骰子の眼

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東京都 渋谷区

2010-03-11 14:13


webDICE恋愛相談!江國香織原作『スイートリトルライズ』の矢崎仁司と狗飼恭子がオトナの恋の悩みに答える

映画『スイートリトルライズ』公開記念!相談者は、映画『スイートリトルライズ』に登場の4人。不倫の是非から、恋愛における所有欲まで作品の設定そのままに質問した。
webDICE恋愛相談!江國香織原作『スイートリトルライズ』の矢崎仁司と狗飼恭子がオトナの恋の悩みに答える
脚本家・狗飼恭子(左)と矢崎仁司監督

webDICEでは、映画『スイートリトルライズ』の公開を記念して、監督を務めた矢崎仁司と脚本を担当した狗飼恭子を回答者に迎え“公開恋愛相談”を開催! 映画監督と脚本家、男と女、そして既婚者と未婚者というそれぞれの立場で“恋愛”について相談者の悩みに答えた。相談者は『スイートリトルライズ』に登場する4人である、中谷美紀扮するテディベア作家の岩本瑠璃子、瑠璃子の夫でIT企業に勤めるサラリーマンの大森南朋扮する岩本聡、聡を慕う大学時代の後輩・池脇千鶴演じる三浦しほ、そして瑠璃子が恋に落ちる青年・映画初出演の小林十市演じる津川春夫。それぞれが複雑な恋心や愛情を抱え過ごす日常を描いたさまざまな愛の形について、二人が出した答えとは!?


相談者
岩本瑠璃子(中谷美紀)

質 問

夫とは結婚して3年になります。子供はいません。夫はIT系の会社に勤めているのですがどういう仕事かは私にはよくわかりません。私は、家でテディベアを作る仕事をしています。夫とはここ2年くらいセックスはしていません。夫とは仲が良いと思っており、夫は残業もせずいつも決まった時間に帰宅し家でご飯を食べてくれるのですが、晩ご飯を食べた後すぐに自分の部屋に閉じこもるようにしてTVゲームをしています。2人の間にほとんど会話はなく、夫は部屋に鍵をかけているので、夫を呼び出すには携帯電話を使っています。夫に不満がないと言えば嘘になります。

相談したいのは、最近テディベアの展示会で出会った年下の青年にアタックされ、体を許してしまいまったことです。夫を愛するる一方で、その青年とのセックスにも喜びを感じる自分がいます。家庭を壊したくありませんが、青年との恋に胸が熱くなります。どうすれば良いでしょうか。

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(c)2009 /「スイートリトルライズ」製作委員会

回 答

「嵐が過ぎ去るのを待て」 ── 矢崎仁司
「一番大切なことを叶えてくれるのはどちらか、という基準でどちらかを選ぶ」 ── 狗飼恭子

矢崎仁司監督(以下、矢崎):セックスの快楽なんて、とことん突き詰めれば死にしか至らない。ひと時のことなのです。嵐が過ぎ去るのを待てということですね。なるようになると思うんです。幸いお子さんがいないようなので、なるようになっても良いではないですか。守る対象というのは何なのか。瑠璃子さんにとって、それが家庭であるという意識はないですよね。家庭というより夫を守りたいんですよ。大切な人を守りたいために、嘘をつく。青年とは、もう少し付き合うと一番大切なものがわかってくると思う。イタリアの諺だったか、ひとりの人を理解するには1トンの塩を一緒に舐めなくてはならないみたいです。守りたい人と一緒に、もっともっと塩を舐めてくださいね。

狗飼恭子(以下、狗飼):自分が一番大切なことやものや人が何なのかを見極めて、それを大切にするようにしないと、一番大切なものが壊れてしまいます。“夫も恋人も”ではなく、無理にでも一番を決めるべきだと思います。全ての選択肢の中から出た一番大切なことを叶えてくれるのはどちらか、という基準で選べば良いのではないでしょうか。自分が一番欲しいものが、安定した生活なのか、それとも心地よいセックスなのか。浮気を続けることによって一番大切である夫との生活が壊れるかもしれない、という危険性があることをわかったうえでそれでも続けるのなら、それはそれで良いと思います。



相談者
岩本聡(大森南朋)

