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『私の頭の中の消しゴム』大ヒットに続く作品ということで、韓国のみならず世界各国で注目を集めることは間違いない今作において、 イ・ジェハン監督は予想を超える完成度と強固な美学でスケールの大きな物語を映像化してみせた。場面の多くを占めるタイはバンコクでのカットは、 ストーリーの中心となるオリエンタルホテルをはじめ、いわゆる観光的な視点だけでなく、日常の雑多な情景をレンズに収める。海岸線の道路や空港のエスカレーターなど、人の進む分かれ道を象徴する舞台が、作品のメッセージをストーリーや台詞だけでなく、視覚的に伝えている点はイ・ジェハン監督の才気と言えるだろう。
主演陣に対しても、それぞれのキャラクターを熟知したうえでの演出が存在感と演技力を兼ね備えた3人を引き立てる。我々の〈運命の女〉像を見事に具体化した中山美穂、いかにも好青年然としたルックスとその奥に情熱と空虚さを混在させた西島秀俊の表情、そして愛する人を静かに支える石田ゆり子の献身的な姿勢という3者のコントラストが、映画のテーマである〈究極の選択〉を観る者に突きつける。辻 仁成の原作から監督は独自の繊細さにより、えてして大仰になりがちな時代をまたぐドラマをゆるみなくまとめあげている。
映画『サヨナライツカ』
1月23日(土)
新宿バルト9、丸の内TOEI②ほか全国ロードショー
監督・脚本:イ・ジェハン
出演:中山美穂/西島秀俊/石田ゆり子
原作:「サヨナライツカ」辻 仁成(幻冬舎文庫)
配給:アスミック・エース
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