写真左から吉田アミ、山本精一、中村賢治
7月某日午前22時、ジョナサン。マンガ好きがマンガについて熱く語り合うイベント「マン語り」を共同で企画している中村賢治君を呼び出し、7月8日(木)開催の「マン語り」vol.4の反省会を行った(前回の模様はコチラ )。
反省、「会場が暑かった」以上!
吉田アミ(以下吉田):お疲れー。
中村賢治(以下中村):お疲れさまです~。
吉田:あれ、今日はごはん食べてないね。
中村:もう食べちゃったんで……。何頼みます?
吉田:こないだ経費をもらいすぎたから今日は奢るよ。
中村:おぉ!ありがとうございま~す。えーと、どうしよう。
吉田:私は焼酎とドリンクバーで。
中村:じゃあ、僕もそれにしようかな。すみませーんコレをえーっと…
吉田:麦で!
中村:あ、じゃあ僕もそれを。
(しばし待つ)
吉田:じゃあ、お疲れさま~カンパーイ!
中村:カンパーイ!
吉田:ふぅー。さーどうしよう。今日は反省会&お疲れさま会ですが。
中村:とにかく人すごかったですね。平日なのにあんなにたくさんの人が来てくれてうれしかったです。あとで聞いたら会場の荻窪ベルベットサンの観客動員数を塗り替えたそうです。
吉田:おお!それはすごいね。やればできるじゃん!
中村:今までが告知、ぎりぎりすぎたんですよ!ちゃんと告知さえすれば内容はいいんだからお客さんは来てくれます!!!
吉田:だよねー。まーしかし、お客さんがたくさん来てくれたのは大変よかったのだけど、途中入場しようとした友達が入れなくて、帰っちゃったんだよね。これは申し訳なかった。
中村:ですよねー。予約の段階で38人、来ちゃってましたから。
吉田:え!?そんなに!?あのスペースで!予約ばっかりだと、あんまり儲からないんだよね。どおりであがりが少ないと思ったよ。赤字じゃないにせよ、出演者へのギャラをなんとか増やしたい。
中村:観ていた場所によっては暑い!という意見もあったようで。
吉田: うわーそれは申し訳なかった。私はわりと平気だったけど。
中村:いや、ステージのほうが暑かったですよ!照明あるし。
吉田:ビールごくごく飲んでたせいかな(笑)。おかげでビールが売れたんじゃないの?
中村:あーたしかに。けっこう、アルコール出てましたね。
吉田:私がいっぱい飲んだから。みんな飲みたくなったんじゃないの。
中村:そういう商法ですか!?
自由に閲覧できるマンガがずらり。
吉田:酒が出たら会場が儲かるからね。儲かると次はもっとやりやすくなるからね。やりやすくなると内容に力を入れられるからね。酒を飲んだら桶屋が儲かるみたいなもんですよ。
中村:かなり自分に都合良く解釈してますね。最後、ベロベロでしたからね、また!
吉田:テヘっ☆
中村:アミさんの酔っ払いぶりを心配していたゲストの山本精一さんに「全部、中村君がなんとかしてくれるんで大丈夫です!」って言ってたの覚えてますか?おかしかったのが、精一さんが「甘えとるな?」って言って諌めてた時にアミさん覚えてないと思いますけど「いいんですよ!こんなときくらい甘えたって!そのためにイベントやってるんで!」って、言い切ってたところですね。
吉田:相変わらずむちゃくちゃだね(他人事のように)。今回、ボランティアスタッフもいたしね。酔っ払っても大丈夫な体制で臨みました!
中村:準備万端でしたよね。酔っ払うための。
吉田:だって、出演者が楽しくないイベントなんて意味ないよ。これで儲けてるわけじゃないし。
中村:酔っ払いの介抱は手慣れたもんですよ~。
吉田:中村君は若いころに体壊して、酒を一滴も飲めなかったんだよね。
中村:4年ほど静養期間を経て最近、やっと飲めるようになりました!
吉田:まとめると、暑さ対策、予約、椅子問題……まだまだ改善する余地はあるね。トークイベントで立ち見はなるべく避けたいなー。
中村:いろいろ問題点見えてきましたね。次回に活かしましょう!
吉田:前向きだね。ベッキーみたいだね。ところで、内容的にはどうだった?