質 問

私はIT系の会社に勤め、妻とは結婚して3年になります。妻は美しく優しいのですが、私の全てを見透かしているようで、いつのまにかどこか気を許せない存在になってしまいました。セックスもここ2年以上していません。彼女から誘ってくるということもありませんので、ないまま過ごしています。

相談したいのは、最近同窓会で再会した大学の後輩が積極的に誘ってくるので、つい浮気をしてしまったことです。彼女は私に妻がいることを承知の上での交際なので、私の家庭を壊そうという気は今のところありません。完璧すぎるほどの優しさを備えた妻に息苦しくなるときに、無邪気に純粋に私のことを好きだと言ってくれる彼女との交際は、私に男としての自信を取り戻させてくれる時間です。今の家庭を壊すほどの勇気もないのですが、彼女といっしょにいる時間の方が妻といっしょにいる時間より楽しく思えるこの頃です。どうすれば良いでしょうか。

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(c)2009 /「スイートリトルライズ」製作委員会

回 答

「彼女が30歳までに別れてあげた方が良い」 ── 矢崎仁司
「“妻は素晴らしい”と気付く時期を待て」 ── 狗飼恭子

矢崎:聡さんは、きっと奥さんのことが好きなんですね。良いところも悪いところも、奥さんのことを丸ごと好きなんですよ。嫌な部分や自分には受け入れられないところもあるんだけど、全て飲み込んで、丸ごと奥さんのことを愛しているんだなと思いますよ。家庭を壊す気がないのであれば、彼女が若いうちに別れてあげた方が良いですよ。憧れだったあなたと結ばれた彼女は、きっと、次の恋愛に走れますよ。だったら彼女が若いうちに別れてあげましょう。若いというのは… まあ、30歳くらいかなぁ。

狗飼:30歳は若くないですよ! 手遅れですよ! 1年以上付き合ったら、女の人は男の人に情を抱いてしまう訳ですよ。1年未満で別れた方が良いと思います。それでまた妻が怖くてフレッシュな子が欲しくなったらそのときにまた考えるとして。聡にとって妻はお母さんになってしまっているのでしょうね。聡は今、反抗期なんですよ。高校生とかの頃って、お母さんの作ったお弁当を食べたくなくて学食でパンを買ったりするじゃないですか。それと同じです。時が経てば「お母さんは素晴らしい」と思うのと同じで「妻は素晴らしい」と気付く時期が来るんです。それを待てば良いのではないでしょうか。



相談者
三浦しほ(池脇千鶴)

質 問

私は、水族館で働いています。最近大学の同窓会で昔好きだった先輩と再会しました。私は今でもその先輩が好きだったので、結婚しているのは知っていますが先輩に近づきたいと思い、積極的にアタックしました。先輩は家庭のことは多く語りませんが、私といることが楽しそうで、とうとう一線を超えてしまいました。

相談したいのは、これからの先輩との関係についてです。奥さんには悪いと思うのですが、きっと先輩が家庭で安らに過ごすことができないのは、奥さんが悪いのだと思います。でも、先輩の関係は世間で言う不倫ですので長く続くはずがないことはわかっています。ところが最近、私は先輩が奥さんと別れて私と一緒になってくれないかなとも思うようになりました。どうすれば良いでしょうか。

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(c)2009 /「スイートリトルライズ」製作委員会

回答

「何かを壊してまで奪うのは良くない」 ── 矢崎仁司
「幸福な結末は迎えられない」 ── 狗飼恭子

矢崎:はたから見るとヘンな夫婦とか冷めている夫婦とか思われるかもしれないが、100組の夫婦があれば、100通りの愛し方があって、それはパターンにははまらないんですよ。でも恋人たちはなんとなくパターンにはめられる。彼が、奥さんの不満を言ったり、夫婦関係がうまくいってないみたいなことを言ったとしても、それはそれで、絶対に存在する夫婦の形なのですよ。結婚云々はもとより、何かを壊してまで奪うのは良くないよ。会っているときだけを全てとしていれば、それはそれでいいと思う。

