でやれなかったのを今頃やってる感じがありますね。死ぬ前にやっとこみたいな(笑)。あとやっぱ、「東京ゾンビ」ぐらいの一冊分の長編をやらなくてはいけないですね。
では、今回の意気込みを教えてください。
なんだろなぁ…僕の想いを全部出し切っています。死ぬ前にやっときたかった作品なので、ぜひ観てください。あと、今回の作品はDVDにするとしたら内容を変えなければいけないところがあるかもしれないので、今回のバージョンが観られるのはガンダーラだけですよ。
映画にバンドに、再び訪れた青春を花くまさんは謳歌しています(きっと)。花くまさんの青春がたっぷり詰め込まれた『人間爆発』、乞うご期待!今日から!
『人間爆発』
監督:花くまゆうさく
出演:グレートマエカワ 村田卓実 しまおまほ 大橋裕之 東美伽 水口誠 福島拓哉 川野弘穀
音楽:かまボイラー 余剰人員 水口誠 花くまゆうさく
(2008年/DV/20分)
(インタビュー・文:牧智美)
■花くまゆうさくPROFILE
1967年東京生まれ。漫画家。第2回月刊「ガロ」長井勝一賞入選。第13回ザ・チョイス年度賞優秀賞を受賞。大の格闘技ファンであり、自身もブラジリアン柔術黒帯の格闘家である。主な単行本に「ダメ人間グランプリ 」(青林工藝舎)、「メカ・アフロくん モンキービジネス編」(マガジンハウス)、「不死身のニッポン 」(青林工藝舎)等多数。他、書籍・雑誌の表紙イラスト、グッズ、フィギュアなども幅広く手がけている。今後、単行本「東京ゾンビ」(青林工藝舎)がアメリカと韓国で発売される予定。バンド活動として、4月20日「ザ・漫画家バンド大戦」@大阪モンタージュ に出演。ベースに漫画家の三本美治氏が参加している。
イメージリングス第3回ガンダーラ映画祭
「ノーインテリジェンス~映画界のラスプーチンと呼ばれて」
期間:4月17日(木)~4月20日(日)、
4月24日(木)~27日(日)
会場:LA CAMERA
(東京都世田谷区代沢4-44-12 茶沢通り沿いビル2F/小田急線・京王井の頭線「下北沢」駅南口から徒歩約10分)[地図を表示]
[定員50名/上映の30分前に開場]
料金:1,000円(各回入替え制/当日券のみ)
お問い合わせ:LA CAMERA 03-3413-9422
主催: IMAGE RINGS
【上映スケジュール】
- 4月17日(木) 18:00~A | 20:00~B
- 4月18日(金) 18:00~B | 20:00~A
- 4月19日(土) 16:00~C | 18:00~A | 20:00~B
- 4月20日(日) 14:00~C | 16:00~A | 18:00~B
- 4月24日(木) 18:00~B | 20:00~A
- 4月25日(金) 18:00~A | 20:00~B
- 4月26日(土) 16:00~C | 18:00~B | 20:00~A
- 4月27日(日) 14:00~C | 16:00~B | 18:00~A
[Aプロ]
- 『ライブ!YAMAMOTO』(2008年/DV/20分) 山下敦弘&向井康介
怪僧ならぬ怪優…山下監督作品には欠かせない山本剛史に密着したドキュメント! - 『人に歴史あり』(2008年/DV/20分) 井土紀州
映画界随一の社会派による実録犯罪ルポ。これはもはや「ウィークエンダー」だ! - 『こんにちわーChim↑Pom!!』(2008年/DV/20分) チン↑ポム
バンド気分で現代アート!? バカか天才集団か?これがウワサのChim↑Pomだ!! - 『日本イスラーム化計画』(2008年/DV/20分) しまだゆきやす
冷酷なグローバリズムが日本を襲う!共同体を回復するにはもうこれしかない!?
[Bプロ]
- 『渡辺事件』(2008年/DV/20分) 古澤健
この作品のキーワードは「自分を撮る」「ナカヨシー」……今年はがんばります。 - 『フロム・パラダイス』(2008年/DV/20分) 真喜屋力
これぞ日本のパァ~ラダイス!“OKINAWA”からお送りする楽園レポート第一弾! - 『人間爆発』(2008年/DV/20分) 花くまゆうさく
自作「TAKOあり」を実写化!負け組人間とショーケンに捧げるロックな青春映画。 - 『セックスと嘘とビデオテープとウソ』(2008年/DV/20分) 松江哲明
「セックス」と「ビデオテープ」と「嘘」で塗り固められた松江哲明の日常記録。
[Cプロ(特別招待作品)]
- 『アイムボカン~地雷撤去という超セレブな夢』(2008年/DV/45分) チン↑ポム
地雷撤去こそがセレブの証!夢見る乙女エリイちゃんがカンボジアに乗り込んだ! - 『がんばれ陸上自衛隊@イラク・サマワ』(2005年/DV/30分) 綿井健陽
イラク特措法の成立により、2004年1月わが自衛隊が「出撃」した。その一部始終。