中村:やりたりない感じでしたね。精一さんも「話したりんわー!」と、打ち上げのとき、しきりにおっしゃってましたね。
34年ぶりに「水道眼鏡殺人事件」が掲載された雑誌『JAZZ』を手にした山本氏の喜びの表情。
吉田:ちょっと足りないくらいのほうが次回に繋がるんだよ!……たぶん。あと、客層がちょっと変わっていたね。精一さんのファンはもちろん多かったんだけど、ちょっとつかめない感じの人も多かったね。
中村:相乗効果でしょうね。出演者のファン、イベント自体のファン、相乗効果で来てる人、いろいろ居ましたね。チラシのイラスト描いてくれた宮田紘次さんやDJ目当ての人もいたし。けっこう女性客も多かったですよね。
吉田:かわいい子ばっかりだったね。マンガのイベントなのに!
中村:僕、イベントの時ってなるべくお客さんに声かけるようにしてるんですけど、さすがにあれだけ人数居ると全員に声かけられなくて。
吉田:25人くらいが限度だよね。把握できるのって。
中村:でも、ああいうときにアミさんも分かれて話しに行ってくれてたので良かったですよ。
吉田:そうだね。私もお客に声はかけるようにしている。一人で来ても楽しかったなあーと思ってほしいし。つうか、ぜんぜん、話しますよ。どんどん、来てほしいもん。お客さんって、お金払ってわざわざ来てくれてる人だから。そもそも、イベント楽しみたいって思ってるわけだし。
中村:全部は相手にはできないけど、せめて目の前にいるお客さんには楽しんでもらいたい。
吉田:人が楽しんでる笑顔が一番のご褒美ですよ!
中村:楽しくなきゃ、やってらんないですよ!
吉田:車出して、DJセットを浅草まで借りに行って、家から大量にマンガ持ってたりね……。
中村:好きでやってるからいいんです!そこはそんな大変じゃないんで(笑)。
吉田:このイベントは善意でできてます!
今後の課題は中村ギャルを増やすこと
吉田:告知はどうだった?
中村:コミックナタリーが紹介してくれましたね。
吉田:コミックナタリー!ありがとう!
中村:フライヤーはあっという間になくなりましたね。
吉田:1000枚しか刷ってないけど。あれA4で、大きかったんだけど、おかげでお店に貼ってもらえたのが良かったね。今回、出演者以外にもイベントに関わってくれた人が多かったから配る場所がけっこうあった。フライヤーのデザインやってくれた毛利悠子さんの展示や吉祥寺のcafe dzumiでやってる自分のイベント「おとのおと」「ひとのおと」でも配ったし。あと、精一さんがうたもののソロアルバム「PLAYGROUND」をリリース直前で東京でのライブも多かったから折り込みにけっこう行ったし。
山本精一「PLAYGROUND」(Pヴァイン・レコード)
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中村:次回もこれくらい効果的にフライヤーを撒けるといいですよね。
吉田:そういえば、トークのときに「PLAYGROUN」の宣伝しようと思ったら精一さんに止められたね。
中村:そんなことよりもマンガの話をさせろや!と。
吉田:そんなことよりって!ものすごく大切なことなのに(笑)。6年ぶりの歌もののアルバムです。と、宣伝しつつ、話を戻そう。えーと、イベントの感想とかって個人的に聞いてる?
中村:パワーバランスがいいですねって、言われました。
吉田:パワーバランス!?何、その感想!
中村:僕とアミさんの距離の取り方とか。
吉田:中村君、敬語だしね。女性が司会とかやるとどっちかっていうと感覚的になりすぎたり、ポエムな感じになったりするからね。『マン語り』はわりとイーブンな感じでやるように気をつけている。
中村:そうそう。そのほうがやりやすいっていうか。ぜんぜんストレス溜まりませんよ。
吉田:中村君が私よりえらそうにしてると反感買いそうだしね。
中村:そうですよ。ほとんどの人が僕のこと誰?って思ってるだろうし。
吉田:冷静な分析だね。毎回、何の説明もしてないしね。当たり前のように司会やってるしね。みなさん!中村君はサックス奏者なんですよ。
中村:そうですよ!古本屋の店主ってだけじゃないんです。音楽もやってるんです!
吉田:JAZZイベント「BLACK&GOLD」も中村君主宰のイベントだったよね?
