第一次世界大戦前、ドイツ北部にあるプロテスタントの小さな村・アイヒヴァルトを舞台に起こる事件。そこに暮らしていた教師の回想というかたちで進められる物語は、ハネケ監督がこれまでの作品で築いてきた、事件解決のためのサスペンス、不穏な雰囲気、人間の奥に存在する悪意、そして圧倒的な美しさで完璧に構築されたひとつひとつのショット、といった要素がいかんなく盛り込まれている。村を牛耳る男爵と小作人、村の指導者である牧師と子供たち、閉鎖された村に外部者として訪れる教師と、その村で働く恋人のエヴァ。そうしたいくつかの人間関係が絡み合いながら、ひたひたと押し寄せる不安感とともに、閉鎖的な社会における暴力の矛先、そして自分たちのモラルは何かということを突きつけられる。
背景となっている第一次大戦前のドイツという不安定な情勢も、ハネケが目指したイデオロギーの迷走、厳格な教育が人間の意志を放棄させることと、絶望と救済というテーマを明瞭に伝えることに重要な役割を果たしている。ともかく、全編デジタルで撮影された、引き締まったモノクロームの映像美には、自らがその村の住人のひとりとなったかのような、奇妙で複雑な映画体験を約束する。
『白いリボン』
12月4日(土)銀座テアトルシネマ、ほか全国順次公開
監督:ミヒャエル・ハネケ
2009年/ドイツ・オーストリア・フランス・イタリア合作、ドイツ映画/1:1.85/モノクロ/144分
提供:デイライト、ツイン
配給:ツイン
宣伝:ザジフィルムズ
公式サイト
『ミヒャエル・ハネケの軌跡』
期間:2010年12月4日(土)~12月17日(金)
会場:ヒューマントラストシネマ有楽町
過去の代表作はもちろん、スクリーン初上映となる『タイム・オブ・ザ・ウルフ』そしてハネケ監督を追ったドキュメンタリー『毎秒[24]の真実』も初上陸。
※上映時間・料金などの詳細につきましては、
公式サイトをご覧ください。
【『ミヒャエル・ハネケの軌跡』上映作品】
『毎秒[24]の真実』(特別上映作品)
2004年/オーストリア/58分/デジタル
監督:ニナ・クストリッツァ、エヴァ・テストール
出演:ミヒャエル・ハネケ
『セブンス コンチネント』
1989年/オーストリア/35mm/111分
出演:ビルギット・ドル、ディーター・ベルナー
『ベニーズビデオ』
1992年/オーストリア/35mm/105分
出演:アルノ・フリッシュ、アンゲラ・ヴィンクラー
『71フラグメンツ』
1994年/オーストリア/35mm/95分
出演:ガブリエル・コスミン・ウルデス、ルーカス・ミコ
『カフカの「城」』
1997年/オーストリア/35mm/125分/カラー
出演:ウルリヒ・ミューエ、スザンヌ・ローター
『ファニーゲーム』
1997年/オーストリア/109分/35mm
出演:スザンヌ・ロタール、ウルリッヒ・ミューエ
『コード・アンノウン』
2000年/フランス/111分/35mm(DLP上映)
出演:ヨーゼフ・ビアビヒラー
『ピアニスト』
2001年/フランス・オーストリア/35mm/132分
出演:イザベル・ユペール、ブノワ・マジメル、アニー・ジラルド
『タイム・オブ・ザ・ウルフ』
2003年/フランス/108分/35mm(DLP上映)
出演:イザベル・ユペール、ベアトリス・ダル、パトリス・シェロー
『隠された記憶』
2005年/フランス/119分/35mm
出演:ジュリエット・ビノシュ、ダニエル・オートゥイユ
『ファニーゲームU.S.A』
2007年/アメリカ/111分/35mm
出演:ナオミ・ワッツ、ティム・ロス