映画『ストーンズ・イン・エグザイル~「メイン・ストリートのならず者」の真実』より (C) Dominique Tarlé
このドキュメンタリーのタイトルである『ストーンズ・イン・エグザイル』はもちろん、『メイン・ストリートのならず者』の原題『エグザイル・オン・メイン・ストリート』に由来する。当時のストーンズは英国の高い税率から逃れるために四苦八苦していた。イギリス人アーティストとしてまさしく亡命者(エグザイル)だったのだ。それと同時に、たどり着いた南フランスの地で音楽的にも試行錯誤を繰り返しながら自力でレコーディングに臨んだ。ロックスターとして華麗な生活の対極にある苦難に満ちた制作の現場を、この作品は多数の関係者の証言から多角的に検証している。バンドにとっても自らのレコード・レーベル、ローリング・ストーンズ・レコードを1971年に設立しリリースした『スティッキー・フィンガーズ』に続く作品ということで、すべてを自らでコントロールしようと極めてクリエイティビティの高い制作の現場だったことは想像に難くない。しかし締切さえあいまいであり、スタッフや家族ぐるみでの南仏での生活を共にするという環境は、あまりにも自由であるがゆえに士気を萎えさせることにもなるというなんとも皮肉な状況を生んだ。
映画『ストーンズ・イン・エグザイル~「メイン・ストリートのならず者」の真実』より (C) Dominique Tarlé
キースの新居の地下室での制作現場の模様から浮かび上がるのは、個性的なストーンズのメンバーそれぞれの態度だ。ジャズ好きのチャーリー・ワッツはこのレコーディングをジャズのセッションになぞらえ、ミックはストイックにレコーディングに没頭し、そしてキースは自由奔放にその環境を楽しむ。図らずもこの異国でのレコーディング・セッションは、ストーンズたちのキャラクターを浮き彫りにし、『メイン・ストリートのならず者』のバラエティに富んだ曲調とブルースやR&Bなどを基調にしたソウルフルなフィーリングによる統一感へと帰結した。時を超えて現在のメンバーが語るこのセッションについての逸話の数々は、ロック史に輝くアルバムに新たなストーリーを吹き込むことに成功している。
映画『ストーンズ・イン・エグザイル~「メイン・ストリートのならず者」の真実』より (C) Dominique Tarlé
『ストーンズ・イン・エグザイル~「メイン・ストリートのならず者」の真実』
2010年7月12日(月)より渋谷アップリンク・ファクトリー、新宿K'sシネマ、吉祥寺バウスシアターほか、全国順次公開!
監督:スティーヴン・キジャック(『スコット・ウォーカー 30世紀の男』)
出演:ミック・ジャガー(vo)、キース・リチャーズ(g)、チャーリー・ワッツ(ds)、ビル・ワイマン(b)、ミック・テイラー(g)、ロニー・ウッド、マーティン・スコセッシ、ジャック・ホワイト、ドン・ウォズ、カレブ・フォロウィル(キングス・オブ・レオン)、ベニチオ・デル・トロ、ウィル・アイ・アム(ブラック・アイド・ピーズ)、シェリル・クロウ、アニタ・パレンバーグ、ジミー・ミラー(プロデューサー)、アンディ・ジョンズ(エンジニア)、ドミニク・ターレ(写真家)、ボビー・キーズ(サックス・プレーヤー)、他
アメリカ、イギリス/61分/2010年/カラー/ドルビー・デジタル・ステレオ/
英語・フランス語・スペイン語・ドイツ語・イタリア語・オランダ語・ポルトガル語)
提供:ヤマハミュージックアンドビジュアルズ
配給宣伝:アップリンク