中村:そうですね。2008年くらいから六本木のsuper deluxeでやらせてもらってます。といってもあれくらいの規模のイベントに関してはここ1年ほど企画できてないんで、そろそろ企画したいなと思ってるんですけど。
中村賢治のイケてるアーティスト写真
吉田:これからは中村ギャルみたいなのを集めないとね。
中村:中村ギャル!マンガとか全然読まなそうなんですけど(笑)。
吉田:登場するだけで軽く失神するくらいの熱狂的なファンを増やさないとね。今後の課題だね!
中村:えっと、、がんばります!
吉田:具体的に何をどうすればいいのかわからないけどね。フェロモン的な何かを出せるように訓練するといいんじゃないのかな。
中村:えっと、、がんばります!
吉田:いやーしかし、いろいろ感想もらってるけど良かったっていう感想ばっかりで、逆に不安なんだけど誰かディスってなかった?
中村:特になかったと思います。アミさんの方で、ネット上で反応とか見たりしました?
吉田:そういえば、アニオタフォースのアニオタさんが感想書いてくれてたよ。コレ……(ノートPCを見せる)。
中村:おお!
吉田:ほら、ここに良いこと書いてあるよ。「アミさんは隅々まですごく気を遣ってくれて、打ち上げの際も皆に話題を振り自然と話の輪に誘導してくれた。アミさんのおかげで初対面の色んな人と話すことが出来ました。ありがとうございます」って。
中村:自分のことばっかりじゃないですか!
吉田:そんなことないよ!中村君のこともほらここに!
中村:ほんとだ!ちゃんと僕のことも書いある。さすが、アニオタさん(笑)。
マン語り、いつのまにやらアニ語り
吉田:精一さんの語り口は軽妙で良かったね。ずっと聞いていた感じ。
中村:めちゃめちゃしゃべりやすかったです!
吉田:まさにトークセッション!よく言ってるんだけど、ミュージシャンのトークって、音楽的で聞いてて気持ち良いんだよね。精一さんがメインボーカルでギター、われわれがリズム隊みたいな。
中村:時々、暴走してましたけど。「クッキングパパ」の話とかで。
吉田:ああ、あのうえやまとち先生が考えたツンデレの話ね。1091話「熱い想いのじりじり」に登場した福辺点子ちゃんという理系女子のキャラクターのことなんだけど、これ、うえやまとち先生が自分なりにツンデレを解釈した結果、ツンデレ以上のキャラクターになっているという。要素だけ抜き出すと、確かにツンデレなはずなのに!不思議な魅力があるんだよね。
中村:あそこで僕ら暴走しちゃったけど、知らない話をしても精一さんは優しく聞き役に回ってくれて。あと、さすが関西人だなと思ったのがとっさに笑いを取れるところ!トークでお客を笑わせるのって難しいですよね。
吉田:特に客層がマンガのマニアからライトな客まで幅広かったからね。お勉強みたいな感じのマニアックなトークだとお客さんがついてこれないからね。満足しづらい。
中村:最初のトークは、過去のマンガ雑誌の創刊の歴史に寄り添いながら話していったじゃないですか。
吉田: うん。昔、私が作った年表見ながらね。精一さんって、1958年生まれなんだけど、翌年の1959年に週刊の少年誌『週刊少年サンデー』(小学館)と『週刊少年マガジン』(講談社)が創刊されてるんだよね。子ども向けのマンガ雑誌が一番、勢いあった時期に子どもだったという。
中村:自分のこと「子どものときのまんま大人になった」みたいに言ってましたよね。
吉田:途中、かなり端折っちゃったけど、子どもの時からのマンガ遍歴を追うには、マンガ雑誌の歴史と照らし合わせるのが自分は分かりやすかった。昔は雑誌に力があったし、みんな読んでいたから。
中村:いまだとそこまでひとつのメディアが影響与えることってないですからね。
吉田:そっから中村君が安部真弘の「侵略!イカ娘」の話に持っていったね。
安部真弘「侵略!イカ娘」1巻
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中村:いやーもう、あの辺の時代の話ってまったくわかんないんで。僕、生まれてないし!力技ねじ込んで申し訳ありませんでした。
吉田:私も生まれてないよ!教養として知ってるだけで。とはいえ、あんまり楽しかっただけで終わっちゃうと、それはそれで時間を無駄にしたなーという感じもするから、データ的な話もしておかないと。まー匙加減難しいんだけど。「イカ娘」は、精一さんも読んでいたから乗っかってくれたよね。「イカ」だの「ゲソ」だの盛り上がってたね。
中村:ああいう中学生みたいなバカ話を僕はもっとしたいです(笑)。
吉田:あと、精一さんはしきりに中村君とキャラがかぶるのを気にしていたね。二人とも似た感じのメガネをしてたから。
中村:『マン語り』なのに最初、アニメの話したじゃないですか。それで、アニメ「冒険ガボテン島」オープニングみんなで観ようってなって、そこに出てくるメガネキャラのキュウリ君に憧れていたって。
吉田:ふつうキッズは主役になりたいって思うのにおもいっきり脇役だし(笑)。
中村:「全知識を我がものにしたかった」と言ってらっしゃいましたから。
吉田:メガネ男子なんて、今でこそ萌えの対象になってるけど、昔はそんな憧れる対象ではなかったのに!