狗飼:「奥さんが悪い」というのは、三浦さんっぽいですね。でも、まだ三浦さんは、相手の先輩の気持ちの確認をしていない。先輩が本当に奥さんと離婚したいと思っているかどうか。「離婚する」ということを簡単に言う男の人も信用できないのですが、ものすごく少ない例を除いて、不倫している男の人は奥さんとは別れないと思います。根拠があるわけではないのですが、私の周囲の人たちを見ていてもそう思います。そして、まだあなたは先輩の良いところしか見ていないから、先輩がいつか振り向いてくれて、自分と幸せな家庭を築いてくれると思っているのでしょうね。もし長く一緒にいたいと思うのであれば、その欲求はおくびにも出さないほうが良いと思います。先輩とつかの間の関係でも良いから一緒にいたい、という気持ちを大切にして過ごした方が、二人の関係は長続きすると思います。幸福な結末は迎えられないとは思いますが。



相談者
津川春夫(小林十市)

質問

私はギター教室の講師をしています。私には付き合って2年になるガールフレンドがいます。最近そのガールフレンドに頼まれてテディベアを買ったのですが、そのテディベアの作家に一目惚れしてしまいました。私が積極的に彼女を誘い、彼女と寝ることもできました。彼女とのセックスはとても良いもので、彼女も喜んでくれています。ただし、彼女は人妻です。彼女の夫と会ったこともありますが、冴えないサラリーマンでした。

相談したいのは、彼女の心を手に入れてるためにはどうすれば良いかということです。体だけでも満足していたのですが、最近は彼女の心も手に入れたくなっている自分に気付きました。そんなことを察したガールフレンドとは喧嘩をして別れました。私は彼女の体も心も手に入れたいと今思います。どうすれば良いでしょうか。

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(c)2009 /「スイートリトルライズ」製作委員会

回答

「手に入れたいなんて、傲慢」 ── 矢崎仁司
「長い時間をともに過ごすことが必要」 ── 狗飼恭子

矢崎:人の体も心も手に入れたいなんて、そんなの傲慢だよ。手に入らないものだよ。会う時間が得られるならそれで良いじゃないか。手に入れるという言い方が傲慢だね。愛し合っているなんて錯覚でしょう。手に入れるというのは、死に向かうしかないんじゃないか。無理心中とか。想いが募ると、そういう方向に行くんですよ。そうですね、例えば次に会ったときに、セックスをしないでお話だけしてみたらいかがでしょうか。別の展開があるのではないでしょうか。

狗飼:私は、矢崎監督よりまだ夢をもって生きているので(笑)、春夫さんの気持ちもわかります。人を手に入れたい、この人を私だけのものにしたいという感情から逃れられないというのはすごく理解できますが、やはりこれも、最初に出会ったときに人のものであったものを自分のものにするということですよね、結婚しているということが彼女は夫の所有物であると考えると。時間というのは、確実に精神を手に入れるためにはとても大きな役割を果たします。2週間一緒にいたよりも、2年間一緒にいた人の方が、お互いの気持ちが強いと思う。セックスの回数ではなく。一回も手をつないだことがないのにすごく結びついている二人というのは確実に存在すると、私はロマンティストなので(笑)信じています。精神を手に入れるために大切なことは、とにかく一緒に時間を過ごすことだと思います。例えば、2年のうちの3日よりは、6年のうちの9日、どんどん時間の割合が増えていくでしょ、それで少しずつ彼女を侵略していったと思うと随分救われると思います。



夫、あるいは妻以外の人を愛するということについて

── この作品では結婚しているカップルがともに第3者を愛することになりますが、そのことについてどう思いますか?

狗飼:抑えられない衝動は、抑えられないんだから、仕方がないと思います。最近やっとわかったんですけど、人を好きになることって“やっぱり”ってことだと思うんです。“やっぱり”好き。“やっぱり”大切。そういうことが一番大切なんだなと思います。がむしゃらに“好き好き”というよりも、“やっぱり”とつく方が、何かネガティブなものがあってさらに好きということだと思うので。その“やっぱり”がずっと続けば、夫婦なり恋人なりずっと一緒にいられるんじゃないかと思います。

矢崎:その通りだと思います。愛し方が嫌いと言われればどうしようもない訳で、本当に相手が望んでいるものは何かということを考えれば良い。相手が何をして欲しいかを考えられるのが愛しているということなのに、自分がしてあげたいことだけをして愛だと酔い、勝手に傷つく人が多い気がします。

── 一番好きな恋愛映画は?

