骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2011-02-06 21:32


[CINEMA]「ありのままだからこそ、親切で予定調和的な心地よさや、インスタントなカッコ良さは用意されていない」『kocorono』クロスレビュー

未完成なままであり続けるバンド、bloodthirsty butchersを川口潤監督が抒情と生々しさの双方を交え綴るドキュメンタリー
[CINEMA]「ありのままだからこそ、親切で予定調和的な心地よさや、インスタントなカッコ良さは用意されていない」『kocorono』クロスレビュー

ロック・ドキュメンタリーは数あれど、ボアダムス『77BOADRUM』(2008年)Shing02『歪曲巡礼』(2009年)などを手がけ、2011年に入ってもTHA BLUE HERBの最新DVD作品を発表した川口潤監督と、長きにわたり日本のオルタネイティヴ・シーンに強い存在感を残すbloodthirsty butchersという組み合わせに期待せずにはいられない人は少なくないはずだ。活動拠点を北海道から東京へと移し、レコード・レーベルを転々とし、不動のスリーピースから4人へと変わりながら、ハードコアのスピリットと朴訥な歌、そして美しく太いノイズにまみれた重厚なバンド・アンサンブルで、単なるUSのオルタナの焼き直しでなく、オリジナリティにあふれた音楽を紡ぎあげてきたバンド、bloodthirsty butchers。周囲のバンドからも圧倒的な讃辞を寄せられる彼らだが、この作品では、事務所との確執、バンド内での音楽性やモチベーションの違いなどトラブルや不安材料を隠そうとしない。

webdice_『kocorono』サブ-5

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのオープニング・アクトに出演した際のバックステージでの様子や、当時の札幌パンクシーンの熱気が手に取るように解る最初期のライブといったお蔵出しの映像を交えながら、川口監督は、いまも各地を跳びまわる彼らの実像に迫ろうとする。
関係者による数々のエピソードから浮き彫りになるバンドの混じりけのない音楽への愛情と、フロントマン吉村が抱えるフラストレーションの対比が、単なる重鎮バンドのレトロスペクティブではなく、今も葛藤を抱えながら転がり続けていくアーティストの現在進行形の記録として作品に定着している。そうした生々しさや、川口監督らしい臨場感に満ちたライブ・シークエンスとともに、随所に海辺の風景や空を見上げる視点を盛り込んだ視点は、ブッチャーズのサウンドにいつまでも漂う〈荒野感〉を的確に表現することに成功している。

webdice_『kocorono』サブ-4

▼『kocorono』予告編





映画『kocorono』
シアターN にて公開中、ほか全国順次ロードショー

主演:bloodthirsty butchers(吉村秀樹、射守矢雄、小松正宏、田渕ひさ子)ほか
監督:川口潤
出演:中込智子、谷口健、SEIKI、ヒダカトオル、上原子友康、蛯名啓太、小磯卓也、eastern youth、原昌和、磯部正文、Zack de la Rocha 他
音楽:bloodthirsty butchers
撮影・監督補佐:大石規湖
撮影:梅田航、工藤慶邦、中谷育代、渡辺泉
録音・ミックスエンジニア:kazuaki noguchi
編集:鶴尾正彦
MA:横田智昭
スチール:菊池茂夫
製作総指揮:重村博文、宮路敬久
製作:長谷川英行、近藤順也、渡邊恭子
制作:アイランドフィルムズ
協力:リバーラン
製作:「kocorono」製作委員会 (キングレコード+日本出版販売)
配給:日本出版販売
宣伝:アムモ98
2010年/日本映画/HD/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/116分
公式サイト

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