中村:幼少のころから、先見の明があったんでしょうね!あ、そうだ、ウェブカメラでPCとか手元のマンガをスクリーンに映してましたけど、あれ、すごくボケてましたね。あれは、改善の余地ありますよ!
吉田:確かにあれは少し見にくかったかも。じゃあ、せっかくだし今回もこの対談はWebDICEでやってる連載『マンガ漂流者』に書くことになったから、あのとき紹介したアニメのYouTubeを貼っておこうか。最初に観たのが「悟空の大冒険」のオープニングとエンディング。精一さん、宇野誠一郎が好きで芸名の「せいいち」もここから取ったって言っていたね。
中村:あの話は眼からウロコでした!ウロコ話といえば、エンディングの「悟空が好き好き」が精一さんの人格形成に影響を与えたという話も良かった。「マンガが 好き 好き 好き テレビが 好き 好き」って、精一さんそのまんまじゃないですか!っていう(笑)。
吉田:で、一番、好きなアニメのオープニングとして上げてたのが「ジャングル大帝」でしたね。
吉田:話ちょっとそれるけど、大友良英さんもこの頃のアニメソングが好きなんだよね。精一さんはもちろん、私も参加してるCDアルバム「山下毅雄を斬る」っていうのがあって。「冒険ガボテン島」とかも入ってます!精一さんとPhewさんが歌ってる「ガンバの冒険」も。名盤デスヨ!
大友良英「山下毅雄を斬る」(Pヴァインレコード)
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「水道メガネ殺人事件」のおっさんはおいしそう
吉田:あと何の話してたっけ?
中村:90年代に太田出版から発売されてた「QJ選書」シリーズからふくしま政美「聖マッスル」や徳南晴一郎「怪談人間時計」とか。
吉田:またもや「せいいち」!精一さんはもちろん、『クイック・ジャパン』(太田出版)で、再評価される前から知ってるんだよね。私は完全にこの復刻で知った口だけど。もうすでに10年以上経ってるから、「QJ選書」自体を再評価するべきかも。
劇画ふくしま政美、原作宮崎惇「聖マッスル」(太田出版)
中村:僕はぜんぜん知りませんでした。
吉田:「聖マッスル」は76~77年にかけて『週刊少年マガジン』(講談社)で連載していたマンガ。ふくしま政美の描いた独特の筋肉表現が後発の作家に影響を与えたといわれている。太田出版から97年に復刻されている。徳南晴一郎の「怪談人間時計」は、62年に曙出版から刊行されていて、96年に同じく太田から復刻されている。貸本マンガ出身で、水木しげるみたいな、いわゆる怪奇マンガをたくさん描いていた。
徳南晴一郎「怪談人間時計」(太田出版)
作品だけ読むといかに狂った人みたいな感じがするし、実際、90年代はそういうキワモノ的な扱いでも紹介されていたんだけど、もともとマンガがうまかったから、「怪談人間時計」はあえて手法としてシュールを選んで描いていたんじゃないか、とかそんな見立てで話しましたね。 いってみればマンガ界のジョーミーク(※1)みたいな?マンガ家になる前には石ノ森章太郎が主宰していた「東日本漫画研究会」の会員でもあった。※1)イギリスの音楽プロデューサー。ミュージシャン。60年代に多くのヒット曲を生み出した。67年に殺人を犯し、自殺した。
中村:で、第二部ではサプライズゲストとして、宮田さんにも少しだけ出演してもらいましたね。
吉田:本人の前で「真昼に深夜子」を褒めまくるという辱めを……。それから今回、鈴木翁二の「水道眼鏡殺人事件」の話が出来たのが良かった。犬が義足をお肉と勘違いして持っていちゃったから右手を切らないと恥ずかしくて町を歩けないと思った主人公が間違えて左手を切り落としちゃっうっていう話。足の切り口が米粒みたいでおいしそうなんだよね、このおっさん。
