骰子の眼

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2010-07-17 16:00


「まさにジャー・ガイダンス」Likkle Maiが語る『ロッカーズ・ダイアリー』とレゲエの運命的吸引力

バファルコス監督によるフォト・エッセイ刊行記念イベントレポート
「まさにジャー・ガイダンス」Likkle Maiが語る『ロッカーズ・ダイアリー』とレゲエの運命的吸引力
バファルコス監督と交流のあるLikkle Maiが監督のサイン入りサントラ盤を持参して登場

ギリシャ人の青年、セオドロス・バファルコスがニューヨークへ渡り、レゲエに魅せられてジャマイカで映画『ロッカーズ』を制作した記録を綴った『ロッカーズ・ダイアリー』の刊行を記念して、7月9日(金)にアップリンク・ファクトリーにて記念上映とLikkle Maiさんをゲストに迎えたトークイベントが行われた。

映画『ロッカーズ』が制作された1970年代後半は、現在でもレゲエの全盛期として語られる時代。トークゲストとして登場したLikkle Maiさんにとっても、たくさんのレゲエ・スターが登場するこの映画は特別な意味をもっているそうだ。4年前にはセオドロス・バファルコス監督に直接インタビューする機会があり、そのおおらかな人柄が印象的だったと語る。イベント当日は、その際監督にサインをしてもらったという『ロッカーズ』のサウンドトラックCDを持参し、会場の観客に披露した。

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『ロッカーズ・ダイアリー』より、バーニング・スピア

『ロッカーズ・ダイアリー』にはジョー・ギブスやキング・タビーなどの名立たるレゲエ・プロデューサー/エンジニアの作業場も監督撮影の写真で登場するが、過去キング・タビーとレコーディングをした経験をもつLikkle Maiさんの目にも当時の現場は魅力的に映ったという。そしてジャマイカという秋田県くらいの面積しかない国の小さなスタジオから、世界を魅了する音楽が生まれたことに改めて感慨を覚えたそうだ。また、映画『ロッカーズ』についても、ジャマイカ人のお気楽な気質を的確に捉えていることやネズミ小僧のようなストーリーが印象的で、今でもお気に入りの映画として挙げることが多いという。

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『ロッカーズ・ダイアリー』より、リー・ペリー

ボブ・マーリィによって世界に波及したラスタファリアニズムの神とされる「ジャー」にちなんだ、「ジャー・ガイダンス」という言葉がある。レゲエという音楽に関わっていると、まさに「ジャー・ガイダンス」と呼ぶにふさわしい、不思議な出会いや思いも寄らない偶然の出来事が起こることが少なからずあるそうだ。著者であるバファルコス監督がニューヨークで、誰のコンサートかも知らずに訪れたライブ会場にてボブ・マーリィのパフォーマンスを観たこと、その後いろいろな縁があってレゲエの映画を撮るに至った事実、4年前と同じように自身が再びアップリンク・ファクトリーにて『ロッカーズ』のイベントに出演していること(Likkle Maiさんは2006年に『ロッカーズ』25周年記念DVDのリリース時にもアップリンクに招かれ、イベントに出演している)、そして今回のイベントの司会が旧友であったことにも「ジャー」の導きを感じたと語った。

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『ロッカーズ・ダイアリー』より、ドクター・アリマンタド

バファルコス監督が辿った『ロッカーズ』完成までの軌跡を文字と写真で追っていくと、読者は旅に出たいという衝動や何かを始めたいという気持ちに駆られる。Likkle Maiさんも多くの人にこの本を読んでもらい、新しいことを始めるきっかけにしてほしいと述べた。

イベントの最後にはアップリンクの代表であり、この本のプロデューサーである浅井隆が、去る5月にギリシャのアンドロス島に住むバファルコス監督に直接書籍を届けに行った際の様子を報告した。癌を患いながらも監督は元気に暮らしており、制作に5年かかった『ロッカーズ・ダイアリー』を感慨深げに手に取ったという。そしてアンドロス島のレストランで食事をしていると、監督がそのレストランの常連だと知った『ロッカーズ』ファンの現地の青年が待ち伏せしており、監督にサインを求めてきたそうだ。昨年はアテネで行われたレゲエのフェスティバルに『ロッカーズ』の主演であるホースマウスが登場し、監督とともにステージに立つなど、今でも1本の映画を介してその絆は育まれているようだ。

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『ロッカーズ・ダイアリー』より、キングストンのランディーズ・スタジオ

当日来場していた、『ロッカーズ』を日本で始めて配給したオーバーヒートの石井“EC”志津男氏と、『ロッカーズ』のプロデューサー、故パトリック・ホージィ氏の妻、チェリー・カオル・ホージィ氏にも賛辞を述べ、イベントは終了した。制作から32年の歳月を経た映画が、なぜ現在でも多くの人々に支持され、色褪せることなく輝きを放っているのかを証明するかのような時間となった。

(レポート・文:平井淳子)

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『ロッカーズ・ダイアリー』

写真・著:セオドロス・バファルコス
訳:浅尾敦則
2,990円
ISBN978-4-309-90876-2
菊判変形/ハードカバー/272ページ
発売中
UPLINK

『ロッカーズ・ダイアリー』公式サイト
http://www.webdice.jp/rockersdiary/

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