矢崎:今回は『スイートリトルライズ』をやるときに一番頭に浮かんでいたのは、『シェルタリング・スカイ』(ベルナルド・ベルトリッチ監督/1990年)です。夫婦の話をやりたかったんですよ。夫婦というのは、先程話したように、色々な形がある。そんな中でも『シェルタリング・スカイ』の夫婦は、二人で孤独なんです。何かの本で読んだんですが、人間の始まりはアダムとイブで、“二人きり”というのが人間の最小単位だと。だから二人でいることの孤独を映画にしたかった。

狗飼:私が好きな恋愛映画はもちろん『三月のライオン』(矢崎仁司監督/92年)です。それと最近、『天使のはらわた 赤い教室』(曽根中生/1979年)を観ました。ブルーフィルムで見た女の人に一目ぼれして、ふとしたところで出会い、別れるという物語です。純愛だなぁと思いました。『三月のライオン』は、セックスをする、体を繋げることによって哀しくなるのですが、『天使のはらわた 赤い教室』では体は繋がらないのに、心は繋がるのです。その点、『スイートリトルライズ』の夫婦と同じですね。

【関連記事】

■骰子の眼:『スイートリトルライズ』クロスレビュー

http://www.webdice.jp/dice/detail/2285/


矢崎仁司 PROFILE

映画監督。1980年に16ミリ長篇『風たちの午後』を製作。16ミリ作品としては異例のヒットとなり、ヨコハマ映画祭自主制作映画賞他、多くの映画賞を受賞。海外でも広く認められ、エジンバラ国際映画祭、モントリオール・ニュー・シネマフェスティバルなどの多数の映画祭に招待される。91年に発表した『三月のライオン』は、92年ベルギー王室主催ルイス・ブニュエルの「黄金時代」賞受賞をはじめとし、ベルリン、ロンドン、ロッテルダムなど数多くの海外映画祭に招待され高い評価を受けた。その後、95年には文化庁芸術家海外研修員として渡英。00年、ロンドンを舞台にした『花を摘む少女 虫を殺す少女』を発表。前作は魚喃キリコ 原作、池脇千鶴主演『ストロベリーショートケイクス』(06年)。海外の映画祭で高い評価を受け続け、1作ごとに国内外で注目を集める稀有な監督。

狗飼恭子 PROFILE

脚本家。1992年、TOKYO FM「LOVE STATION」のショート・ストーリー・グランプリに入賞し、高校時代から雑誌等に作品を発表する。95年、処女小説『冷蔵庫を壊す』を発表。以降、小説・脚本・エッセイ等、多方面に活躍。主な作品は『あいたい気持ち』、『低温火傷』、『薔薇の花の下』、『温室栽愛』、『国境/太陽』、エッセイ集『ロビンソン病』など。脚本作品に『天国の本屋~恋火』(篠原哲雄監督/04年)、『未来予想図~ア・イ・シ・テ・ルのサイン~』(蝶野博監督/07年)、『七夜侍』(河瀬直美監督/08年)など。矢崎監督とは前作『ストロベリーショートケイクス』(06年)に続いてのコンビとなる。



映画『スイートリトルライズ』

2010年3月13日シネマライズほか公開
原作:江國香織(幻冬舎文庫)
監督:矢崎仁司
脚本:狗飼恭子
出演:中谷美紀、大森南朋、池脇千鶴、小林十市、大島優子、安藤サクラ、黒川芽以、風見章子
2009年/日本/カラー/117分/ヴィスタサイズ/DTS

公式サイト





矢崎仁司監督の特集上映開催!
2010年3月13日~新宿K's cinemaにて

映画『スイートリトルライズ』の公開を記念して、80年代、90年代、00年代の作品をピックアップした、矢崎仁司監督の特集上映が開催される。期間中にはトークショーの開催も予定されている。

矢崎仁司監督作品 IN新宿 1980-2000

■『三月のライオン』(1992年)
上映期間:3月13日(土)~19日(金)
■『ストロベリーショートケイクス』(2006年)
上映期間:3月20日(土)~26日(金)
■『風たちの午後』(1980年)
上映期間:3月27日(土)~4月2日(金)

※時間:連日20:50~
※料金:1,300円
※リピーター割引、『スイートリトルライズ』割引あり(半券持参で1,000円に)

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