中村:お客さんが初出の雑誌(雑誌『JAZZ』76年3号)を持ってきてたのも、サプライズでした。
吉田:プロのお客さんだったよね。ちなみに私が持っていったのは、92年の単行本「まばたきブックス」(銀音夢書房)。高1のときに買ったやつ。鈴木翁二は69年に『ガロ』(青林堂)から「庄助あたりで」でデビューしたマンガ家。代表作はあがた森魚監督で映画化された「オートバイ少女」が有名かな。つげ義春と並んで、叙情派といえば鈴木翁二を思い浮かべる人も多いんじゃないかな。
宮田紘次「真昼に深夜子」1巻(エンターブレイン)
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ちなみに二人ともほぼ同じ時期に水木しげるのアシスタントをやっていた。で、精一さんのファンなら知ってると思うけど、94年にリリースした「山本精一&水道メガネ殺人事件」(AUGEN)っていうのがあるんだけど、この作品でタイトルを拝借するくらい精一さんが好きだったという。知らないよね?
中村:知らないですね。
鈴木翁二「水道眼鏡殺人事件」/92年『まばたきブック』(銀音書房)収録
吉田:トークの時は咄嗟のことで、これとその作品が繋がらなくて、ぼんやりしちゃったんで、ここで補足させてもらうね。これ、当時の難波ベアーズ(大阪のライブハウス。精一さんが店長を務めている)周辺で活躍してミュージシャンが出演してるミュージカルビデオで……。
中村:え!?
吉田:実は私、これ持ってないんだ。気になってはいたんだけど。なので、またもや佐々木敦さんの「unknownmix」第一回(山本精一さんを取り上げている)から引用するけど「『マイフェアレディ』や『南太平洋』といったスタンダードの名曲をうろ覚えで演奏するバンド・パートと、無意味な一瞬芸の連続ともいうべき奇人変人のオンパレードが交互に出てくる素晴らしい内容」とのこと。ちなみに、このパッケージがひどくて(もちろん良い意味で)、ボアダムズのヨシミさんが拾った猫のブロマイドとか、洋服のタグとか、綿棒とか要するにゴミみたいなものが一緒に入ってる。これ、当時は普通にタワーレコードとかで売っていたから。狂った時代ですよ。
「山本精一&水道メガネ殺人事件」(AUGEN)
中村:今の時代からは、まったく想像できないです。
吉田:私がやってるトーク&リスニングイベントの「おとのおと」のローファイ編やモンド反省会で、佐々木さんや岸野雄一さんとも話したんだけど、94年って、どんな年だったかというと、モンド・ミュージック前夜、ローファイ元年っていう頃。で、今、DOMMUNEをやってる宇川直宏さんが運営してたレーベル『MOM’n'DAD』から、ボアダムス(一時期、山本精一も参加)の前身となったハナタラシのライブ音源がリリースされてるんだけど、そのCDの余った部分にその後、モンド・ミュージックとして紹介されることになる音源を勝手に収録してるんだよね。岸野さんも言ってたけど、日本のモンドの歴史として宇川さんの功績は偉大なのにあまり評価されていないという。まあ、許可も取らずに勝手にやってるんだけど。
中村:さすが、メディア・レイピスト!
吉田:こういうムードがあったから精一さんも面白がって、やっていたんだと思う。聞いてないけど(笑)。今度、詳しく聞いてみたいなあ。というか、このビデオ、上映するのもアリだね。今だからこそ。
中村:今、観ないでしょう。存在さえ知らない若い人が多いと思う。
吉田:94年ごろの文化って、ぜんぜん省みられてないからね。価値がないと思われて。というか、価値のないゴミみたいなものを受け手が面白がっていたからなんだけど。
今後はどうする?水木しげるブームに乗りたい!
