骰子の眼

stage

東京都 豊島区

2010-11-08 20:46


「日本や中国の文化の変わらないところと変化していく部分の双方に興味がある」公演迫る!世界を駆け回る演出家ルパージュが最も思いを寄せる『ブルードラゴン』
(C)Louise Leblanc

伝統的な要素と新しいテクノロジーを融合させることにより、映像と舞台美術を巧みに交錯させマルチカルチュアルな面白さを作り上げ、世界のエンターテインメント・シーンから賛辞を寄せられる演出家ロベール・ルパージュの日本初演となる『The Blue Dragon-ブルードラゴン』が、いよいよ2010年11月11日(木)から東京芸術劇場でスタートする。待望の公演を前に、アシスタント・ディレクターとしてルパージュの奔放な舞台表現を支えるフェリックス・ダジュネにインタビュー。わずか3人の登場人物を軸に、スケールの大きな物語が繰り広げられる今作の見どころについて聞いた。

特異なビジュアルも、俳優のリアルな演技があってこそ初めて効果がある

フランス語ほど英語が得意でないクレール役マリー・ミショーと共に、インタビューに応えてくれた演出助手のフェリックス。マリーが英語での答につまると、さり気なく助け船を出すところは、彼が演出のルパージュにとっても、共同作者のマリーにとっても、頼れるスタッフだということがわかる。

「ロベール(・ルパージュ)はこの『ブルードラゴン』のような演劇だけでなく、オペラやバレエ作品などの演出で世界中を飛び回っているけど、主な登場人物がカナダ人ということもあって本作には強い思い入れがあるんだ。そうでなければ、これだけ長い時間を置いてまで『ドラゴンズトリロジー』の続編的作品を創ろうとは思わなかっただろうな。彼は元々、日本や中国などの外国の文化に興味があったし、作品化もしている。でも彼に限らず、マリーや僕もそうした国に対して一つの固定したイメージを持つんじゃなく、刻々と変わっていっているところに興味を持ってるんだ。
いや、変わらないところと劇的に変化する部分の両方かな。ほら、ピエールの経営するギャラリーだって、よく見ると以前は違う目的で使用されていた建物だしね」。

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(c) Louise Leblanc

ルパージュ作品といえば、どうしてもその特異なビジュアル表現が注目されるが、『The Blue Dragon-ブルードラゴン』においてはどんな創意工夫がなされているのだろうか。

「もちろん本作でもいろんなビジュアルの仕掛けがなされている。ピエールの家の1階と2階がスケルトンの階段でつながれていることだって、そうした工夫の一つと言えるし、映像の使い方もどんどんチャレンジングなものになっているだろう?ピエールが漢字を書く書道もそうだし、シャオ・リン役のタイ・ウェイ・フォーが踊る時に長い袖の先からこぼれる花びらにも雪片にも見える映像。ゴッホの贋作の絵がどんどん増えていくシーンもそうだし。だけどそうしたいろんなビジュアルも、俳優のリアルな演技があってこそ初めて効果があると言えるんだよ。登場人物たちの台詞や動作は、時にはおかしくて観客の笑いを誘うけれども、それだって演技がリアルだから。特に三つのヴァージョンが用意されているラスト、大笑いしてもらえるのは、やっぱり“あるある、こういうの”という説得力を持っているからだと思うしね」。

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(c) Louise Leblanc

多忙なルパージュに代わって、芝居と音楽とのタイミングのはかり方や映像の出し方など、毎回細かいチェックを行っているというフェリックス。

「登場人物が3人と少ない分、一つ一つの動きや台詞が深い意味を持つから、事前の入念な打合せが不可欠になってくる。その姿勢は日本公演でも変わらないよ」。

その言葉からは静かな自信が感じられた。

(取材・文:佐藤友紀)
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(c) Yanick MacDonald

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ロベール・ルパージュ『The Blue Dragon-ブルードラゴン』
2010年11月11日(木)~14日(日)東京芸術劇場中ホール

