(C)IMG・幾原邦彦/中村明日美子
「ノケモノの彼と逃避行」なんていうのは普遍的な女子の憧れであり、『ホット・ロード』的ヤンキー少女漫画のセオリーである。そう、女子たるものいつだって世間的にノケモノな彼に手を引いて外の世界にオープンカーで連れ去って欲しい。そんな理想…もとい妄想を抱くものだと思う。
『ノケモノと花嫁』の原作はアニメーション監督として知られる幾原邦彦。彼の描く物語には世界と戦う「少女たち」が登場する。『美少女戦士セーラームーン』では中学二年生の月野うさぎが黒猫のルナに頼まれて“悪”と戦う。『少女革命ウテナ』では王子様に憧れるあまり王子様になろうとした中学生、天城ウテナが“薔薇の花嫁”をめぐり決闘する。いずれの主人公も最終的に自分の誇りにかけて“他人”の為に戦い世界と対峙する構造がとられている。
『ノケモノと花嫁』の主人公、世羅ヒツジは熊のキグルミを纏った謎の婚約者、羽熊塚イタルと共にオープンカーで逃避行中。警察と「燃えるキリン」と呼ばれるコドモに仇なす大人に対抗するために作られたコドモの組織から逃げている。警察という“オトナ”からも「燃えるキリン」という“コドモ”からも逃げる彼女たちが一体何処に向かうのか。世羅ヒツジがどう世界と戦っていくのか。そして、婚約者である羽熊塚イタルは何者なのか。
この、同名の原作小説を今回漫画化したのは、現在活躍中の若手作家で花の24年組の耽美色を正統に受け継いでいるといえる中村明日美子。連載誌がファッション誌KERAという事もあり、登場人物はゴシック・ロリータな服を纏い怪しい笑みを浮かべる。その世界観は、あらゆるメタファーを切り張りしたような画面で再現されている。
そして何よりも、幾原邦彦の描く過剰に“カッコイイ”男性像が中村明日美子の作画により、完璧に再現されているのに注目だ。
『ノケモノと花嫁 THE MANGA』1巻
原作:幾原邦彦 漫画:中村明日美子
A5版、156P
税込880円
出版:インデックス・コミュニケーションズ
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それは残酷で危険な愛──。 もう誰も二人を止められない。
おダンゴ頭の少女・世羅ヒツジと、クマのキグルミの少年・羽熊塚イタルがくり広げる、華麗なるカケオチ。禁断の愛。恋人たちの危険なストーリー。原作は「少女革命ウテナ」の幾原邦彦。中村明日美子と奇跡のコラボレーションが実現した、話題のロリータ・ハードボイルド決定版。