八百屋はだいたい量り売り。何店舗も集まった大規模な八百屋はかなり楽しめる。
キューバの物価
ハバナに滞在して1ヵ月。モノの値段を、実体験を元に自分がわかる範囲で記しておこうと思う。
二重通貨制のキューバでは物価や相場の感覚をつかむのに結構時間がかかった。外貨扱いのCUC(セウセ)と国内通貨MNP(モネダナシオナルペソ)が存在し、常に財布に2種類のお金が入っている。
2010年5月現在、24MNPが1CUC。しばらくMNPばかり使っていると、ぜんぜんお金を使っていない気になってくる。
そして久々にCUCを使うと、一気にお金が減った気になってしまう。
モネダナシオナルの20センターボ通貨。ピントが合わなくてすいません。「PATRIA O MUERTE(祖国か死か)」と書いてある。祖国うんぬんより、まずは生きるべきだと思う。
食料品を中心に、ハバナでの物の値段を挙げてみる。高いものであれば日本以上に高い。
(わかりやすいように日本円で換算しておく。)
トマトや玉ねぎなどの野菜約500g | 約30円~50円 |
パパイヤ1個(中サイズ) | 約50円 |
水500mlペットボトル | 約50~60円 |
コーラなどの清涼飲料水1.5Lボトル | 約160円 |
植物油1.5Lボトル | 約200円 |
パスタ400g | 約80~90円 |
マヨネーズ500g瓶 | 約300円 |
冷凍骨付き鶏もも肉約300g | 約200円 |
オイルサーディン缶詰400g | 約180円 |
長さ40cmほどのコッペパン1つ | 約12円 |
通りで売っているハンバーガー1つ | 20円 |
家庭料理風のワンプレートランチ | 約100円 |
通りの売店はだいたい金網に囲まれている。室内型の店舗の場合は、ショウケースの中に商品が並び、客が直接商品を手に取ることができない。
普通の住宅の玄関の門に「女の子の服や靴、売ります」の看板。こういう「売ります」看板はよく見かける。
恐るべしNestle!アイスクリームを中心にかなりの規模で展開している模様。まさかこのロゴをこの国で見るとは思わなかった。ネスレの移動式アイスクリーム販売のスタッフは、決まって若い女の子だ。資本主義ってすごい。
営業時間を書いたペイント。何気ないペイントや看板にシュールレアリスム。
なくても生きていける食品はやっぱり高い。
マヨネーズがこれだけ高級品になるとは。自分の日本での生活がどれだけ既製品頼りで贅沢であるかを、思い知らされた。
レジ袋は貴重
八百屋やスーパーで物を買ったとき、タダでレジ袋がもらえるなんてことはない。レジ袋は1枚1ペソ(約4円)で買わなければならない。それにレジ袋を置いていない八百屋やスーパーも多い。パンを買っても袋がなければ手づかみで持って帰るしかない。これはとても先進的!しかし環境問題に対する意識が高いわけではないようで、缶、プラカップやセロハン包装などのゴミを道路に海に捨てているキューバ人をよく見る。
レジ袋は洗って使い回す。
美味しい店がない
ハバナで私は、ライブを見に行くときを除いて、夜はほとんど出歩かない。この前、アジア旅行のときにはよく夜に外出していたことをふと思い出し、ハバナでなぜ私は夜に外出しないのかがわかった。ハバナには美味しい屋台街とか、美味しい庶民的な食堂が、ないのだ。
屋台というような店はあるけれども、売っているのはだいたいがピザかハンバーガーかサンドイッチ・ホットドッグ。それに、正直に言うと美味しくない。ここに来て、あらためてアジアの食文化のすごさを思い知らされた。
こういう固定のスタンドがあり、サンドイッチやピザ、ジュース、葉巻などを売っている。朝の出勤時やお昼時が一番にぎわう。
だいたいメニューと値段がちゃんと書いてある。
パン売りは一緒にお菓子も売っていることが多い。
キューバ人に人気の麦芽入りノンアルコールビール「MALTA」。すごい甘さ。なぜか、みたらし団子のタレの味がする。
食以外での買い物事情
食料品以外でびっくりした物の値段をあげてみる。
映画館入場料 | 約10円 |
ハバナ市内バス運賃 | 1回の乗車 約2円 |
インターネット 1時間 | 約500~600円 |
二層式洗濯機 | 約20,000円 |
ラジカセ | 約12,000円 |
シャンプーやリンス1本(約300ml) | 約200円~300円 |
CONVERSEのスニーカー | 約9,000円 |
ショウウィンドウに並ぶものは大抵すごく高い。
キューバ人の平均月給は約1,000円と言われている。安く見える映画館入場料やバス運賃の値段は、実は妥当な価格なのかもしれない。電化製品・衣類はとんでもなく高い。贅沢品だ。
※カサパルティクラルでの宿泊費に関しては、以前の記事で2,500円~3,500円ぐらいが相場、と書いたが、1ヵ月など長期滞在するのであれば1日1,500円~2,000円など、安くしてもらえることが多い。
買い物事情で一番大変なのが、同じ店で毎日同じ商品が必ずあるわけではないということだ。トイレットペーパーなんかは探しまわらないと買えないことが多い。消耗品は見つけたときに買っておくのが無難だ。しかも値段もよく変わる。ジュースでさえも種類によってはしばらく姿を消すことがある。ホテルで売っているインターネットのプリペイドカードも、よく売り切れて在庫を切らしている。歩き回って商品を探さないといけないのは不便なのだけれど、これぞ資本主義ではないことの醍醐味かもしれない。過剰生産しないので商品が堂々と姿を消してしまう。
一番旅行者にとって辛いのがインターネットカフェの高さで、アナログ回線並み、もしくはそれ以下の遅さ。
現在、個人宅でインターネット回線を引くことは自由ではないようで、
弁護士や医者など、職業柄、海外とのやり取りが必要な人だけにメールのみの使用が認められているらしい。
ラウルは、その規制を撤廃してインターネットを開放する、と言った、とのことだが。
毎日毎日お金の話
そして残念ながら、ハバナに滞在していると、お金の話にうんざりしてくる。すぐ人の持っている物の値段を聞くキューバ人は多い。特に日本人である私が持っている物の値段を聞いて「高い!」「安い!」と感想を言う。「キューバは物がない!」「キューバはお金がない!」と愚痴が始まり延々と続いていく。
──物がない、お金もない、どれだけ頑張って働いても給料が変わらない。
──でも日本は頑張ればお金がもらえる、日本はいっぱい物があってお金もある。
というようなことをよく言われる。あれ?これって立派な資本主義的考えだ。キューバ人は資本主義世界をとてもうらやましく思っているように見える。
延々と続く愚痴も、それ以上に発展することはないのがまた恐ろしい。socialismo(社会主義)は貧しいからダメだ、というようなことは言うが、キューバ政府は何をするべきなのか、キューバ政府に何を望むのか、そういったところまでは話が進まない。自分たちの状況を嘆いてはいるが、政府に対しての意見は決して言わない。
(取材・文・写真:山本佳奈子)
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■山本佳奈子 プロフィール
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1983年兵庫生まれ、尼崎育ちの尼崎市在住。現在26歳。高校3年のときにひとりでジャマイカ・キングストンを訪れて以来、旅に魅力を感じるようになる。その後DJ活動、ライブハウス勤務などを経て、2010年、念願だったキューバ旅行を実現させる。
世界のすべての人々の最低水準の暮らしが保証されること、世界の富を独占する悪徳企業が民主の力によって潰されることを切に願っており、自ら一つのメディアとなって情報発信することにも挑戦している。