料金:S席6,500円 A席4,500円 ※65歳以上の方はS席半額、25歳以下の方はA席半額割引あり。

ロベール・ルパージュ『The Blue Dragon-ブルードラゴン』※3カ国語上演・日本語字幕付き

作:マリー・ミショー/ロベール・ルパージュ
演出:ロベール・ルパージュ
出演:マリー・ミショー、アンリ・シャッセ、タイ・ウェイ・フォー
製作:エクス・マキナ
※詳細は特設サイト




アーティストプロフィール

作・演出
ロベール・ルパージュ

ルパージュ4

1957年カナダのケベック州生まれ。10代の頃、伝説のロックバンド・ジェネシスのステージを観て、舞台演出家を志す。舞台に映像表現を取り入れた先駆者として一世を風靡。最新のテクノロジーを積極的に取り入れる一方、東洋の文化、とりわけ日本の伝統芸能への造詣の深さを活かした演出も得意とする。卓抜した芸術性とエンタテインメント性の融合によって演劇以外のジャンルでも活躍し、世界のアートシーンで目を離すことができない存在である。2007年には、かつてピーター・ブルックやピナ・バウシュも受賞したEurope Theatre Prizeを受賞。

(c) N-F Vachon

※主な作品
<演劇作品>『アンデルセン・プロジェクト』(06年/世田谷パブリックシアター)、『月の向こう側』(02年)『ポリグラフ~うそ発見器』(96年/当劇場で開催のTOKYO演劇フェア'96参加作品)『HIROSHIMA-太田川七つの流れ』(95年/シアターコクーン)『テンペスト』(93年/東京グローブ座 主演:狂言師・野村萬斎) <他ジャンルの演出作品>『女形(Eonnagata)』主演:シルヴィ・ギエム(バレエ)、『放蕩者のなりゆき』ベルギー・王立モネ劇場 指揮:大野和士(歌劇)、シルク・ドゥ・ソレイユの『KA』『TOTEM』、ピーター・ガブリエルのコンサート『シークレット・ワールド・ライブ』『グローイング・アップ・ライブ』



出演者
マリー・ミショー

ルパージュ8

1982年にケベック州立高等演劇学院を卒業後、Theatre Repereに6年間所属。過去数回にわたりルパージュ演出作品への出演経験があり、『ドラゴンズ・トリロジー』ではルパージュと共同執筆した他、同作ジャンヌ役でFTA最優秀女優賞を受賞。即興で演じることが得意で、国際的な俳優との共演も多い。
※主な出演作:『The IIiad』(演出:Alexis Martin)、『La Locandiera』(作:Carlo Goldoni)『Desordre Public』(作:Evelyne de la Cheneliere)、『ロベルト・ズッコ』(作:Bernard Marie Koltes)、『Old Masters』(作:Thomas Bernhard)他

(c) Mario St-Jean


アンリ・シャッセ

ルパージュ7

舞台・テレビ・映画で活躍、古典・現代いずれの作品への出演も多い。舞台作品ではTheatre du Nouveau Monde(カナダ・モントリオールの劇場)での作品が多く、『La fausse suivante』 『L'avare』『マクベス』『オデュッセイア』等に出演。2002年には、『Le monde de Charlotte』でのLouis役が、Gemeaux Awards(カナダのテレビ界で活躍するフランス系カナダ人に贈られる賞)のベストパフォーマンスに選ばれた。

(c) Serge Gauvin


タイ・ウェイ・フォー

ルパージュ9

シンガポール出身で、伝統的なダンスとモダンダンスを学ぶ。1997年、シンガポールのダンスカンパニーTampines Arts Troupeに参加。2004年には中国の泉州やスリランカでも公演を行った。2005年からはケベック州立高等ダンス学院でコンテンポラリー・ダンスを学び、伝統的な中国のダンスを数多く上演した。『The Blue Dragon-ブルードラゴン』は女優として最初の出演作で、本作品の全ての振付を担当している。

(c) David Canon

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