中村:でも、ぜんぜん話したりなかったですよ。やっぱり、今後はもっとテーマを絞って、1年くらいシリーズで続けないと。
吉田:持つかなあ。
中村:余裕でしょう!
吉田:やりたいテーマとかある?
中村:もう少し、最近のマンガを紹介するコーナーとかあってもいいかも。僕は過去の話ばっかりになっちゃうとつまらないかなー。今のマンガも読んでほしいって気持ちがあるから。
吉田:確かにね。昔は良かった話だけにはしたくないね。なりようがないけど(笑)。
中村:アミさんはやりたいテーマとかあります?
吉田:打ち上げでも話してたけど、いましろたかしで一回やってもいいね。あと、怪奇・幻想ものとか。水木しげるは、やりたいな。今年、水木先生、米寿だから力入れてるんだよね。NHKの朝ドラで放映している「ゲゲゲの女房」も評判いいし。8月からは「水木しげる米寿記念 ゲゲゲ展」が、9月には「ゲゲゲの女房」の映画も公開されるし。ちょっとした水木ブームに乗らない手はない。
中村:今回のイベントをやってみて、次の展開が見えてきましたね。いろいろやってみたいことがある。
吉田:うん。何でもアリにはする気はないけど、臨機応変に軽いフットワークで企画していきたいね。あんまりギチギチに決めてやるよりは、余裕を持って企画して、会場でどんな風にでも転がるようにしておきたい。そういう企画側の余裕みたいなのがないとお客さんもリラックスできないっていうか。必死すぎても適当すぎてもダメな気がする。
「水木しげる米寿記念 ゲゲゲ展」メインビジュアル/(c)水木プロ
中村:お客さんにとっては、面白ければそれがすべてですからね。
吉田:かといって、こっちで何でもやってくれると思ったら大間違いで。来てくれているお客さんともコミュニケーションをとって、より良い関係を築けるのが理想ではあるよね。
中村:そのためにイベント後、懇親会を開いてるわけです。
吉田:お客さんのテンションって、こっちに伝わってくるから期待されればされるほど、サービス精神はうなぎ上りに。
中村:そういう意味では、今回は理想に近いイベント内容でしたね。
吉田:何よりも出演者が楽しんでくれてたのがうれしかった。DJも司会もゲストもスタッフも。
中村:僕もこんなに終わったあとに手ごたえを感じるイベントは久しくなかったですね。お客さんのレスポンスも良かったし。やってよかったな、って思えました。
吉田:そうだね。次回、ガクッと客が減るかもしれないしね。
中村:そんな不吉な!でも、さすがにそれはないと思いますよ。ただ、怖いのが次の次の回ですよ。次回は今回の貯金で人が来てもらえるだろうけど。
吉田:まあ、慢心せずに次回、もっといいイベントにしよう!志は高く持つにこしたことはない。
中村:そうですね。今回の反省を活かして次回も良いイベントにしましょう!
吉田:せっかくだから焼酎もう一本、飲む?
中村:もういいですよ(笑)。はいはい、僕の残りあげますからね~。
■お知らせ
次回の「マン語」は9月2日(木)に開催決定!引き続き山本精一さんが出演!+αまた、楽しい催しやサプライズがいっぱい!テーマなど詳細が決まり次第お知らせします。日程を空けておいてね☆
■『マンガ漂流者(ドリフター)』
これまでの連載はこちら
http://www.webdice.jp/dice/series/15/
■中村賢治PROFILE
1983年生まれサックス奏者/2005年から本格的に活動を開始。フリージャズバンドReal Blue、自身のバンドfreder mouse、N.K.G.、Eli など都内で積極的にライブ活動を行う。BLACK&GOLD主宰。
・個人サイト
■吉田アミPROFILE
音楽・文筆・前衛家。1990年頃より音楽活動を開始。2003年にセルフプロデュースのよるソロアルバム「虎鶫」をリリース。同年、アルスエレクトロニカデジタル・ミュージック部門「サマースプリング」(太田出版)、小説「雪ちゃんの言うことは絶対。」(講談社)がある。また、ロクニシコージ「こぐまレンサ」(講談社)やタナカカツキ「逆光の頃」のマンガの復刻にも携わっている。現在、webDICE(UPLINK)にて、「マンガ漂流者(ドリフター)」を連載するほか、マンガや音楽イベントの企画・運営も積極的に行っている。
・ブログ「日日ノ日キ」