骰子の眼

music

東京都 渋谷区

2011-01-12 17:07


人と音の関わりを発見する場所・UPLINK FACTORY2011年の音楽イベント始動

ライブハウスでも映画館でもない自由な空間から放たれる、注目の企画を紹介。
人と音の関わりを発見する場所・UPLINK FACTORY2011年の音楽イベント始動
日比谷カタン。渋谷UPLINK FACTORYのライブ&トーク・イベント「対話の可能性」次回は1月27日(木)に開催。

純然たる映画館でもなく、ましてやライブハウスでもない場所UPLINK FACTORY。2011年も引き続き、現在進行形の音楽、或いは音楽と人の関わりというもの自体に着目し、それをファクトリーならではの距離感で楽しむことの出来る企画が数多く開催される。先日開催された「Room40 TOKYO NIGHT」のレポート記事とともに、2011年の幕開けを飾る音楽イベントを紹介する。




余りに奔放なセッション:Room40 TOKYO NIGHTレポート
[2011年1月7日(金)開催]

ツジコノリコ、テニスコーツ、minamo、畠山地平といった日本人アーティストの作品をリリースしているオーストラリアはブリスベンのレーベル「Room40」。昨年の11月に来日していたレーベルオーナーのローレンス・イングリッシュより二ヶ月遅れる形で、レーベルのロンドン支部長のような役割を担っているのだという、ジョン・チャントラーという一人の音楽家がファクトリーにやってきて、演奏をしてくれた。

畠山地平と南川史門による映像と音楽のライブ、minamoの変わらぬ爽やかなエレクトロ・アコースティック&ドローン、そしてジョン・チャントラーとも親交の深いテニスコーツのsayaとuenoが繰り広げた音遊び。三者三様のライブは、凍り付くような渋谷の街の寒さとは裏腹に、終始アットホームな雰囲気の中で行われた。

かつて渋谷消防署のそばにファクトリーがあった頃、2000年から2005年にかけてcubic music主催により開催され続けていた「no frame」というイベントのことを思い出した。Room40からリリースされた日本人アーティストたちは、実はno frameという挑戦的で、気配りのゆきとどいた祭りに出演してくれていた人々でもあったし、そもそもcubic musicは当時minamoのメンバーたちによって運営されていたレーベルだったし、僕に初めてテニスコーツを紹介してくれたのも彼らだったはずだ。

いたずらにノスタルジーに浸りたいわけではない。イベント会場という場所に関わり、定点観測的に見つめて来た自分の立場から、近年、元々の始まりから転化した「ポジティブなフィードバック」といしかいいようのないものを受け取ったり目の当たりにすることが増えていて、この夜にもそれがあった。現在は杉本佳一が一人で運営しているcubic musicが、かつて仲間たちとともに耕した畑に音楽を実らせ、その収穫物を片手に世界中を飛び回ることでやがて独自のネットワークを作るに至り、それが今になってこういった形で自分の耳に帰って来たということが、なんだかとても真っ当なことのような気がしたのだ。

終演後、会場を後にするお客さんの一人が「思いのほか、アヴァンギャルドだった」と笑顔で話しているのを見て、こちらも思わず微笑んでしまった。というのも、それはおそらくテニスコーツとジョンの三者による余りに奔放なセッションのことを指していたからで、そして彼らの演奏が、実際に奏でられた音楽だけではなく、その場全体を巻き込みながらぎりぎり成り立つような内容だったからだ。それは大したものだったのだ。

(文:倉持政晴 / UPLINK FACTORY)
Room40(2011.1.7)
★写真:自作シンセサイザーをあやつり繊細な電子音を奏でるジョン・チャントラー(左)。テニスコーツの二人は、これに完全アコースティック演奏で応酬。sayaは客席に紛れ込み、小さなキーボードを弾いたり、歌を歌ったりしていた。この後、サックスを吹いていたuenoがおもむろにジョンににじり寄り、真剣な面持ちで演奏し続ける彼とその機材にちょっかいを出し始めた…。



Possible Spaces V.5.1
(LIVE : Marcos Fernandes+植野隆司 Duo、伊達伯欣+Corey Fuller Duo)
1月13日(木)

渋谷の街の喧噪から離れ、サウンドスケープで異世界へトリップ。マルコス・フェルナンデスがプロデュースする音楽による風景描写と即興演奏のためのささやかなコンサート・シリーズ。

marcos_fernandes
マルコス・フェルナンデス
ueno_takashi
植野隆司
corey
コリー・フラー
date
伊達伯欣

日時:2011年1月13日(木)19:00開場/19:30開演
料金:予約¥1,800(予約方法は下記をご参照ください)
   当日¥2,300(当日・予約ともに1ドリンク付)
出演:マルコス・フェルナンデス(Field recordings & Percussion)+ 植野隆司(Guitar) Duo
   伊達伯欣(Zither)+ コリー・フラー(Field Recordings)

