左からラテンビート映画祭プロデューサー:アルベルト・カレロ・ルゴ、『レボリューション』プロデューサー:ヘミニアノ・ピネーダ・モレノ、『Paper Birds』出演:カルメン・マチ、『Paper Birds』監督:エミリオ・アラゴン
9月16日より新宿バルト9にて「第7回ラテンビート映画祭」が開幕されている。初日は『Paper Birds』と『レボリューション』の二作が上映され、本映画祭のプロデューサーであるアルベルト・カレロ・ルゴ氏の挨拶に始まり、『Paper Birds』に出演した女優のカルメン・マチや本作の監督であるエミリオ・アラゴン、そして『レボリューション』のプロデューサーであるヘミニアノ・ピネーダ・モレノが舞台挨拶を行った。
今映画祭のオープニング作品である『Paper Birds』はスペイン内戦時、人々に笑いを届け続けた旅芸人一座の物語。戦争で家族を失い、さらに軍の圧力を受けながらも気丈に立ち向かう旅芸人ホルへと、コメディアンを目指す孤児ミゲルの交流を描いた、まさにオープニング作品に相応しい屈指の感動作だ。胸をかきむしられるような、それでいて決して笑いを忘れない心温まるラストに、会場は大きな拍手に包まれた。上映後の舞台挨拶で、監督であるエミリオ・アラゴンとカルメン・マチは観客に対するお礼を述べた後にこう語った。
『Paper Birds』
エミリオ・アラゴン:皆さんが現在この映画を観て感動しているのが分かって、私もまたそれに感動しています。例えば素晴らしいオーケストラに素晴らしい楽器を渡したら、それはもう素晴らしい作品が出来るのは当たり前です。それとまったく同じで、私の場合はいま隣にいるカルメン・マチさんを始め、イマノル・アリアス、リュイ・オマル等の素晴らしい役者を出演陣に迎えることができたからこそ、このような作品を創り上げることができたのです。この映画のラストシーンで孤児のミゲルが大人になって登場する場面がありますが、実際これは私の父がモデルになっています。私の父も彼のように芸人だったのです。監督本人である私がこうやって東京に来て、会場の皆さんに父の話をしていることを彼が知ったら、いったいどう思うのだろうかと、何か運命のいたずらのようなものを感じています。
カルメン・マチ:現在ここにいることは自分にとってとても素晴らしいことですし、また隣に居るエミリオ・アラゴンと一緒に居ることはいつでも素晴らしいことだと感じています。私達と皆さんはスペイン人と日本人ということで、全然文化は違いますが、こうやって同じように芸術を愛し、同じように感動することができます。そういう意味でまったく国境等は関係ないということにもまた私は感動してしまうのです。この映画は最初から最後まで愛についての物語なんですけども、撮影中の現場ももちろん愛に溢れていました。私も監督も実はそうなのですが、これはアーティストの家族についての物語でもあります。そして監督の魔法によって、私も素晴らしい演技をすることができたことに本当に感謝しています。
エミリオ・アラゴン(左)、カルメン・マチ(右)
エミリオ・アラゴン:撮影時のエピソードとしては、カルメン・マチさんが楽団から去るシーンを撮影した日がちょうどスペインで「役者の日」と呼ばれる日で、7~8才の子ども達が50人くらい偶然に撮影の現場に訪れました。すると彼等は何も言わずに私達の前で劇を始めました。カルメンもそれに参加して歌を歌ったりし始め、それを見た他のキャストの面々も参加し、それぞれの芸を披露して過ごしました。そして役者や芸人だけでなく、裏方のカメラや大道具まで協力してくれて、結局1時間ほどみんなで美しい芸術の世界を創ることができたのです。こういった偶然によって素晴らしい出来事が導かれていくということが、芸術の素晴らしい点だと思います。プロジェクターから出てくるのはただの光かもしれませんが、そういったものすべてが人々を感動させることができるのだと私は信じています。
『レボリューション』
一方『レボリューション』の方はディエゴ・ルナやガエル・ガルシア・ベルナル等を始めとするメキシコの監督達が独自の視点で革命を見つめなおした10の短編から成るオムニバス作品だ。プロデューサーであるヘミニアノ・ピネーダ・モレノは語る。
ヘミニアノ・ピネーダ・モレノ:皆さんにこの映画がどのように受け取られるのかということに大変興味を持っています。今年メキシコは独立200周年で、9月16日が独立記念日なのですが、それを記念するために私達はこの映画を創ることに決めたのです。この映画は10本の短編から成っており、10人の監督で10分ずつという枠で撮りました。その短編を撮る際に決めたルールというのがひとつありまして、この映画のなかでは"革命でどのように人々が闘ったのか"など、アクション映画のような激しいシーンを一切使わないというものでした。
『レボリューション』
小さな村の歓迎の日のためにひとり楽器を練習し続ける父親を描いた、モノクロのざらついた映像が美しいオープニング作品『ようこそ』や、死の直前に「メキシコに埋めて欲しい」という父の願いをなんとか叶えようとする娘を描いたコミカルな『愛しの美しき故郷』等、たしかにどちらかといえば淡々としたムードの作品が多い。どの作品もそれぞれが請け負った自分なりの「革命」を10人それぞれが表現した気骨をある作品ばかりである。
『レボリューション』
映画祭は東京は新宿バルトで9月23日(木・祝)まで、京都は駅ビルシネマで9月20日(月・祝)~10月3日(日)まで(京都のみ『ボルベール〈帰郷〉』『モーターサイクル・ダイアリーズ』等の旧作も上映)、横浜は横浜ブルク13にて10月8日(金)~10月11日(月・祝)まで開催される。他の上映作品もヴィンセント・ギャロ主演の『テトロ』(フランシス・フォード・コッポラ監督)を始め、映画ファンのアンテナを震わせる作品ばかりである。ここでしか観る事の出来ないこのラテンムービーの祭典に是非足を運んで欲しい。
(取材・文:中村 慎)
第7回 ラテンビート映画祭
[東京]9月16日(木)〜9月23日(木・祝) 新宿バルト9
[京都]9月20日(月・祝)~10月3日(日) 駅ビルシネマ
[横浜]10月8日(金)~10月11日(月・祝) 横浜ブルク13
●東京・横浜
・当日券(1回券):一般1,700円/学生1,500円/小人、シニア、障害者手帳をお持ちの方1,000円
(前売券:一律1,500円)
・回数券(5枚綴り):6,000円(前売り券のみ)※枚数限定販売
●京都
・新作 当日券:一般1,800円/学生1,300円/シニア・小中高生1,000円(前売券:一律1,300円)
・旧作 当日券:一般1,200円/シニア1,000円/大学生800円/小中高生500円(前売券:一律1,000円)
・新作回数券(3枚綴り):4,200円(9月20日から劇場窓口にて販売)
※詳しくは公式ページまで!!
※京都のみ旧作11本の上映あり。詳しい上映作品等についてはこちら
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