骰子の眼

cinema

東京都 千代田区

2010-07-03 12:40


[CINEMA]「日本をもっと自由で開放的な国にするためにも、この他者からの批判と問題提起を活用すべき」『ザ・コーヴ』クロスレビュー

スパイ映画さながらの実況中継には、実態を明らかにしようとする探究心の深さと、撮影側の根気と執念が感じられる
[CINEMA]「日本をもっと自由で開放的な国にするためにも、この他者からの批判と問題提起を活用すべき」『ザ・コーヴ』クロスレビュー
(c)OCEANIC PRESERVATION SOCIETY. ALL RIGHTS RESERVED.

『ザ・コーヴ』は先に日本で公開された『ビルマVJ』を押さえアカデミー長編ドキュメンタリー賞のを獲得した作品というよりも、日本での上映中止事件をめぐって注目を集めることになった。しかしそうしたセンセーショナルな観点を差し置いても、興味深い作品である。太地町のイルカ漁の実態を暴いていこうとする展開は、その浸透度はともかくクジラ漁/イルカ漁が地域に食文化に認識されている日本人の観客にとっては、あまりにも答えがあらかじめ導き出された状態であることから、この結末に完璧に満足する人は少ないだろう。リック・オバリー氏の描き方についても、「『わんぱくフリッパー』の主人公がひとりでイルカ漁を止めさせるために活動を続けている」という好奇心を観客に植え付けはするが、尊敬できる(またはできない)人物としてオバリー氏の人間性に肉薄しているかといえば、その点も弱いことは否めない。

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後半のイルカ肉に含まれている水銀についての指摘も追求が浅く、イルカ漁を悪とするためのファクターという域を出ない。そうしたドキュメンタリーとしての弱点はどうしても気になってしまうものの、この作品が人々を引きつけてやまないのは、たとえ反イルカ漁について一方的な観点からしか描かれていなかったとしても、結果的にこの問題に対峙する様々な立場に立つ人たちの意見、そして文化の違いがあぶり出されてきているからであるだろう。とにかく観て、自らの言葉で感想を語ってほしいと思わせる作品だ。

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映画『ザ・コーヴ』

7月3日(土)全国順次ロードショー

監督:ルイ・シホヨス
出演:リック・オバリー、ルイ・シホヨス、サイモン・ハッチンズ、チャールズ・ハンブルトン、ジョー・チズルム、マンディ=レイ・クルークシャンク、カーク・クラック
プロデューサー:フィッシャー・スティーヴンス ポーラ・デュプレ・ペスマン
脚本:マーク・モンロー
提供:メダリオンメディア
配給・宣伝:アンプラグド
2009年/アメリカ映画/91分/アメリカンビスタ/ステレオ/PG-12/原題:The Cove

公式サイト


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