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関口義人の「ジプシーを追いかけて」Vol.25
1月15日(土)

音楽評論家・関口義人氏が紹介する、ジプシー=ロマたちの音楽の現在とその暮らし。ゲストにロマフェスト主宰の増永哲男氏を迎え、東欧を中心とするフィールドワークの中で撮影された写真や映像を上映。知られざるジプシーの儀式や祭りに肉迫する。

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2011年1月15日(土)18:30開場/19:00開演
料金:予約¥2,000(1ドリンク付)
出演:関口義人(音楽評論家/『ジプシーを訪ねて』著者)
ゲスト:増永哲男(NPOジプシー支援会議ロマフェスト主宰)

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LIVE & TALK show「対話の可能性」Vol.10 /
カルペ・ディエム! ─2011年、この【瞬間】を生きる・名越型カルテ
1月27日(木)

いくつもの声色を使い分けての超絶ギター弾き語りで、毒々しくも味わい深い歌の世界に観客を引きずり込んでしまうシンガーソングライター・日比谷カタンによるソロライブと、異分野で活躍するゲストとのトークショーの二本立て。その対話の可能性を探る。

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2011年1月27日(木)19:00開場/19:30開演
料金:予約¥2,000(1ドリンク付)
ライブ&トーク司会:日比谷カタン(シンガーソングライター / 広告デザイナー)
トークゲスト:名越康文(精神科医)

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第一回公魚企画
「大里俊晴/リュック・フェラーリ生誕記念~電子音楽祭り!」
2月5日(土)

謎の音楽学者(女性)2名による呪いの発狂フォークデュオ「公魚」による実験音楽イベントの第一回目。故・大里俊晴氏と故リュック・フェラーリの誕生日に因み、電子音楽を特集。インキャパシタンツ美川俊治、作曲家の鈴木治行といったゲスト音楽家たちによる実演とトークを介して、その余りに広大な電子の海の深淵を覗き見ようと試みる。

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公魚
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美川俊治(Incapacitants)
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鈴木治行
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米本実

2011年2月5日(土)18:30開場/19:00開演
料金:予約¥1,500(予約方法は下記をご参照下さい)
   当日¥1,800(ともに1ドリンク別¥500)
ゲスト:美川俊治(Incapacitants)、鈴木治行(作曲家)、米本実(電気音楽家)
企画・出演:公魚(呪いの発狂フォークデュオ兼音楽学者/ポチョ☆ムキンコ[高橋智子]、柿野ぱち子[渡邊未帆])

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アンラ・コーティスと一緒に観る「Reynols」ドキュメンタリー映画、そしてミニライブ。
2月11日(金・祝)

アルゼンチンの伝説的実験音楽グループ「レイノルズ」の中心人物、アンラ・コーティスが6年ぶりに来日。未だ謎の多いレイノルズについて、そのドキュメンタリー映像を見ながら音楽評論家・湯浅湾バンマスの湯浅学とともに語り、演奏する夕べ。

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アンラ・コーティス
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レイノルズのドキュメンタリー映画イメージ写真

2011年2月11日(金・祝)19:00開場/19:30開演
料金:予約¥2,300(予約方法は下記を参照ください)
   当日¥2,500(予約共に1ドリンク付/アルゼンチンの国民酒、ワインもあります)
出演:Anla Courtis(from Buenos Aires, Argentina / Reynols)
   三人湾(湯浅学、松村正人、山口元輝 from 湯浅湾)

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河合政之ヴィデオフィードバックライヴ! / Masayuki Kawai's Video Feedback Live!
2月12日(土)

ファクトリーで今後、シリーズ化を予定している“映像ライブ企画”の第一弾。河合政之による、アナログビデオの映像と音声を用いて行われる圧巻のパフォーマンスを、まるで1本の濃厚な映画を観るようにご体験ください。

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2011年2月12日(土)19:0018:30開場/19:00開演
料金:予約¥1,500(1ドリンク付)
出演:河合政之 / Masayuki Kawai
   (with 浜崎亮太 / Ryota Hamazaki)

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いずれも会場:渋谷UPLINK FACTORY(Bunkamuraより徒歩3分)
東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1階[地図を表示]
tel.03-6825-5502 / http://www.uplink.co.jp/factory




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